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枡野浩一短歌集「てのりくじら」

初版は1997年の9月である。
私が高校1年生の時だ。
ちょうど現代文の授業で短歌を勉強していたからなのか、
出会ったきっかけを実は全く覚えていない。
ただ、短歌という世界に、31文字という限られた世界に、
こんなにも自由な世界があるのだと気づかされた本だ。

16歳になったばかりの私は、
高校に行くことが地獄で天国だった。
ちょっと思考が変わっていたのか、クラスの誰からも相手にされなかった。
相手をしてくれたのは演劇部の部員だけだった。
授業では50分×6時限をただひたすらに耐えて、
その鬱憤を部活で爆発させていた、非常にこじれた高校生だった。
流石に極端な生活は、心身ともに疲れていた。
そして、この短歌に出会ったのである。


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こんなにも
ふざけたきょうが
ある以上
どんなあすでも
ありうるだろう
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この短歌で、私はドバーッと涙を流してしまった。
たった31文字で、人をこんなにも救ってくれるのかと感動した。
感動、って陳腐な言葉では片付けられないかも。

確か私は、当時初版本を買ったはずなのだが、
いつの間にやら手元から消えていていた。
そして、ある日、また読みたいと思って、ネットでポチった。
そして改めて手に入れた「てのりくじら」に画像の手書き短歌が。
枡野浩一さんの自筆の模様。

10代の時に読んだ感覚と、
20年を経て読んだ感覚はまた違う。
どういう風に違ったっけな? と考えてみると、
10代の時はまだいろんな感情を経験している途中で、
全てにセンセーショナルに反応していたんだなって思う。
30代で読むと、じっくりと熟成させた経験と感情で味わっているような感じ。
ああ、年を重ねるってこういうことなんだなぁとしみじみ。

20年前の書籍ですが、短歌でサクッと読めますし、
本格的な読書はちょっとまだトライできないなぁ……という人にもオススメの本です。
(800文字)


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