アパレル工場の必然的な死
ファッションは誰もが楽しめるコンテンツであり、その幅も多様化しています。
一見、華やかに見える世界に見えますが、表舞台とは裏腹にその実は想像よりも悲惨な場合が多いということを知っておいてほしいのです。
多くの縫製工場は同じような課題を抱えています。
そのほとんどが「お金」に起因するものであるということは、現場でそれを感じているはずの人達でさえ表立って言おうとはしません。
なぜなら、そこには圧倒的パワーバランスが存在しているからです。
もし、苦しみに耐えられず、
闇を表に出そうものなら、
「発注減」や「取引き停止」など、運営に直接影響が出るレベルでの圧力がかかることを恐れている工場は、多く存在することでしょう。
とはいっても、基本的に長い年月をかけて「受注依存体質」が染み付いている工場は、独自の販路開拓のノウハウもなく、その場で言いなりになっているしかないのが現状です。
具体的に、どんな要求があるのか、
見聞きしたケースをいくつか紹介してみましょう。
①単価の押し付け
一人がのスタッフが1時間かけて作る商品があるとしましょう。
その場合、その人にかかる人件費の他に様々な経費がかかるのは誰でもわかりきったことですよね。
諸々を加味して必要な金額が¥1500だった場合、請求金額は¥1500~となります。
しかし、相手側から要求される多くの場合が「ま、こんなもんでやってよ」といった軽い感じでの単価設定です。
その際に提示されるのは、希望価格の半額程度。※この¥700~¥800程度
例えばシャツのボタンを10個つける作業が¥10とか、
計算してみたら、ロス時間を含めて2.4秒で一つ付けろと言っているに等しいのです。これだけでも不可能な時間ですし、一度でも道具を落としたり、トイレにでも行こうものなら、赤字幅は増していきます。
やればやるほど赤字にしかならない委託加工費。
それでも、従業員の給与の支払いや、現状ある借入金の返済、社会保険料や納税をしていくためには、やり続けなければならない環境。
こういったことをいくら理論立てて説明してみても聞く耳持たないといった現状が、今のパワーバランスの中で工場が困窮する原因になっているのです。
②引き取り拒否
例えば、受注した商品が完成したら納品しますよね。
そんなことは当たり前の話なのですが、それを引き取らないケースがいくつかあります。
・発注して作ってもらったけど、売れ行きが良くないから引き取れないよ。
・支払いのタイミングをズラシたいから納品しないでほしい。
・やっぱりやめた。
いろんなケースが考えられるかと思いますが、
こんなことだってあるのが現状です。
多くの縫製工場は、数か月分の余裕(現金)を持った運営をしていません。
というより、できていません。
その月の売り上げがなければ、最低限の支払いすらできなくなる現状があります。
仕事をしたのにお金を貰えないって、ありえないじゃないですか。
経営者は自立した経営をしたいと思っている人がほとんどでしょう。
しかし、ここから見えるのは、
『時間もお金も他者にコントロールされる現状』です。
異業種の方々や、コンサル、各種アドバイザーなどから見れば、
”そんな取引辞めてしまえ!”といったレベルの話かもしれませんが、
長い年月をかけて染みついた『受注依存体質』や『下請け気質』が生み出したある種の《怯え》は簡単に拭い去れるものではありません。
ですが、そんな理不尽な条件を出されてしまう力関係が確実に存在し、受け入れてしまう意識が染みついてしまっているというのは事実なのではないでしょうか。
③圧力
様々な不安要素を抱えながらも、現状を打開しようとしている工場も存在しています。ですが、その取り組みでチャンスを掴めそうになった時、
場合によっては取引先が障壁になる場合も少なくありません。
いわゆるファクトリーブランド等を作って、下請けとしての業態だけではなく、自社ブランディングに挑戦をしていた工場のケースがあります。
※私もブランドを発信している立場として怖さを感じたケースです。
その会社は縫製工場としてではなく、
一つのブランドとしての露出をすることで認知を高め、独自でファンも獲得していった結果、とある企業がその価値に興味を持ち、コラボレーションの商談依頼が舞い込んできました。
しかし、その大手企業との取引となってしまうと、いわゆる「直接取引」になってしまいます。
下請け工場としての立場もある為、事の経緯と要望を問屋に伝えた上で、理解を求めようと動こうとしたそうなのですが、
「下請けの分際で、調子に乗るな」
「断らないと、今後の仕事は出さないぞ」
そんなことを言われたようです。
結果的に、このまま話を進めた場合、今までの受注がすべてなくなる可能性がある為に、せっかく掴みかけたチャンスをあきらめなければならない状態になったようです。
まだまだ問題や課題はたくさんあることと思いますが、ふと思いつくだけ書いてみました。
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ビジネスですから、全てが思い通りにならないこともあるでしょう。
しかし、上に書いたようなことが当然のように行われている環境があるということを知る必要はあると思います。
これから、どんどん縫製工場は減っていきます。
経営者や人材の高齢者が原因で廃業........そう表現されることが多いですが 、
■高齢化が縫製工場の廃業の原因?それは、違います。
働き続けられる環境じゃないからです。
後を継げるような状態にないからです。
なぜか?
儲からないからです。
本質はそこにあります。
とある有名な芸人さんが
「しょうもない。中小企業の倒れ方みたいや。」
と、ゆっくり倒れていく棒を見て言っていました。
それを聞いた瞬間に無性に悔しかった。
そう。たしかに、しょうもない。
懸命に挑み続けても、力に屈するしかないことばかりで、前に進めない。
時間も心も、お金さえも他人にコントロールされてしまっている現状。
悲観的になって、被害者ヅラをして、
愚痴や不満を言っているだけでは何も変わりません。
そして、こういった現状を生み出した原因が他者にあると、人のせいにしている場合もあるかもしれませんが、原因は工場側にもあります。
ほっとけば仕事が来て、ただそれを作っていればご飯は食べられる。
だから、甘えて何の変化も革新も求めなかった。
そのことも自覚しなければなりません。
現状の課題を的確に捉えて、新しい環境や仕組みを作っていくためには、行動をしないといけません。
それそれの立場で、苦しいことも悔しいことも、
思い通りにならないことも、失敗することもたくさんあるでしょう。
アパレルに関係する人は一度読んでほしい。
目には見えないところで、踏ん張っている人たちが居る。
このままでは、必然的にアパレル工場は死んでいきます。
一方的な意見のように感じて、
この記事の内容に苛立ちを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、これを知って、変えていくことができるのは、今を生きている人たちだけなんです。
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