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珈琲の大霊師139

「そういう経緯で、このプワルでは、花の精に対する信仰が根付きつつあります。その信仰がリルケさんにも宿り、その姿を見ることができるようになってきたのではないかと」

 マリュの長い話が終わった後、リルケがジョージ達の前に立った。

 それに反応したのは、まだジョージとモカナのみだ。

「ジョージさん、私、しばらくここに残ろうと思うんだ」

 リルケは寂しげに笑って、そう言った。

「そうか。俺もそれがいいと思うぜ?」

「えっ?」

 薄く笑ったジョージの顔を、意外そうにモカナが見上げ、リルケとジョージの顔を交互に見つめた。

 モカナの表情には寂しさがありありと浮かんでいた。

 無理も無い。サラクで政治的な会話が増えて以降、話の分からないモカナはよく席をはずしていた。その間の話し相手は専らリルケだったのだ。

「そんな顔すんな。ずっとってわけじゃねえ。そうだろ?リルケ」

「そうだよ!私を知ってる人が、何もしなくても私が見えるようになるまでかな。それに、母さんの側にもいてあげたいし。大丈夫だよモカナちゃん。私もね、今はもうただ着いて行きたいだけじゃないから。私にも、私の目標があるから。だから、きっと追い付くから。手紙ちょうだい。そしたら私、鉢植えに乗って運んでもらうから。そしたら、また一緒に旅をしよう」

「そ、そっか。はい。分かりました!ボク、手紙書きますね」

「あー、毎日じゃなくてもいいよ?でも、居場所が変わるときには必ず送って欲しいな。できれば、そこにいる日数とかも」

「あぁ、その辺りは俺に任せろ」

「ジョージさんなら、安心だねっ」

「ボ、ボクだってできますっ」

「本当かー?」

 ジョージはニヤニヤと笑ってモカナをからかった。その様子を、リルケは満開の笑みで見つめていた。

 次の日、リルケはマルクに向かうジョージ達を、プワルの端の花畑から見送った。

 その姿が見えなくなるまで、モカナと、リルケは手を振り合っていたのであった。

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