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自分史をヨミモノに②~おばあちゃん~

私が今の仕事をしている原体験にはおばあちゃんの存在がとても大きいのです。

「私は魔法使いなんで」
と、おばあちゃんが言うのを小さいころからよく聞いていました。
童話にでてくるような魔法でないことは幼いながらにも知っていました。
冗談じみたことを自信満々に笑って言っている婆ちゃんが大好きでした。

①でも書きましたが、私たちの会社はそんなおばあちゃんが作った小さな縫製工場です。
お婆ちゃんは、子育てをしながらも、得意としていた縫製の仕事をしたいという想いで、近隣の工場からの内職加工の仕事を集め、近所の仲間たちと一緒に自宅の一部屋を加工場として仕事を始めました。
お人よしと真面目さと体力が売りだったおばあちゃんの引き受ける仕事は、
「納期に迫られたギリギリの仕事」が多かったらしいです。
夕方に何千枚も納品されて、

「翌日の朝7:00に取りに来るからなんとかしてくれ!」

という何とも大変そうな仕事をすることは当たり前で、そんな毎日を繰り返しているうちに、
「あの工場に持って行けば何とかしてくれる」
と評判になったそうです。
少しづつ評判は広まり、

「あそこのおばちゃんは魔法使いじゃで」
「小人の靴屋さんじゃ」

と言われていたことが、
『私は魔法使いなんで』とおばあちゃんが自信満々に言う理由だったんです。

働き方改革が進む現代において、考えられないような仕事ぶり。
当時を振り返って祖母は、
「しんどかったけど頑張ったら喜んでもらえるから」
とよく言っていたそうです。

でも、そんな頑張っていたおばあちゃんですが、早くに夫を亡くしました。
僕の生まれる1年程前、49歳ですい臓がんでした。
だから、僕はおじいちゃんに会ったことがありません。
そこから、今まで『好きな仕事』をしていたものが、
『生きるための仕事』に変わっていったそうです。
受ける仕事も増やし、朝も昼も夜も今まで以上に、働いて、働いて、
自宅の部屋も一つずつ仕事場に変わっていきました。
私の母も、叔母も、おばあちゃんと一緒に働くようになり、
幼少期の僕のベビーベッドはダンボールの中だったんです。

日に日に忙しさは増し、
一緒にご飯を食べることも少なくなりました。
幼いながらにも妹と、
「大きくなっても同じ仕事はしたくないね」なんて話していたような気がします。
ですが、時代は変わっていきました。
今まで国内で作っていた衣料品の製造が海外生産メインに変わっていったんです。
そのため海外とのコストの違いから国内コストもどんどん安くなっていきました。
それじゃなくてもお人好しな仕事をしていたおばあちゃん。
もっと仕事を増やして、無理に無理を重ねていきました。
このころ、お婆ちゃんの体に異変が起きたんです。
思ったように体が動かない。手が震える。
その時にはずぐには検査に行かず、毎日仕事をしていました。
ですが、定期的に受けている検診で異常を指摘され、
詳しい検査を受けることになったんです。
結果は「パーキンソン病」という難病でした。

結果的に、僕の母に世代交代をしました。
若い世代に引き継いだとはいえ、
田舎の小さな下請け工場
という立場からは現状を何も変えることはできない状況にありました。

日に日に苦しくなっていく仕事環境。
僕もなんとなく感じてはいましたが、当時は美容師として仕事をしていて、実家の仕事はしていませんでした。
そんな中で、仕事を任された母の体調が悪くなり、
本業の美容師の仕事が終わった後に、仕事を手伝うようになったんです。

幼少期から大変そうな家族を見て、
『家業は継がない』と決めて目を背けていた私でしたが、
大人になり改めて見てみると、誰もが知っているようなメーカーの商品や、ブランドの商品がたくさん積んである光景が広がりました。
単純かもしれませんが、その時に実感しました。
自分が育った背景にあるものは
こんなに凄いものだったんだ

婆ちゃんのような魔法使いにはなれないかもしれないけれど、
ちょっとでも近づいて、いつか追い越して、
婆ちゃんが作って、母たちが土台を作り上げたものを、守って育てていくことは、
「僕」にしかできないことなんじゃないかと思ったわけです。

自分の生き方は自分で決めたらいい。
無理に家業を継ぐことは無い。
そう言われて育ってきました。
本当は継ぐ必要は無かったのかもしれません。

でも、守りたいもの、未来に繋げたいコト、育ててくれたことへの感謝が、僕を動かしました。

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