#179 湾岸戦争と「ナイラ証言」

湾岸戦争は、1991年、クウェートに侵攻したイラクに対しアメリカ軍主体の多国籍軍が攻撃をくわえた戦争である。
イラクは、クウェートが石油を不当に安く売ってもうけていたことを批判し、イラン=イラク戦争時のクウェートへの借金を帳消しにすること、クウェートの石油資源を手に入れることなどを目的としてクウェートに侵攻。
国際社会から大きな批判を浴び、アメリカを中心とした多国籍軍がイラク軍に攻撃をする形で戦争となった。

その際、アメリカの世論を大きく動かしたのが、ナイラという15歳のクウェート人の少女が1990年10月10日にアメリカの議会人権委員会で行った証言である。その証言は、「イラク軍兵士がクウェートの病院から保育器に入った新生児を取り出して放置し、死に至らしめた」という経緯を涙ながらに語ったというものだった。
証言の様子は以下の動画で日本語字幕で見ることができる。

この証言は全米に放送され、それまで遠い国のできごととして無関心だったアメリカ国民の世論を一気に戦争へと傾けていった。

しかし、1992年にナイラの証言が偽物だったことが判明する。ナイラは当時のクウェート駐米大使の娘で、アメリカで育ち一度もクウェートへは行ったことがなかった。証言自体もクウェート政府が広告会社が結託して行った反イラク国際世論扇動のためのプロパガンダだったのである。

この偽証言は、後に戦争とメディアの関係を考える事例として度々取り上げられている。

【関連記事】

【目次】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?