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珈琲の大霊師301

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第36章
    大団円の向こう側へ

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 ジョージ達は山を登っていた。メンバーは、モカナ、ルビー、ジョージ、リルケの4人に、案内役でコートがついた。

「アラビカ家の人達は、姉さんが出て行ってから、ずっとタウロスに反発してて、ある日突然居なくなったんだ。その後、皆で探そうとするとタウロスがそれを咎めるから、結局探せなかったんです」

「それで、畑もあの有り様なのか。まあ、復帰はできそうで良かったけどな」

「はい!外の兵隊さんたちのおかげです!」

 モカナは嬉しそうに返事をした。タウロスが負けを認めた後、ジョージ達は村の修繕の為に外から兵士を集落に招き入れ、戦闘によって傷ついた村の修繕に当たらせていた。

 その中の数人に、ちゃっかり珈琲農場の復帰を指示し、作業させていたのだ。

「それは何よりです。あそこは、私達にも姉さんにも大切な場所でしたからね。ああ、また姉さんの、あの珈琲が飲めるなんて夢を見てるようです」

「おう。俺はここ数日、毎日のように夢で見てるぞ」

「ボクもです!」

「………………さすがですね」

 コートは苦笑いするのだった。


 タウロスの里から、山を挟んで反対側に、その家はあった。

 焼畑によって切り開いた山肌に、整然と並ぶのは、瑞々しい珈琲の木々。赤い実が爛々と色付き、風に煽られてゆらゆらと輝いていた。

「・・・・・・すげえ・・・・・・」

 ふらり、とジョージが吸い寄せられるように手近な珈琲の木に触れる。がっしりとした丈夫な幹。実はまるで宝石のようだ。

「モカナ!!良かったさ!絶対ここにいるさ!ほら、さっさと進むさ!!」

「わわっ、わっ、いざ会うと思ったら緊張してきて・・・」

「モカナちゃんらしくないなー。ほら、行ってきなって!」

「えっ、あっ・・・ボ、ボク1人でですか?もし違う人だったら・・・」

 自信無さそうにモカナが言うと、ジョージは少し考えた後呟くように言った。

「そしたら、ここの珈琲畑をどうやって作ったのか、手入れしたのか聞けばいいんじゃねえか?」

「・・・・・・なるほどです!さすがはジョージさんです!行って来ますね!!」

 と、輝かしい笑顔を残して、ふんすふんすとモカナは大股で家に近づいていった。

 その後ろを、同じような姿勢でドロシーがどすどすと歩くマネをして着いていくのだった。

 家に向かっていく最中、ボクの中に色んな記憶が溶け出すのが分かりました。

 珈琲を淹れるのが下手だけど、味には一番うるさいおじいちゃん。ボクが小さい頃に亡くなったおばあちゃん。珈琲の木の声が聞こえるって言ってたお父さん。それを笑うお母さん。そして、木登りの上手な弟がいました。

 珈琲は、とても素晴らしいものなのに、村の外の人達は全然知らないんだって、外から来た人から聞きました。ボクはそんなもったいない事は無いから、ボクが教えてあげようと思いました。

 丁度、村で作ってるご飯が足りなくなりそうだっていう話を聞いて、ボクが出て行く事にしました。

 皆反対したんだけど、ボクはどうしても外の人たちが可哀想で・・・、珈琲を沢山身につけて、タウロスの所に1人で行って、里から出してもらったんでした。

 目の前の扉を叩くと、見た事の無い背の大きい男の人が出てきました。

「誰・・・・・・・・・・・・・・・・っ!?と、父ちゃん!!じーちゃん!!姉さん!姉さん帰ってきた!!わー!姉さんだって!ホント!エクア、母さんどこ行った?あー、もうなんでこんな時にいないんだよ!!あ、姉さん待ってて!絶対待っててよ!!動かないでよ!?あ、むしろ連れてけばいいのか。ほら、入って入って!!」

 姉さんなんて、昔は呼ばなかったのに・・・。どことなく、目の辺りに弟の面影がありました。

 もう、結婚してるみたいでした。ボクが外に行ってる間に、追い越されちゃったみたいです。

 弟に背中を押されて、というか半分抱きかかえ上げられて、家の奥に連れて行かれると、おじいちゃんみたいになったお父さんと、髪が更に少なくなったおじいちゃんが、泣きながら手を広げてボクに抱きついて、また抱え上げられました。

 皆ひげを剃って欲しいなって、思いました。

 ボクは、泣いていました。

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