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まだまだ続くプラごみの話し。プラスチック資源循環で目指すカーボンニュートラル。

今回もプラごみの話しの記事です。今月は5打席ほど出番があり、そのうち3つがプラのお話し。全く同じだとつまらないので少しづつポイントを変えて話しています。その中で公開の場の打席が、①日経SDGsフェスティバル 特別シンポジウムプラスチック資源循環で目指すカーボンニュートラル、②廃棄物資源循環学会研究発表会国際シンポジウム、の二つ。トップ写真は丸の内地下街のサイネージとの自撮り。丸ビル前の地下街の柱のサイネージが日経ESGsフォーラムの広告が出ていて、なんだか自分の顔が出ているのが不思議な感じでした。

日経SDGsフェスティバルは楽しかったです。一緒に登壇させていただいた皆様の生の声とその議論の奥深さ、それがつながっていないようで実はつながっていたり、意外な論点を見つけることができたり、非常に学びの多いパネルディスカッションにさせていただきました。ありがとうございました。

毎度のごとく、今回のnoteはパネルディスカッション用に準備したメモです。学びの多かったセッションだったので、ぜひ皆さんにも共有させていただき、ペットボトルリサイクルから資源循環を考えてみましょう。そこからSDGsやカーボンニュートラルに結びつくヒントがたくさんあると思います。

世界の廃プラスチック対策と日本の強み

環境上適正な廃棄物管理そのものができていない国は、上流で止めに行く。つまり使い捨てプラスチックの使用禁止・制限。どちらかと言うと途上国。環境上適正な廃棄物管理ができている国は、分別の高度化、リサイクルの高度化などで下流で対策を強化。どちらかと言うと高所得国がこちらの実施状況です。

基本的には、使用済みペットボトルは経済レベル関係なくプラごみの中では比較的多く回収されています。途上国の傾向としては、インフォーマルセクターを中心とした、最終処分後の処分場でその多くが回収されています。基本的にはカスケードリサイクル。回収PETボトルの取引の詳細は不明な点が多いですが、100円ショップに並んでいる製品であったり、途上国の生活プラ製品、一部は繊維としてリサイクルされていると言われています。しかし、環境管理と言う文脈でのリサイクル工場の適正管理状態は不明。児童労働、過剰労働と言う報告例もあります。高所得国は比較的に分別が進んでおり、排出の段階で分別するのが当たり前。カスケードリサイクルに加えて水平リサイクルも実施。リサイクル工場はその国の環境基準や労働基準に則って運用されています。リサイクル工場の管理状況はメーカーの責任にもなりつつあります。おそらく今後もこの二極化が進むのではないでしょうか?高所得国は循環経済に貢献できるリサイクル産業の高度化が進み、その他の国はとりあえずリサイクル状態が当面続くのではないでしょうか?そのギャップを埋めていかない限り、世界からプラスチック汚染問題はなくならないでしょう。

世界ではプラスチック汚染防止に向けたイニシアチブが立ち上がっています。日本はその中でどのような役割を果たしていくべきでしょうか?

世界では数多くのイニシアティブやプロジェクトが立ち上がっています。 本年UNEPが開催した国連環境総会で採択された、プラスチック汚染対策の条約化を始める決議を踏まえて、世界ではプラスチック汚染対策に向けた様々なイニシアチブがスタートしているのは良いことです。その中でも、 §日本や欧州のような高所得国内におけるプラスチック汚染対策に関しては、私は全く心配していないません。このペースでどんどん実施して、その高度化を洗練化させPETボトルリサイクル分野はカーボンニュートラルです、と言える社会が来ることを願っています。でも、 先ほどの二極化の話しのように、途上国におけるプラスチック汚染対策に関して、日本としては支援を通して新たな機会、特にビジネスチャンスがあるのではないかと考えています。§ 政府間の国際支援と言うのは昔の話し、ESGと言う文脈から民民のビジネス的対策がキーポイントになるでしょう。

途上国における民民ビジネスアプローチとしては、例えば日本の企業の取引先の現地工場のプラスチック原料の何%かは、このコミュニティーがこの処分場から回収したリサイクル素材とする、と言うようにブランド化を行い、単にリサイクル素材だけでなく、その素材の裏に隠れたサステナブルなストーリーを乗っけることで、リサイクル素材の社会的価値観を生むようなアプローチが、可能、と考えています。

今年のUNEAでプラスチックによる汚染を防止する国際約束の策定に取り組むことが決まりました。どのような枠組みを目指すべきでしょうか。法的拘束力のある枠組みもにらみつつ、政府や企業はこれからどういった備えが必要になってくるとお考えですか?

条約化の基本構造、つまり三位一体構造がどうなるか次第。三位一体とは ① どれだけ強い法的拘束力を条約に持たせるのか? ②資金メカニズムは? §③遵守メカニズムは?と言いつつも、政府にとってはこの3つ全て重要ですが、企業にとっては法的拘束力の強さと内容にどのように対応していくかがカギとなるでしょう しかし、現時点では交渉会議はまだ始まっておらず、そもそもどのプラスチックを対象とするのか、というそもそも論からスタートしないといけないので、今後2年間の交渉会議を注視することが重要です。

条約ができようとなかろうと、最も重要なプラスチック対策は、普段の生活で我々一般市民がどれだけ対策ができるか、ということです。企業であれば、よりサステナブルな事業に投資していかないといけないというのはもちろんであるが、お客様やユーザー様と共にプラスチック汚染対策を実施できるようなビジネスモデルを構築していく事も必要ではないでしょうか?例えばお客様の消費行動を変えていくビジネスモデル、お客様のその行動が途上国のプラスチック汚染問題対策に貢献できるようなサステナブルなビジネスモデルが考えられます。

ペットボトルのリサイクルは、海洋プラスチック問題をきっかけに急激に加速しましたが、最近は新たに化石資源を使わないことによるCO2削減効果にも注目されるようになっています。リサイクルペットボトルを通じて消費者が他の環境や社会課題にも関心を持つようになるといったことへの期待もあります。ペットボトルのリサイクルに取り組む意義や価値についてどのように考えていますか?

リサイクルの分母をどこに見るかで見方が変わります。当面は喫緊も問題として、分母を使用済みプラスチックとしても良いと思う。PETボトルリサイクル推進協議会の数値を見るとPETボトルのリサイクルはCO2削減に貢献しているため、さらなるペットボトルのリサイクルの高度化・効率化、そして完成度を高めていき、それに伴うCO2削減の結果を明確に出していく事が今後数年のカギでしょう。

環境問題解決をするためのミラクルな手法はないので、先ずはできるところから着々と実施していく事に大きな意義があります。例えばPETボトルリサイクル分野はカーボンニュートラルである、と言える状態になればよいと思います。その意義が例えば企業の社会的価値構築につながるのではないでしょうか?PETボトルリサイクル分野は、廃棄物のリサイクル分野でも洗練された分野を目指すべきです。

現状、リサイクルにはコストがかかり、環境と経済を両立させるサーキュラーエコノミーを実現するにはまだ時間を要します。こうした過渡期をどう乗り越えていけばよいでしょうか?

私は普段仕事で経済をしていない身なので、少々恐れ多いのですが、私の意見は、必要なところに必要なコストがかかるのは当たり前である、です。そもそも論ですが、環境コストを外部不経済にしてきたことが全ての間違いではないでしょうか?簡単に言い直すと、地球を無料の浄化装置やごみ箱としてしか考えてこなかったつけが、今の現状ではないでしょうか? 環境保護やリサイクルにはお金がかかるのが当たり前、という当たり前の社会を築いていく事も、サーキュラーエコノミーの実現に強く結びつくのではないでしょうか?皆さん保険料とか当たり前に払いますよね、税金も。本音は払いたくはないかもしれませんが、自分の健康や生活のためには払いますよね。なんで必要なリサイクルコストは払いたくないのですか?

地球の資源を使う、地球に廃棄物を捨てる、これが一番高く、それを反映した社会こそが、サーキュラーエコノミーを通り越した、本来あるべきサステナブルな社会ではないでしょうか?ペットボトル1本をリサイクルするのに10円かかるなら、それを当たり前に支払うようなその社会。そういう社会が来ない限りは、サーキュラーエコノミーも完成しないでしょう。

リサイクルペットボトルの使用を増やすためには使用済みペットボトルを効率よく回収するインフラの整備が欠かせません。何より消費者の協力が必要ですし、コスト負担をどう配分するかも悩ましいところです。それぞれのステークホルダーはどう連携していくのが望ましいでしょうか?

時間はかかるが環境問題を自分事化していかないといけません。プラスチック汚染はもとより、気候変動もそうですが、普段の生活で地球環境問題を感じるところだが、きっと誰かがプラごみ問題を解決してくれる、きっと誰かが気候変動問題を解決してくれる、自分ではない、と言う考えが一般的ではないでしょうか?何か行動しても結果を見ることができないと、我々人間は、きっと誰かが何かしてくれる、と考えがちです。プラスチック条約を作り、各国政府が責任を持って条約の実施をしていかなければなりませんが、条約の内容に関係なく、一番重要なのが、一般市民の方が普段の生活でどれだけプラスチック対策を実施するかが、条約の遵守や成功のカギを握っています。さらに、プラスチック問題は業界を越えて多くの関係者がつながることで解決していかなければならない地球規模課題です。それぞれが強い守備範囲を担当し、普段の生活においてプラスチック対策が実施されているような社会、それを市民が好んで選択するような社会の構築が必要でしょう。

最後に

環境問題の行きつく先とは床になるのでしょうか?全ての環境問題もそうなんですが、目の前の問題対策の実施、つまりDoingすることは日常的に重要です。法律を作る実施する、条約を作る実施する、SDGs達成に向けて実施する。でもDoingだけでは絶対に環境問題は解決しません。環境問題を突き止めていくと、他の問題もそうなのですが、哲学的な領域に入り込んでいきます。でもそれが人間としての本質的な課題を見る入り口となります。その入り口を入ると、人間と自然のBeingをシンクロさせないといけない、つまり一番シンプルな解決方法が見えます。人間は自然と共に生きなければならない。そうしない限りは、人間は地球を破壊し続けるでしょう。普段の生活に直接関係しているプラスチック問題から、自らのBeingをもう一度考えてみませんか?


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