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マハーバーラタ 1.始まりの章

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世界三大叙事詩マハーバーラタを オリジナル編集で書いてみます! ・登場人物が多い ・長い ということで有名ですが、読みやすく工夫していきますね。 登場人物は百科事典へのハイパーリ… もっと読む
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マハーバーラタ/1-1.ガンジス河の岸にて

1.始まりの章1-1.ガンジス河の岸にて nārāyaṇaṃ namaskṛtya naraṃ caiva narottamam devīṃ sarasvatīṃ vyāsaṃ tato jayam udīrayet ナーラーヤナに、ナラとナラ・ウッタマに、女神サラスヴァティーに、ヴャーサに感謝し、そして人生に勝利をもたらすもの(マハーバーラタ)を勉強します。[マハーバーラタの祈りの詩] 昔々、今から5000年以上も前、 ドヴァーパラユガの末期、 日本においては縄文時代最

マハーバーラタ/1-2.16年後の再会

1-2.16年後の再会 ガンガーが去ってから16年もの年月が流れた。 シャンタヌの心はぺちゃんこにつぶれたまま、空っぽであった。 それでも彼は王としては優秀で、国民は彼の統治下で幸せに暮らしていた。 彼の唯一の楽しみは狩りであったが、 何かに取り憑かれたかのようにガンジス河の岸を通っていた。 その場所は彼の唯一の安らぎの場所であったから。 ある日ガンジス河の岸にやってきた彼は奇妙な光景を目撃した。 いつもなら絶え間なく流れているはずの水が止まっていたのである。 「なぜ水

マハーバーラタ/1-3.漁師の娘

1-3.漁師の娘 それから4年が過ぎた。 シャンタヌ王と息子デーヴァヴラタはこれまでの失われた時間を取り戻すかのように共に幸せな時間を過ごしていた。 デーヴァヴラタはユヴァラージャ(次期王位継承者)の地位を与えられ、国民は喜んでいた。 しかし、運命はその様子にうんざりしていた。 コップ一杯の喜びには、苦い一滴を加えて調整するのであった。 ある日シャンタヌは一人で狩りに出かけた。 獲物を追いかけていると、なにやら奇妙な香りが彼の鼻を刺激した。 その香りに興奮させられた彼は

マハーバーラタ/1-4.禁欲の誓い

1-4.禁欲の誓い デーヴァヴラタはすぐに父の異変に気付いた。 父は口数が減り、一番の趣味の狩りでさえ、まるで全く興味を失っているように見えた。理由を聞いても全く答える気が無いようだった。 しかしある日、シャンタヌ王は息子に話し始めた。 「デーヴァヴラタよ。今この偉大なクル家において跡を継げる息子はお前しかいない。他に100人の息子を持ったとしても、お前に匹敵するような者はいないだろう。もう一度結婚しようなどとは思わないが、息子が一人しかいないのは、目が一つしかないような

マハーバーラタ/1-5.カーシー王国のスヴァヤンヴァラ

1-5.カーシー王国のスヴァヤンヴァラ ヴィチットラヴィールヤはサッテャヴァティーにとっても国民にとっても唯一残された希望であった。 ビーシュマは彼の父親役であり、そろそろ彼の結婚を考える時期に差し掛かっていた。 カーシー王国との間には娘をクル一族に嫁がせるという慣習があった。そして現在アンバー、アンビカ―、アンバーリカーという美しい三姉妹の娘がおり、この王女たちは彼の花嫁としてふさわしいと考えていた。 ところがある日、カーシー王から娘たちのためにスヴァヤンヴァラ(王家の

マハーバーラタ/1-6.アンバーの復讐

1-6.アンバーの復讐 アンバーは苦行の日々を続けていた。 森を出て他の場所へ向かい、最低限のものさえ拒んで苦行を続けた。 シャンカラの息子シャンムカが目の前に現れた。 「アンバーよ、この花輪を受け取りなさい。この永遠に瑞々しい蓮の花輪を首に掛けた者がビーシュマを殺す者となるでしょう」 この贈り物を受け取ったアンバーは復讐を叶えてくれる者を探す旅に出た。 あらゆる力強い王たちを訪問したが、ビーシュマを敵に回そうという勇敢なクシャットリヤは誰一人見つからなかった。この花輪は神

マハーバーラタ/1-7.サッテャヴァティーとビーシュマ

1-7.サッテャヴァティーとビーシュマ カーシーの国からやってきたアンビカー、アンバーリカーの2人のお姫様とヴィチットラヴィールヤの結婚式が行われた。 彼はまだ若く、王としての役割が担えない為、いつも妻たちと一緒に過ごしていた。ハンサムで優しいご主人様と巡り会えた2人にとっては幸せであった。 しかし運命とは期待通りには進まないものであった。 若きヴィチットラヴィールヤは重い肺病を患ってしまい、最高の医者の技術も、国民の祈りも叶わず、彼を死から救うことはできなかった。 サッテ

マハーバーラタ/1-8.ヴャーサの登場

1-8.ヴャーサの登場 何度サッテャヴァティーが説得してもビーシュマは頑なであった。 悲しみに暮れる彼女にビーシュマは声をかけた。 「お義母様の期待に応えられず、申し訳なく思います。ですが私から提案があります。貴族の血筋が絶滅の危機に瀕したとき、高貴なブラフミンに生まれた者によって蘇らせることが許されていると聞いたことがあります。 私の先生、バガヴァーン・バールガヴァによって全てのクシャットリヤが絶滅させられた際に、多くの王家がこの方法で続いたそうです。これに相応しいブラフ

マハーバーラタ/1-9.ドゥリタラーシュトラ、パーンドゥの結婚

1-9.ドゥリタラーシュトラ、パーンドゥの結婚 3人目の子供が生まれ、ヴィドゥラと名付けられた。 ビーシュマはドゥリタラーシュトラとパーンドゥが一人前になるまで、再び子供を育てながら王国を実質的に統治する役割をこなすという数年間を過ごしていた。 3人の子供達はクシャットリヤの王子として必要なすべてを教え込まれた。 長男ドゥリタラーシュトラは比類なき強さを授かり、 次男パーンドゥは弓の技術を習得し、 三男ヴィドゥラは最も賢かった。 そして長男ドゥリタラーシュトラがユヴァラー

マハーバーラタ/1-10.太陽の誕生

1-10.太陽の誕生 ヴリシニ一族のシューラセーナ王にはヴァスデーヴァという息子とプリターという娘がいた。王にはクンティボージャと呼ばれる甥がいたが、子供がなかなか授からないことを気の毒に思い、愛娘プリターを預けて養女として育てさせたることにした。 プリターはとても美しく、振る舞いがとても素晴らしかった。クンティボージャにとって最も大切な宝物となり、クンティーの名が与えられた。 ある日、クンティボージャの所に聖者ドゥルヴァーサがやってきた。彼はその苦行と怒りっぽい性格で有

マハーバーラタ/1-11.呪いをかけられたパーンドゥ

1-11.呪いをかけられたパーンドゥ あれから数年が過ぎ、クンティーは結婚できる年頃になっていた。スヴァヤンヴァラが行われ、夫として選ばれたのはクル一族のパーンドゥであった。 マドラ王国のマードリー王女も同じくパーンドゥを夫として選んでいた。 ビーシュマはパーンドゥの二つの結婚式をそれぞれの一族に相応しい形で執り行うよう手配した。 チットラーンガダとヴィチットラヴィールヤが子孫を残さずに死んでいった頃はクル一族の栄華が衰えていくものと周辺国によって見られていたが、パーンド

マハーバーラタ/1-12.パーンダヴァ達とドゥルヨーダナ達の誕生

1-12.パーンダヴァ達とドゥルヨーダナ達の誕生 パーンドゥは森での隠退生活を送っていた。 不幸の原因を全て手放した生活はそれなりに幸せであったが、次第に新たな心配事が起きていた。それは彼に子供がいないことだった。 彼はクンティーに相談した。 「あなたが知っている通り、呪いのせいで私は女性と交わることができない。私の母と同じ方法で、リシに子供を授けてもらうことはできないだろうか?」 「旦那様! 私の夫はあなたです!! 私はあなたを夫として選びました。天国であろうと地獄であろ

マハーバーラタ/1-13.パーンドゥの死

1-13.パーンドゥの死 パーンドゥは神々から授かった息子達と共に15年間過ごした。 ある日、クンティーは息子達を連れて近くのアーシュラマへ出かけていた。愛の神の友であり、春の神であるヴァサンタの魔法によって、その日のシャタシュリンガの森の木々は美しい花で飾られ、空気は花の香りをまとっていた。まさに愛の行いに相応しい舞台であった。 真紅のシルクをまとって立つマードリーの姿がパーンドゥを誘惑してしまった。彼女との抱擁の喜びを味わうことなく18年が経っていた彼はそのあまりの美

マハーバーラタ/1-14.王都ハスティナープラへ

1-14.王都ハスティナープラへ クンティーとパーンドゥの五人の息子達はシャタシュリンガのリシ達と共にハスティナープラに到着した。 ビーシュマ、ドゥリタラーシュトラ、シャンタヌの弟バールヒーカとその息子ソーマダッタ、ヴィドゥラ、サッテャヴァティー、ガーンダーリー、アンビカー、アンバーリカーその他の者達がその知らせを聞いて、街の入り口で彼らを出迎えた。 パーンドゥの息子達はその美しさと気品で光り輝き、周囲の目を惹きつけていた。 リシ達がクル一族の王達に話した。 「俗世の快楽を