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セイバーメトリクスの落とし穴を読んで

今更ながらではあるが『セイバーメトリクスの落とし穴』を読んだ。

著者はお股ニキさん。プロ野球経験者でないどころか、中学の野球部中退という経歴。様々なデータ分析に加え、膨大な量の試合を観ることでその野球感を培ったとのこと。

いわゆる、「野球の素人」ではあるが、溢れんばかりの野球愛、野球の真実を追究するその姿勢は本書から存分に感じられた。

こういった、プロではない人が競技を愛する故に生まれた一つの研究結果はファンや競技者に影響を与え、歴史の一ページとなると確信する。

規模は違うものの、筆者が好きな麻雀で書かれた『科学する麻雀』や『勝つための現代麻雀技術論』にも共通するものがある。

両競技ともに程度の違いこそあれ、‘’人間が苦手な確率‘’が大きな鍵を握る共通点がある。それ故に長い間、一部の声の大きなプロによる‘’間違い‘’が検証されることもなく放置され、その競技の発展の妨げとなってきたと考えている。

誤解のないように書くと、大事なのは間違えないことではない。検証されること、事実をベースとして謙虚かつ真摯な姿勢をもって議論されること、である。

そういった意味で、上記にあげた3冊は見事にその姿勢があり、敬意を表する。

『セイバーメトリクスの落とし穴』は熱が有り余るが故に、文章の論理性や文体、本としての構成にやや甘さがあるのは否めない。

ただそれは年間3割を打って40本塁打を稼ぐ打者に盗塁数が少ないと文句をつけるようなもの。それらの不足を補って余りある作品だ。

本書の中にも書かれている通り、近年、野球界の進歩、変化は目覚ましいものがある。

ただ、その進歩、変化は競技者のみでなく、こういった野球文化を愛する人々からも支えられているのだと感じた。

どんな世界であっても、その対象を愛し、愛するがゆえに深く知り、発展させようとするその姿は美しい。

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