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高校eスポーツ、実際に8つの高校を取材して「可能性しかない」と思った話

昨年末にeスポーツ活動をしている高校を4校取材したので、その話をしたいと思います。

記事の立て付けは、高校eスポーツの全国大会にあたる「第3回全国高校eスポーツ選手権」に合わせて、実際に参加する高校の現場を取材する、というものでした。

今回は愛知、大阪、茨城、宮崎。じつは2019年にも、山形、福岡、仙台、北海道の4つの高校を取材していて、合わせると8校のeスポーツ部活動を見学してきたことになります。

全国8校を回って取材している人はなかなかいないのでは、と自分でも少し思ったりもしますが、取材してみて面白いなと思うのは、みなさんeスポーツ活動に至るまでのプロセスやきっかけはもうぜんぜんバラバラなことです。きっかけだけでも生徒が声を上げたり学校側から呼びかけたり、本当にストーリーがそれぞれあります。

今もeスポーツ活動はどんどんと数を増やしているものと思いますが、ターニングポイントになっているのは2019年に茨城県で行われた国体初開催のeスポーツ大会です。「国体で実施した」という事実が、管理職への最高の説得材料となっているケースはどうも多いようです。国体進出から徐々に、eスポーツに”公式感”が出てきた、といったところでしょうか。

eスポーツ部から文化の裾野が広がっていく

各校の様子は記事を見ていただければと思いますが、中でも注目したいのは、「なぜeスポーツ部をやっているか」の部分です。「単に流行っているから」という学校はひとつもなくて、どの学校もそれぞれ「生徒のためになる」との思いが込められています。

・リアルのスポーツでは活躍しづらい生徒の顔が輝き出した
・eスポーツはコミュニケーションが必須。他の部活と何ら変わりない
・生徒の可能性を広げたい
・(下の世代に向けて)eスポーツ部を入学志望動機のひとつにしてほしい

いま挙げたのは、おおよそ共通しているeスポーツ部の顧問側の意見です。話を聞く中で、特に「eスポーツは部活として成り立つし、フィットする生徒にとっては他の何にも代えがたいものになり得る」という点はなるほどと思わされました。体育系と文化系のどちらでもあってどちらでもないような、eスポーツにはeスポーツならではの独自性があるのだと改めて気付かされました。じゃあどこらへんが独自性なの?という話はまた別にあるのですが、さんざん語り尽くされていると思うので、今回は割愛します。

部活としてのeスポーツの何がいいかというと、これは2点あると思います。まず、そこら辺になんとなく漂っていた”学校×ゲーム=タブー”みたいな前提がまったく崩れていること。eスポーツ部で活動する高校生自身が、「中学生のときは考えられなかった」と話すくらい、ここ数年の画期的な変化です。学校でゲームをやる課外活動が、学校で楽器を鳴らす課外活動くらいに当たり前のことになっていく時代が、まさに今なんだと思います。

もうひとつは、eスポーツ部という”居場所”ができることです。大阪のゲームが大好きな女子高生は、「ゲーム=我慢しなきゃいけないもの」だったのが、部がスタートして「ゲーム=大手を振って集中できるもの」になったと話してくれました。好きなものをコソコソやるのではなくて、上達すればするほど周りから「よくがんばったね」と言ってもらえる場所が、新しく生まれたのかなと。eスポーツ部が世に浸透して、ゲームのいい面をたくさん知っている世代がどんどん社会に出てくるときが来たら、いよいよeスポーツはメイン中のメインストリームになるのではないでしょうか。

そうやって考えていると、eスポーツ部は、eスポーツ全体の裾野を広げる今後のキーになってくると思えてなりません。サッカー部や野球部で青春を過ごした多くの人と同じように、中からトッププロが出てくるかもしれませんし、まったく別の分野で活躍するかもしれません。プレイ人口の裾野を広げるという意味でも、eスポーツ部は可能性の塊だと感じました。

eスポーツ部は、今は全タイトルがひとつに押し込められていますが、本来は「LoL部」だったり、「フォートナイト部」だったりと分けられているのが本来だと思います。野球もテニスもサッカーも一緒くたになった「スポーツ部」なんて聞いたことありませんし……。ゲームのタイトルごとに部が設立されるときが来たら、それが本当のeスポーツのスタートなのかなと思っています。

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