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夢依存症


朝起きるのが苦手だ。眠いからとかだるいから寒いからとか理由はたくさんあるけれど、私の一番の理由は「夢から醒めたくないから」。だって夢は都合がいい。夢は楽しい。夢には責任がない。だけど、夢は目覚めると消えてしまう。その中での体験も感覚も記憶もどんどん薄れていってしまう。だから私はずっと夢の中に居たい。もちろん怖い夢を見ることだってある。けれど、その夢の感覚を打ち消すために私はまた夢の中へ逃げ込む。

 自他ともに認める朝が弱い人間の私だけど、本当は私だって目覚ましがなくても自然に起きれる。そりゃ多少の寝坊はするけど、基本的には起きようと思った時間に目を覚ますことはできる。あぁ今ここで起きたらスッキリ起きれるだろうな、という感覚だってある。でも、そこで早く起きる快感よりも、もう一度寝て夢の中に戻ることを選択してしまう。そしてまた起きて、寝て、起きて寝て、本当に起きないと現実で取り返しのつかない時間になって初めて、重苦しい体を動かす。一度目に起きた時よりずっとずっと怠くなった体を引きずって、現実へ足を踏み入れていく。我ながら愚かだな。

寝る、という行為は私の中で最大の現実逃避なんだと思う。文字通り、現実ではない場所へ逃げ込んでいるのだから。現実には有り得ないことを夢の中で体験でき、それを現実に持ち帰ってくることは一切ない。たまに現実の野郎が夢の中にしゃしゃり出てきて嫌な記憶をフラッシュバックさせてきやがるときがあるけど、基本的には夢のなかにいれば現実を忘れることができる。


「寝ることは一時的な死」だと誰かが言ってた。全くもって同意。死んだように眠っている、なんて表現もあるくらいだし。実際、眠りに行くときは、死にに行っているような気持ちでベッドに入る時だってある。現実に疲れ果てて、もう何も考えたくなくてどうしようもなくなったとき、私は眠る。眠くなくても、目を閉じ続けて無理やりにでも眠る。現実に居たくないから。忘れたいから。


もしかしたら自分にとっての睡眠ってある種の自傷行為なのかもしれない。たまたま睡眠が人間の最大欲求の中に含まれていて、偶然他の人の生活にも必要不可欠で、パッと見危険なことではないから大丈夫そうに見えるだけで、結果として自分にいいことはしてない気がするから。自分が嫌いだ、傷つけたい、どうしようもなくなりたい、けど痛いのも怖いのも嫌だ。そういうときに、リスカや首吊りの代わりに眠っている、みたいな……? うーんでもなんかしっくりこない。それよりかはどっちかっていうと、依存や中毒みたいな感覚の方が近いかもな。アルコール依存症ならぬ、夢依存症。私は寝ることに依存してるというより、その間に見れる夢に依存している。

夢の中では家族も友達も好きな人も推しもみんなみんな居て、私に優しくしてくれる。私は皆と楽しく過ごせる。幸せ。だからずっと夢に居たい。イカれてる自覚はあるけど、それでも私はもう夢の誘惑からは逃れられないんだと思う。



こんなくだらないこと考えてたって現実は何も良くならないのにね。

じゃ、おやすみなさい。

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