夫婦で宿を運営することのメリットとデメリットを考えた
こんにちは、しゃにです。金沢にて何軒かの宿を運営する夫と2人の子どもたちと暮らしています。
2005年、会社を立ち上げた夫に伴う形で当時の仕事を辞して都心から金沢へ移住しました。
その後私も夫の会社に入社して5年間働き、2020年11月に退職。
振り返れば、メリット・デメリット両方ありましたが、総じてメリットの多い選択だったと思います(だからこそ5年も継続した)。
今回はそれらのメリット・デメリットについて書いてみます。
夫婦で一つのビジネスをやることになったわけ
実は当初、夫の会社で働く気は全くありませんでした。
なぜなら、
1. そもそもビジネス内容(インバウンド宿泊業)に興味がない
2. 決まった休みや勤務時間がないブラック労働に巻き込まれたくない
3. 職種が、自分の業務経験(Webディレクター)にかすりもしない
4. 接客経験も英語力も低く、活躍できるイメージが湧かない
お見合いだったらプロフィール見た段階で破談になるレベルのアンマッチです。
しかし、開業当初は人を雇うお金がないので、ボランティア数名と、夫自身も休みなしに働いている状態でした。
そんな中で夫は、「事務処理や経理などのバックオフィス業務をやってくれないか」と私に打診してきました。
「お店に出る必要がないから英語話せなくてもいいよ」
「スキマ時間でできるよ」
「その分俺も家に帰って家事や育児を分担できるよ」
(え、それくらいなら私でもできそう...しかも子育ての負担も減って...なんなら一人の時間が持てる...?)
とソワついた私は夫の「フット・イン・ザ・ドア」テクニックに見事陥落しました。
その後はもちろん、
「Webサイトの更新してもらえる?」だの
「今日すごくお客さん多くて、掃除少し手伝ってもらえると助かる」だの
「備品の買い出しがあるから2時間だけ店番してもらえないかな」だの
ドアから差し込まれる足がグイグイ玄関の中へ侵入してきたことは言うまでもありません。
一年もしないうちに、私はメインメンバーとして普通にフロントに立っていました。
夫婦で自営することのメリット
裏方としてちょい噛みするくらいの気持ちでいた私がなぜそこまで深く関わり、かつ5年も働いたかというと、最大の理由はもちろん「楽しかったから」。
毎日新しいゲストと出会う「動」の側面と、じっとPCに向かって作業する「静」の側面があるゲストハウスの仕事は、明るいオタクである私には意外と向いていたようです。
その上で、私たち夫婦や家庭にとっても大きなメリットがありました。
1. 夫を尊敬できるようになった
ごめんね夫!先謝っとくね!
実はそれまで私は夫のことをちょっとバカにしてました。
何せ私にとって夫は
学生時代からフラフラ海外を放浪し、成り行きで就職し、飽きたら即転職しちゃうフットワークが軽すぎる飽き性で片付け下手な日本語力の低い人
っていう認識でしたから。(酷すぎ)
だから起業すると聞いた時は、本気で無理だと思ったし心配しました。この飽き性男が同じことを何年も続けられる訳がない、と...。
しかし一緒に働いてみて分かったのは、ビジネスアイデアを事業計画書に起こしたり、お金の流れを把握したりすることが得意で、決めたことをやり抜く実行力にも優れているということでした。
社長として素直に尊敬できました。
自分の服なんて全然片付けないし、掃除機何日もかけなくても平気なのに、ゲストハウスの設備や清掃については私でも気付かない部分まで目を配っていることも知りました。
一緒に仕事をしなければ絶対に気づけなかったことでしたね。
2. 家事・育児・仕事をフレキシブルに分担できる
これが最大のメリットかも!
ゲストハウスの仕事(フロント・接客・清掃・予約管理等)は基本的に誰でもできる=私にもできるし、逆に家事や育児は夫にもできるし、家庭と仕事のタスクを夫婦平等に振り分けることが可能でした。
体調不良の時にお互いのタスクを代わることもできるので、仕事に穴を空けるリスクも低く済みました。
3. 通勤時間の大幅な短縮
夫婦の職場が同じなので、可能な限り職場近くに住めばいいということになります。
金沢での5年の間になんと2回も引越しているのですが、職場まで徒歩6分→3分→1分、という感じでどんどん近づいていきました(笑)。
そして保育園もかなり近いです。
お子さんを保育園に入れている家庭であれば、「家・職場・保育園」のゴールデントライアングルをいかに小さくするかがQOLに大きく影響することを実感できると思います。
6.平日に休める
これは、子どもが未就学児のうちは大きなメリットでした。
サービス業ということで休祝日に働かないといけないので、保育園の方も休祝日に登園させて、毎週月曜と水曜をお休みにしていました。
なので、お出かけや家族旅行はいつも平日です。
どこに行っても空いてるし、ホテルも平日の安い価格で泊まれます。
これが、夫婦どちらかだけがサービス業に従事していたら全く休日が合わず苦労したと思います。
ただし、起業3年目、マメ(息子)が小学校に入ってからはさすがに平日休むわけには行かず、土日に休みを取るようにしました。
その頃には会社の体制も確立して他のスタッフに任せられるようになっていたのでよかったですね。
5. 税金対策
私は扶養範囲内で給与を受け取っていたので、家庭全体として支払う所得税を抑えることができました。
またPC作業等は家で行うので、家賃や水道光熱費などの一部を会社の経費にすることができました。
全体的に家計を助けることになって、受け取る給与以上の経済的メリットがありました。
夫婦で自営することのデメリット
1. プライベートの消失
自分たちが働けば働くほどコストが下がるので、どうしても「我々ができるだけ働いた方がいいよね」という考え方になってしまいます。
また宿泊業というのは基本は年中無休で営業しているので、自分たちが休みでも、何かトラブルが起きれば対応しなければならないこともあります。
結果、365日、昼夜を問わず仕事に関するアプリ通知をチェックし、仕事の話しかしない夫婦が誕生しました。
2. 長期休みが取れない
サービス業あるあるですが、3日以上の連休はとにかく忙しくなります。
子どもたちを連休中ずっと保育園行かせたり、家にいさせたり...寂しい思いをさせたかなぁと思います。
盆正月の帰省もできないので、親や地元の友人に会うことも難しかったです。
総合するとメリットが大きいかも
とはいえ、デメリットはあまり思いつきませんでした。
一般的に、夫婦で同じ仕事をすることの最大の難関は夫婦間のトラブルを仕事に持ち込んでしまうことではないかと思うのですが、我が家の場合はほとんどなかったと思います。
仕事で意見が対立して激しい言い合いになること自体はよくあったんですが、それは単に仕事に真剣に向き合っていたからゆえの対立であってお互いの人格攻撃ではありませんでした。
なので、スタッフや子どもの前で夫婦がギクシャクして変な雰囲気になる、みたいなことはありませんでした。
遠慮せず、また臆することもなく、本音で意見を出せる仕事仲間という感じでしたね。
ただ、私が夫にイラっとしている時は、仕事上での責任追及という笠を着て言いたい放題文句を言いまくっていたこともある、ということは正直に言っておきましょう。すみませんでした。
5年勤めた夫の会社を退職するにあたって…
そんな感じで仲良く働いていた私たちですが、コロナ禍をきっかけに、私は私で別の収入の柱を持った方がいいよねという話になり、私は夫の会社を退職することになりました。
そこでまずは税理士さんに報告したんですが、事務所で私たち2人と税理士さんが向かい合って、
「実は妻が会社を辞めることになりまして...」
と夫が切り出したところ、どうも税理士さんの動揺が激しいと言いますか、そわそわし始めまして。
「なので、いつ頃辞めるのがタイミングとしてベストなのかなっていう相談をしたくて...」
「あ、ちょっと待ってください...。あの...すみません、一応聞かないといけないんですが......離婚...とかそういう話ではないですか...?」
コロナショックが、会社経営だけでなく夫婦仲にまで影響したと思われたようです。税理士さんドキドキさせてすみませんでした。
ビジネスにおいては袂を分かった私たち夫婦ですが、家庭では引き続き仲良くしております。なんとか長続きさせていきたいものです。
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