マハーバーラタ/1-12.パーンダヴァ達とドゥルヨーダナ達の誕生

1-12.パーンダヴァ達とドゥルヨーダナ達の誕生

パーンドゥは森での隠退生活を送っていた。
不幸の原因を全て手放した生活はそれなりに幸せであったが、次第に新たな心配事が起きていた。それは彼に子供がいないことだった。
彼はクンティーに相談した。
「あなたが知っている通り、呪いのせいで私は女性と交わることができない。私の母と同じ方法で、リシに子供を授けてもらうことはできないだろうか?」
「旦那様! 私の夫はあなたです!!
私はあなたを夫として選びました。天国であろうと地獄であろうとお供する覚悟です。あなたが死んだら私がお供しますから、その時に子供を得ればいいのです。死後までは呪いは続かないのですから。ですからそんなことを頼まないでくださいませ」
そう言われても彼は安心できなかった。この世界に生まれてくることのない我が子のことを考えると、寝ても覚めても惨めであった。

愛する夫のそんな姿を見かねたクンティーが話しかけた。
「実は私にはあなたの願いを叶える方法があります。私が小さい頃、義父の宮廷にドゥルヴァーサがやってきました。彼の身の回りのお世話をしたご褒美として、神様の子供を授かるマントラを教えてくれたのです」

パーンドゥはその話を聞き、喜んで相談を始めた。
「ダルマの神様から生まれた子であれば、きっと立派な息子になるでしょう。マントラで呼び出すのはダルマ神にしましょう。ダルマの質を持ったその子は長い間人々に記憶されて、私の名も伝えてくれることでしょう」
まるで絵のような美しさのシャタシュリンガの森の庭で、クンティーはダルマ神を祈った。

全ての星、全ての惑星の配列が整った吉兆な日にクンティーはダルマ神の息子を産んだ。
その時、天からの声が聞こえてきた。
「その子供は完全なる正義の現れであり、その資質によって世界中に知られることになるであろう」
その子はユディシュティラと名付けられた。

パーンドゥはもう一人子供を産むようクンティーに頼んだ。
「最も力強い神、ヴァーユを呼びたい。
正義は力で支えられる必要があります。正義と力の組み合わせに対抗できるものはいません」
「分かりました。そうしましょう」
彼女は風の神、ヴァーユに祈った。

そしてクンティーには美しく、力強い息子が授けられた。
再び天からの声が宣言した。
「その子供は最も強く、そして最も優しい者として知られることになるであろう」
その子はビーマセーナと名付けられた。

パーンドゥは今や二人の父であったが、まだ満足していなかった。
「インドラ神を呼びましょう。
天界のリーダーの息子がいれば、私の夢が現実となるでしょう。インドラの子であればきっと正義に忠実で、偉大な男となるに違いありません。きっと無敵の英雄です。あなたは英雄の中でも最も偉大な英雄の母となるのです」
「分かりました。そうしましょう」
彼女はインドラ神に祈った。

インドラ神の息子が生まれた。
天からの声が宣言した。
「この子供は父パーンドゥの為に不滅の名声を勝ち取るであろう。比類なき全世界の征服者となるであろう」
インドラが現れて言った。
「我が息子は全世界の征服者となる。お前の息子ユディシュティラは我が息子を傍に置き、偉大なラージャスーヤとアシュヴァメーダを執り行ってくれるであろう。
我が息子はもう一人のヴィシュヌであり、ナラである。
ヴァスデーヴァとデーヴァキーの息子クリシュナがナーラーヤナである。
この二人の男たちによって、地上を痛めつけている全ての毒は中和されるであろう」
そう言い残してインドラは去っていった。
その子はアルジュナと名付けられた。

パーンドゥはまだ満足しなかった。お金よりも大きな欲望、それは息子を求めることであった。彼はもう一人クンティーに頼んだ。
「あなたは息子に対して貪欲になっています。このような命がけの行いはせいぜい三回までです。これ以上望めばダルマが乱れます。もうマントラは使いません」
「クンティーよ、あなたの言うことは正しい。だがマードリーのことを考えてくれ。彼女には子供がいない。彼女にマントラを教えてあげることはできないだろうか?」
彼女は同意し、もう一人の妻マードリーにマントラを教えた。
マードリーは天界の双子の神、アシュヴィニクマーラを祈った。

マードリーに二人の息子が授けられた。この双子は他の三人よりもひと際美しかった。
天からの声が宣言した。
「この双子は世界で最もハンサムな男たちとなるであろう。彼らの良い資質、献身、勇敢さ、そして智慧によってその名が知られることとなるであろう」
マードリーから生まれた双子はナクラとサハデーヴァと名付けられた。

シャタシュリンガ山のリシ達が子供達の命名式を執り行い、彼らの教育も行った。その丘の全てのリシ達が彼らを自分の子供のように大切に育てた。
クンティーに五人の息子が授かったという知らせは親戚のヴリシニ一族を喜ばせ、クンティーの兄ヴァスデーヴァは司祭カーシャパと共に高価な贈り物と衣服を送り、五人の為のクシャットリヤの儀式、ウパナヤナを執り行った。

シャルヤーティ王家の子孫シュカもその森に住んでいた。シャタシュリンガ山で修行する彼に武器の腕前で匹敵する者はいなかったが、そのシュカが彼らに武器の使い方を教えることを申し出てくれた。その訓練のおかげで五兄弟はあらゆる武器の使い方に熟達した。
ビーマは槌矛、ユディシュティラは槍、ナクラとサハデーヴァは剣、アルジュナは弓を最も得意とした。アルジュナは素晴らしい弓の使い手となり、左右どちらの手からも同じように矢を放つことができるようになり、シュカはその腕前に喜び、自らの弓を彼に与えた。

一方、ドゥリタラーシュトラの元にも子供が生まれていた。
ある時、妻ガーンダーリーは飢えと渇きに苦しんでいたヴャーサをもてなした。喜んだヴャーサは彼女に100人の息子が授かるよう祝福を与えた。
ガーンダーリーは身ごもったが、二年たってもなかなか生まれてこなかった。
彼女は力づくで子宮を押しつぶすと肉の塊が出てきた。
するとそこにヴャーサが現れ、その肉の塊を100個に切り分けてギーの壺に入れた。ガーンダーリーが娘も望んでいることを知っていた彼は、切り分ける際に小さな欠片が残るように切り分けていた。

パーンドゥの次男ビーマが誕生したのと同じ日の夜中、その壺はひとりでに割れ、100人の息子と1人の娘が生まれた。長男はドゥルヨーダナと名付けられた。父となったドゥリタラーシュトラは喜んでいたが、ヴィドゥラを呼んで話した。
「弟パーンドゥの所には既に息子が生まれたと聞く。彼は私のこの息子よりも1歳年上だそうだ。彼の方が年上であることで王位継承権が彼の方に行ってしまうのではないかと思うのだが。私の推測は当たっているだろうか? 他にも心配事があるのだ。私の子供が生まれた瞬間、ある悪い兆しが現れた。その意味は分からないのだが」
ヴィドゥラは重々しい口調で話した。
「兄よ、その兆しはあなたの息子が全世界の崩壊の原因となることを予言しています」
「どうすればその災いから逃れられるのだ?」
「たった一つ方法があります。あなたがこの子を人類の為に捧げるのであれば、その災いを避けられます。あなたがこの息子を殺さなければなりません。賢者はこんな風に言います。『家族の為に一人の人が見捨てられることがあり、村の為に家族が見捨てられることがあり、社会の為に村が見捨てられることがあります。そして魂を守る為に全てのもの、たとえこの世界でさえ見捨てられることがあり得る』あなたへの助言は、世界の破滅を招くことになるこの子を見捨てることです」
ヴィドゥラの助言は受け入れられなかった。

ドゥリタラーシュトラはその他にヴァイシャの女性との間にもユユッツという名の息子も授かった。
こうしてドゥリタラーシュトラは101人の息子と1人の娘ドゥッシャラーを授かった。子供達に囲まれて彼は幸せであった。彼は父親の喜びの中で、全ての不安を忘れてしまっていた。

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