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風をつくる#5 既婚バイ、大海で大いに迷う

波は去らず、コンパスは回る

こんにちは、Shadeです。
すでに枕詞のようになっていますが、僕は30代、既婚(子無し)、バイセクシャル、メンタル疾患持ちの男性です。
#4で書いたように、先日、現在のパートナーである奥さんへの、人生初カミングアウトを済ませたばかり。
それ自体は、狭い井の中にいた蛙が、ようやく大海に向かって泳ぎ出したような、自分にとって素晴らしい体験となったのですが、やはり外海には風や波がつきもの。航海はまだ始まったばかりですが、僕の乗った船は常に揺れに晒されています(苦笑)
もちろん、バイセクシャルであることを告白したことで、自分がより「自由」を感じられるようになったことは確かですし、奥さんがありのままの僕を受け入れてくれたことは、間違いなくこれまでの人生で一番嬉しいことでした(何度も言いますが、柔軟な考え方で対応してくれた奥さんには感謝してもしきれません)。
けれど、そこで終わらないのが人生というものです。
ここでは、カミングアウト後の夫婦関係の変化と、現在のリアルな心境、新たに生じた悩みなどを書いてみたいと思います。
自分の頭の中を整理するために書いている部分が大きいのですが、お付き合いいただけるとありがたいです。

自分自身をどう定義するか

カミングアウトをした後、奥さんからさまざまな質問を受けました。彼女にとって、自分のパートナーがいわゆるセクシャルマイノリティーであることは寝耳に水の話だったはずのため、それも当然と言えば当然なのですが、これが意外ときつかった…。
まず、自分でも「自分のセクシャリティー」と真剣に向き合い始めたのがごく最近なので、正直な気持ちを言語化して他者に伝えることの難しさ、というか気恥ずかしさが先に立ち、答える前に何度も言葉に詰まってしまいました。
要約すると、彼女が僕に聞きたがったのは主にこんなことです。

1. 女性よりも男性が好きなのか?
2. 私のことを愛しているという気持ちに嘘はないのか?
3. 男性に対してどんな感情を抱くのか?

このうち、2に関しては、嘘偽りなく、愛していると誓って言うことができます。人生のパートナーは彼女以外に考えられないし、こんなにも「素の自分」を受け入れてくれる存在にこれから先出会えることはまずないでしょう。 
そのため、この質問については迷いなくイエスと答えることができました。
問題は、1と3です。
これまでの記事にも書きましたが、僕はこれまで、男性と恋愛関係になったことも、体の関係を持ったこともありません。にも関わらず、性的な対象としては、女性よりも男性に魅力を覚えてきたことは確かです。これを奥さんに説明するのは、なんというか、自分の内臓をさらけ出して見せるような、とても覚悟のいることでした。
性的な対象としては同性により魅力を感じるけれど、恋愛対象として考えたことはない…ということが、自分にとっても自分の立ち位置を定義づける上で非常に難しい点だな、と思っています。
例えば、街を歩いていて魅力的な男性がいたら、つい目がいってしまう。
テレビや映画で、自分のタイプの男性を見たら、タイプの女性に感じるのと同様の「ときめき」を覚える。
しかしそれは、いわゆる恋愛ではない。この気持ちを、自分自身でどう定義するのか。
さらにその微妙な感情を、ストレートである奥さんに伝えるのは正直言って至難の業です。結果としては、上記のようなことをなるべく素直な言葉を使って伝えたのですが、果たして本当に伝わったのか…?
けれど、これらの会話を通じて、奥さんは奥さんで、やはり僕の告白に対して心が揺れているのだな、という至極当然のことを改めて実感しました(そして、申し訳なくも感じました)。

予想よりも航路は複雑だった

思うに、僕が閉じ込めていた「もう一人の僕」は、自分が考えているよりもシンプルな存在ではなかったのです。奥さんからさまざまな質問を受ける中で、僕はそのことを再認識することができました。
むしろ、本当の闘いはこれからというか、自分はまだ、自分と向き合うためのリングに上がったばかりなのだな、と感じているのが正直なところです。
「LGBTQ+」と一言でいっても、そこには、まさに十人十色のさまざまなバリエーションがあり、一人ひとり皆違う。それこそ、世の中の女性が皆それぞれに違うように、そして、男性の中にも色々なタイプがいるように。
「バイセクシャル」と名前をつけたところで、それは僕のアイデンティティーを表す一つの言葉に過ぎない。本当の僕はもっと複雑で、多面的な人間です。そして、それを知ってもらうには、根気強く対話を続けていくしかない。対話の相手は、奥さんをはじめとする他者でもあるし、また自分でもある。
何だか小難しい話になってしまいましたが、要するに僕は、自分と向き合うのを避け続けてきたこれまでの人生の、「大きなツケ」を払わなければならない時を迎えているということです。
どうやらそのツケは想像以上に大きなもののようですが、自分で自分の人生を進めるきっかけを作った今、思いのほか、恐怖心はありません。
巨大な海の真ん中で迷っているのは確かであるものの、狭い井戸の中で一生を終えるよりは遥かにマシ。本当にそう思います。
人生の大きな一歩を踏み出したこと、そして、自分にとって最も大切な存在がそれを受け入れてくれたことへの感謝を忘れずに、これからも大いに迷いながら、少しずつ自分なりの航路を見出していきたい。
そして、可能な限り、自分自身を相手に説明する言葉を模索していきたい。
今はそう考えているところです。

と、またまたまとまりのない文章になってしまいましたが、これがカミングアウト後の、僕のリアルな心境です。
これからも、また何か気づきや進展がありましたら書いていきたいと思いますので、今日はこの辺で。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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