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読書感想文 #29 『野村ノート』
みなさんこんばんは。いかがお過ごしでしょうか。
今日は終日曇りというか、微妙なお天気でした。退院して、在宅でしたがなんとか1日仕事もできました。
下記の本を読んだ感想になります。
野村ノート
野村 克也著
だいぶ古い本ですが、かつて話題となり、結構売れて、その後も数々の著書をだされていましたが、当時は野球の話というつもりで読みましたが、だいぶ時間も経ち、別の目的で読み直してみました。野村克也さんといえば、選手としても歴代2位のホームラン、監督としても4球団で監督を勤め、セリーグのお荷物球団ヤクルトをセリーグ屈指のチームにしたという歴史に残る名監督です。
目次
1章 意識改革で組織は変わる 2章 管理、指導は経験がベースとなる 3章 指揮官の最初の仕事は戦力分析にある 4章 才能は学から生まれる 5章中心なき組織は機能しない 6章 組織はリーダーの力量以上には伸びない 7章 指揮官の重要な仕事は人づくりである 8章 人間学のない者に指導者の資格なし 終章
2章
・打者のタイプは4つにわけられる。
A型=直球に重点をおきながら、変化球にも対応しようする B型=内角が外角、打つコースを決める。 C型=右翼方向か左翼方向か打つ方向を決める D型=球種にヤマを張る...この4つのタイプはあくまで基本的なもので、言い換えればこの4つの型を相手投手や状況で応用すればよいのである。
この選手はどのタイプなのかを見極める、状況によってタイプが変わる選手もいるようなので、それも注意して配球するのが大事なのだそうです。日本人の多くはA型だとか。
3章
・配球は3つに分けられる。
①打者中心の組み立て ②投手中心の組み立て ③状況中心の組み立て
普段から観察や洞察、考えることをしておかないとできないのだそうです。
・弱者の戦法
短期決戦の戦い方、それは以下の順で考えていかねばならない
①戦力分析と具体的な攻略法 ②コンディショニング ③出場選手の決定 ④どの試合を重視するか ⑤無形の力を重視した戦い
パッとみて①~④は理解できますが、⑤は何だろうと思ってしまいますね。日本シリーズでの戦いに役に立てたのだそうです。
7章
私は指揮官、つまりリーダーについて、常に以下のことを念頭に置いている。 ①リーダーいかんによって組織全体はどうにでも変わる ②リーダーはその職場の気流にならなくてはならない。 ③リーダーの職務とは「壊す・創る・守る」
リーダーがどうあるべきかという教訓になりますね。自身が大きな器をもち、モチベーションを持たせたり、古い価値をすて、新しい価値を作り、既存のシステムの維持をしていくという。
・潜在意識と顕在意識
シダックスが練習試合に行くと、練習中、相手チームの監督や選手にうちの選手やコーチがつかまって何やら質問されている光景をよくみかける...たいてい「野村監督がどういうことを教えているのか」と訊かれるらしい...そこで選手には「野村野球とは意識付けだ」と答えるように言った...選手には本能的に来た球を打つ、あるいは打者が打ったら走者は次塁に走るなど、そういった無意識に取る行動で点を取ることも可能だ。しかし0点に抑えるのは意識が必要だ。一死満塁で内野ゴロの場合、ホームでひとつのアウトを取るのか、二塁に投げて併殺を狙うのか、事前に頭に入れておかなければとっさに判断するのは難しい。
様々なケースを想定して、対応する内容をシミュレーションしておくということでしょうか。これが肝なのでしょう。考えるということが。
8章
監督と選手の要求とは常に相反するものである。例えば監督の要求とは、①自主性をもってほしい..②何のための試合なのか、その目的、目標を明確に持ってほしい。③監督が何をしてほしがっているか知ってほしい。④野球が仕事なのか、それとも勝つのが仕事なのか、自覚してほしい...⑤ファンが何を要求し、何に感動するのか考えてもらいたい
一方選手側の要求とは、①自分の能力を評価してほしい ②自分に何を期待しているのか教えてほしい③結果がだめだったとき、その過程を知ってほしい ④ライバルに比べて自分の評価が低いのはなぜか知ってほしい ⑤自分がいった意見に対し、よいか悪いか、悪いのであれば何がどう不十分なのか教えてほしい
監督がチーム優先で考えているのに対し、選手はあくまでも個人主義である
これは野球に限らず、会社においても、経営者や管理者と労働者の考えにあてはまりますね。選手はまさに承認欲求の塊のような。
・革命を起こせ
南海に来た江夏の転機は、ストッパーという、当時は誰も口にしていなかった役目を確立したことであろう。そしてストッパーという役目に出会い、彼は野球人生を伸ばした.....今年の江夏は期待できるなと思った矢先....トレーナーが来て「江夏に先発完投は無理です」と報告してきた。どうやら血行障害が起きていて、50球程度全力投球したら、子供くらいの握力になってしまうということだった。....そこで江夏にリリーフ転向を勧めた....「また俺に恥をかかせる気か」という。「阪神からトレードされて、えらい恥をかかされたのに」と。...ところがある日、外野の芝生の上にふたりで座って、「リリーフの分野で革命を起こしてみんか」といったら、その言葉に何かピンと来たようだった。「革命家かあ」「そう、革命じゃ」その言葉が彼に響いたのであろう。「わかった。じゃあやる」とようやく首を縦に振ってくれた。
元スーパースターでチヤホヤされてきたが落ちぶれていた江夏さんを復活させた話。
言葉の力はスゴイですね。誰も怒ってくれない孤独感もあったようですが、その気にさせて、輝きを取り戻すことになったのです。
読者のみなさまが、「間のスポーツ」すなわち「心理のスポーツ」であるという野球の本質をこの本を読むことで改めて実感することで、野球を好きになってくれたら....野球界に長く携わった者としてこれ以上の幸せはない。
むすびで、心理学にも通ずるものだということがわかりますね。
2005年の本なので、当時のプロ野球の近況などについて述べられている箇所は情報としては古いし、南海時代の話などは昭和の話ですが、今聞いても無意味ではないと思います。
弱者が強者に勝つための組織論でもあり、リーダー論でもあり、心理学のようでもある内容となっています。勝負に勝つには、考えることが大事であり、土台として基礎が必要であり、選手の時からそのようにしている者が監督としても成功しているということなのだそうです。
プロ球団の他にも少年野球や社会人野球の監督も務め、解説者としても知識を蓄えたからこそ、このような偉大な方になったのでしょう。
それではまた。
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