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人は、一年間でどれだけシェイクスピア俳優になれるのか

「人は、一年間でどれだけシェイクスピア俳優になれるのか。」

こんな問いを立てたら、往年のシェイクスピア俳優たちに怒られそうだ。一年間なんて、俳優という職業においては無に等しい。それも相手はシェイクスピアだ。もう勝負は見えている。第一ラウンド、ストレート一発、ノックアウト。ゴングは虚しく鳴り響き、観客のブーイングと嘲笑の中、肩を落として退場するのみだ。

しかし、そうだからと言って、俳優志望の若き野心家に向かって、シェイクスピアという広大な荒野に飛び込むのを「危ないから行くな!」と止めることもできない。

なぜなら、芸術家とは、広大であればあるほど、前人未到であればあるほど、「何が何でも行きたい!」と願う人種だからだ。

俳優は、芸術家だ。シェイクスピアが芸術家であるように。

己の身一つで、人間の深淵と世界の果てとを同時に捕まえてやろうと、手ぐすねを引いて待ち構えている。

俳優は、エンターテイナーだ。シェイクスピアがエンターテイナーであるように。

己の身一つで、この世界の欲望の眼差しを一手に引き受け喝采を浴びてやろうと、見果てぬ夢を妄想している。

ここで初めの問いに戻る。

「人は、一年間でどれだけシェイクスピア俳優になれるのか。」

僕の考えるシェイクスピア俳優とはこうだ。

シェイクスピアが描いた戯曲の中にある人生を、すべて引き受けようと決意し、ただその一点においてのみ、舞台上の人生の方が現実の人生よりも遥かに価値があると確信し、そんな無邪気な人生観と美学に進んで身をさらしていく生活を選んだ人間たちだ。

そして、そんな人間はじわりじわりとは出てこない。

人は、あるとき、稲妻に打たれたように、突然、シェイクスピア俳優になるのだ。

そして、そんな俳優たちは、徒党を組んで現れる。

その瞬間を、僕は、演出家として、常に狙っている。

稲妻の光を見逃さないように。
稲妻に打たれた彼ら、彼女らを、シェイクスピアという無限の荒野に放り出すために。

そんな演出家としての野心をもって、カクシンハン・スタジオの一期生たちと、今、「ロミオとジュリエット」を創作している。

「人は、一年間でどれだけシェイクスピア俳優になれるのか。」

その問いに、僕は全身全霊で挑んでいる。スタジオ生たちも同じだ。
彼ら、彼女らは未だかつてないほど真剣に、シェイクスピアの言葉と交っている。

空を見上げる。稲妻の光が明滅しているのを、僕はたしかに感じている。

【2019年1月26日 10:00 チケット発売開始】
カクシンハン・スタジオ 第1期 修了公演
「ロミオとジュリエット」

公演日時:2月23日(土) 18:00、2月24日(日) 13:00
会場:シアター風姿花伝

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