イスラエルを知れば日本の行く末、するべきことがわかる
これからの時代に学ぶべき国は、イスラエルです。どのような点が優れていて、何を学ぶ必要があるかお伝えします。
動画でも詳しくお伝えしています。
皆さまはイスラエルにどんなイメージをお持ちでしょうか?
普段テレビ等で報道されるイスラエルの情報というと、パレスチナとの衝突が大半で、映し出される空爆やミサイルの映像から、漠然と「危ない場所」という認識があるかもしれません。
しかし、そのイメージとは裏腹に、いまイスラエルは、世界有数の『テクノロジー先進国』として世界中の注目を集めています。複雑な建国背景や制約条件を解消するために、最先端テクノロジーの社会実装が進み、それが現代になって「世界の課題解決」に寄与するものとして期待されているのです。
これまでの成長は、いわば「アメリカ型」資源もエネルギーもどんどん使って、大きくなる、拡大するが良しとされてきました。
SDGsやESGなどのキーワードが経営にも求められるこれからの時代の成長は、持続する、循環する、といったことが重要性を増していきます。
そしてそれを体現するのがイスラエルと言えます。
イスラエルについて詳しく知ることは、これからの経営に重要な点を理解するのと同義です。
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イスラエル5つの驚き
イスラエルは国土の60%が砂漠で覆われ、降水量も限られる中で、食料自給率は95%超を誇ります。
時として緊張状態にある他国から水源を頼ることに地政学的なリスクがある中、自前で水を確保し極限まで効率活用するためにしてきた多大な努力が、それを可能にしているのです。
今回はイスラエルにおける驚きの水テクノロジーに焦点を当てながら、今後世界が向かうべき方向性についても考察していきたいと思います。
驚き①「7割の飲料水は海水から」
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イスラエルでは、市民の生活用水の約7割が海水の淡水化で作られています。この水は飲料水としてそのまま飲むことができます。
淡水化というと多大なコストがかかりそう、大変といったイメージがあるかもしれませんが、淡水は国内にある5つの淡水化プラントで製造されていて、1立方メートルあたりのコストは約70円と、非常に安価です。
驚き②「下水の85%を再利用」
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さらにイスラエルでは、農業用水の約85%が下水を浄化した再生水で賄われています。この比率は圧倒的世界一で、2位のスペインが20%ですから、4倍以上の大差を付けています。
日本ではほとんど行われていない下水のリサイクルが、移民の増え続ける砂漠の国イスラエルにあっても、ストレスのない水供給を実現している要因です。
驚き③「根に直接水を送り込む点滴灌漑」
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安定した水の供給が確保しても、砂漠の国で農業生産量を増やすことは至難の業です。イスラエルがそれを実現できた理由は、点滴灌漑技術の開発です。これは、要は、植物の根に直接水を送り込む方法で、非常に効率よく水を使えて、必要な水の量を抑えることができます。
建国以来、イスラエルの耕作面積は3倍近くに増えていますが、その多くは点滴灌漑式の採用により耕作地化できたものです。
驚き④「水道管からの漏水を衛星で管理」
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点滴灌漑技術の開発は元々、砂漠地帯にある街の街路樹の1本だけが大きく育っていて、その原因がその木の根元を通る水道管の漏水にあったことに由来します。水は土にまかなくても、根に直接送り込めば植物は効率よく成長するとわかったのです。
その一方で、水道管からの漏水は大きな問題です。日本でもインフラの老朽化による水道管の破損事故が年間2万件以上起きています。
イスラエルでは、衛星からの画像データをもとに漏水の検知をする技術が用いられ、最先端の漏水対策が取られています。この技術は日本も含め世界45か国に提供されています。
驚き⑤「空気から安全な飲料水を作り出す」
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世界では今でも20億人以上が安全な水にアクセスできない状態にあります。その多くは、水を供給するためのインフラが整わない地域です。
この課題を解決し得る技術として、空気から安全な飲み水を作り出す技術が注目されています。太陽光発電等の代替エネルギーを用いれば、空気だけを資源として利用できるため、水道のない地域や、インフラの分断された災害現場でも利用可能です。
この技術を提供するスタートアップWatergen(ウォータージェン)の創業者は、元イスラエル陸軍の将校です。戦場でいかに安全な水を確保するかという課題の解決が、同社の創業に繋がっています。
今回紹介させていただいた事例からも、
・ないものは知恵を絞って創り出す
・限られた資源は一切の無駄なく有効に利用する
という、イスラエルを語る上でのキーワードが読み取れるかと思います。
これらはイスラエルが置かれた制約条件の中で、その解消のために、必要に迫られて開発したテクノロジーであり、社会実装を進めたものです。
しかし、世界が抱える共通の課題に対して一丸になって取り組もうとする機運の高まる昨今において、その解決の糸口となる技術を多く持つイスラエルには、いずれ訪れる「未来」が詰まっているはずでしょう。
イスラエルを知れば日本の行く末、すべきことがわかる
これからの時代に学ぶべき国、イスラエル。イスラエルの建国の成り立ちや発展の歴史から、多くを知ることができます。
イスラエルの人口は約900万人で、国民あたりの起業数は世界一、GDP 比ベンチャーキャピタル投資額も世界一となっています。私たちの身近にあるテクノロジーにも、イスラエル発のスタートアップによるものも多くあります。
ほんの一例としてあげるだけで、USBメモリ、カプセル内視鏡、Intelコアプロセッサー、Facebookのタグ付け技術、Google検索予測、iPhoneの顔認証と私たちが日常的に触れるテクノロジーがあります。さらには、チェリートマト(プチトマト)もイスラエルで生まれたものだったりします。
どうして人口1000万人にも満たない同国から、これだけ世界に通ずるテクノロジーが生まれてくるのか。ここにもイスラエルが建国以来、抱えているハンデを強みに転換させてきた不断の努力が関係しています。
そこには、これまでとは全く異なる方法で成長を遂げていかねばならない私たち日本人にとっても、重要なヒントが含まれています。
イノベーションの源泉「異文化理解力」
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まず、イスラエルから多くのイノベーションが生まれる理由の1つに「国民の多様性」があります。イスラエルは、迫害を受け世界中に離散し、2000年もの間異なる言語・文化の中で生きてきたユダヤ人の末裔が集まった国です。
そのため、異なる価値観を理解するために話し合い、その中で起こる異なる視点のぶつかり合いがイノベーションの源泉になっているのです。
対して日本では、ほぼ単一の民族と共通の言語で構成されているが故に、「話さずとも空気を読め」で解決されてしまいがちなところがあります。
コミュニケーションを取る上で、言葉に重きを置く(ローコンテクスト)か、言葉以外の意味に重きを置く(ハイコンテクスト)かというスタイルの違いがありますが、イスラエルは日本と対極にあります。
国内人口減少の中、これからますます外国人と仕事上で接する機会は増えてくるでしょう。そんな中で、相手の「空気の読めなさ」を批判するのでなく、伝える側に工夫が求められるようになるでしょう。
国籍を跨いで仕事をするには、語学もさることながら、物事の捉え方やその根底となる考え方に、大きな違いがあることを把握して、コミュニケーションを取ることが必要なのです。
人口1000万人以下のイスラエルで生まれた企業は、ビジネス拡大のために国外にマーケットを求める中で、異文化理解という壁を超える必要があります。その壁を超えて成功をしている企業からは、グローバル時代を生きる上で必要になるその力を学ぶことができます。
リモート海外進出を可能にする「新たな働き方・雇用のカタチ」
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最初からマーケットを国外に向けざるを得ないイスラエル企業にとって、進出先の国への「ローカライズ」もビジネスの成否を握る要因になります。
その上で、2000年近く世界中に離散していたことによって築かれた「ユダヤネットワーク」また先にも述べた「異文化理解力」は大きな助けになっています。
一方で、国外で実際にマーケットを広げるには、現地にコミュニティのある人間を招き入れて、サービスの浸透や連携を図ることも不可欠になってきます。
イスラエルで生まれた企業でありながら、その多くは様々な国籍の人間を交えてビジネスを成功に導いてきたのです。
そして今、こうしてイスラエル企業が実践してきた現地人材の雇用を、自国に留まり実行することを可能にする方法が生まれています。それが「分散型ワークフォース」です。
具体的には、雇用契約、税金、給与支払等、国外で人材を雇用するための手続きを自動化することで、
・雇用される側:どこからでも働ける
・雇用する側:どこからでも雇用できる
ことを可能にする方法です。
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通常、国外で人材を採用するには、現地法人を設立しない場合、業務委託として発注するか、外部企業を介して雇用する必要があります。それなしに海外で人材を雇用するための手続きがあまりに煩雑だからです。
そのため、仮に海外でテストマーケティングを行いたいと思っても、現地人材を活用して実施すれば大がかりなプロジェクトになり、一方で国内の人材だけでやるには展示会への出展等、コマ切れで限定的な方法に限られます。そのため成果も乏しく、あえなく撤退というのが関の山です。
そんな中で、この「分散型ワークフォース」のサービスを利用することで、
・現地に会社を持たないから人材が確保できない、という課題のみならず、
・自社のある場所では優秀な人材を確保できない、という課題も解消できます。
コロナ渦でリモートワークが定着し、住む場所にとらわれない働き方が注目される中、この領域でビジネスを行う複数のイスラエル企業が資金調達に成功しています。
中でも、「Deel」は欧州、東南アジアにも導入企業を広げ、現在日本でのサービス提供の準備を進めています。
同社は、「Work from home(在宅ワーク)」 の先にある多様性に対応し、働く場所に捉われない新しい形として、「World of Work(世界のどこにいても仕事ができる)」環境の実現をビジョンとして掲げる企業です。
「人々の働き方は根本的に変化しています。企業が身近にいる人材だけでなく、世界中の優秀な人材を採用できるように、リモートワークの障害を取り除く独自の方法を提供します。」と企業の幹部は語っています。
「脱ガラパゴス」が求められるこれからの日本
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日本企業のガラパゴス化には、日本がほぼ均質な文化の上に社会が形成されているのみでなく、ピーク時には約1億3000万という大きな国内市場があったために、その趣向に合わせた商品やサービスを提供さえしていれば成長できたという背景があります。
しかし、日本の人口が頭打ちになり減少に転じているこの局面において、日本企業は全く異なる方法での成長を迫られています。
これまで国内ばかりに向けていた市場も雇用も、海外という選択が現実味を帯びてくるでしょう。その準備ができている企業がどれだけあるでしょうか?
オンライン視察のご案内
そんな日本の向かうべき方向を学ぶべく、船井総研では10月末にオンラインでのイスラエル視察を実施します。
本記事で紹介をさせていただいた、
・「異文化理解力」について、イスラエル発で世界190か国2.1億人にホームページ作成ツールを提供するグローバル企業Wix社の日本法人代表積田氏より、異文化間でのビジネスを前提にした経営マインドを、
・「分散型ワークフォース」について、Deel社の日本カントリーマネージャー中島氏より、同社プラットフォームを介した雇用プロセスのデモも含め、リモート雇用とは実際にどのよう進めるのか、雇用関係を結んだ後の国を跨いでの業務遂行のポイントを、
現地の様子を含めてお送りさせていただく予定です。
このほかにも
・世界で初めて国民にワクチン接種を実施したイスラエルの「デジタル医療システム」
・市場を世界に求めるイスラエル企業の多様な雇用形態・働き方を実現する「分散型ワークフォース」
・多くのイノベーションが生まれる力の源「国民の多様性」と「異文化理解力」
などをお伝えします。
コロナ渦の長期化で、なかなか非日常の体験に触れる機会が少なくなる中、逆にオンラインの長所を活かして、これまで縁遠かった中東のテック大国から非日常のビックリ体験を得る機会にしてください!
『驚きのテック先進国』オンライン視察セミナー
―日本の向かうべき未来がイスラエルにある―
日時:10月26日(火)13:30-17:30
料金:会員4万円(税込み4万4000円)/非会員5万円(税込み5万5000円)