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途上国支援のゲームチェンジ支援から共創へ - 循環経済に向けた共創的SDGs技術開発 -

はじめに

今回の記事は、少々タイトルが長いのですが「途上国支援のゲームチェンジ支援から共創へ - 循環経済に向けた共創的SDGs技術開発 -」です。5月10日にNIKKEIブルーオーシャン・フォーラム『産官学で取り組む海洋保全』に登壇させていただき、その時にあれこれ考えていたことをnoteに書いてみました。
NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム『産官学で取り組む海洋保全』とは、日本経済新聞社が主催する、海洋保全に関する議論や取り組みを行うイベントです。このフォーラムでは、海洋保全に取り組む産業、行政、学術の分野からの講演やパネルディスカッションが行われ、様々な視点から海洋保全に関する問題点や解決策について議論がされます。具体的には、海洋プラスチック問題やサステナブルな漁業の取り組み、海洋エネルギーの活用、海洋科学技術の進歩など、海洋保全に関する様々なテーマが取り上げられます。産官学の協働を促進し、海洋保全に向けた新しい取り組みやアイデアを生み出す場として、注目を集めています。私はそんな舞台に立たせ知恵ただく機会に恵まれ、国連職員・廃棄物専門官としての意見を色々をお話しさせていただきました。

僕が登壇したのは、クロージング討論。その日一日をかけブルーオーシャンに関する多角的な議論を実施し、最後に日本に期待される役割の切り口からの議論をする場でした。ここ数年、国際情勢の中での日本の立場が見えなくなってきたり、世界の経済市場でも先頭集団にギリギリ食いとどまっている苦しい状態なのが日本だと思います。それでも、舞台の中心ではないのですが、なんだかんだで気になるところに立っているのが、日本ではないでしょうか?

世界からどのように日本は見られている?

色々な考え方があると思いますが、環境分野、特に廃棄物分野担当の国連職員が個人的に感じている事をお話ししたいと思います。まずは、日本はいつも真面目に物事に対して正直に向き合ってきている数少ない国だと思います。歴史的に見ても日本はあらゆると事を吸収し、その和心、とこちらの環心ともに人々に根付いてきたと思います。その心には、なんでも正直に正面から見つめることで、協調的・協力的・寛容的な文化が形成される土台となり、全ての人がつながることを大事にした文化が今でも続いていると思います。

戦後の高度経済成長時代においては、残念ながらその協調的・協力的・環境的な文化が、人々の欲望の中に書き換えられてしまい、その結果、水俣病などの公害事件を引き起こしてしまいました。しかし、その中で我々人類が持つべき心に新たに気づいた瞬間、つまり起こってしまったことを隠さず、正直に正面から見つめることができた瞬間から、本来人間が持つべき姿、自然との共生を改めて重々認識している国民の割合が多いのも、日本の特徴かもしれません。

今回のテーマ「ブルーオーシャン」において、日本は世界的に見ても先進国の一つであり、特に海洋科学技術や海洋資源の管理、海洋保全に関する取り組みなどで高い評価を得ています。日本は海洋国家であり、沿岸域や排他的経済水域が広大であることから、海洋関連技術や海洋資源の開発・保全に積極的に取り組んでいます。例えば、海洋プラスチック問題に対しては、プラスチックごみを回収する船の開発や、マイクロプラスチックの分解技術の研究など、海洋保全に向けた技術開発に注力しています。

また、日本は海洋国際法や海洋政策の分野においてもリーダーシップを発揮しており、国際的な議論や協力体制の構築にも積極的に取り組んでいます。

世界から見ても、日本は海洋関連技術や海洋政策の分野でのリーダーシップを評価されています。一方で、過去における公害問題や、捕鯨問題など、海洋保全における課題や論争もあり、それらに対する対応や取り組みが求められています。また、最近では、海洋プラスチック問題や、福島第一原発事故による放射性物質の海洋汚染など、海洋環境保全の重要性が再認識されている中、日本がどのように取り組むかが注目されています。

技術や対策の洗練さ、と言うのも日本の特徴かもしれません。日本は、先端技術をより高度化することに熱心であり、海洋関連技術においても世界的なリーダーの一つです。例えば、海洋プラスチック問題に対して、日本では海洋ごみを収集するためのロボット技術や、海洋プラスチックを分解する微生物の研究開発などが進められています。また、海洋観測技術においても、先進的な技術を駆使して海洋のデータを収集し、その情報を基にした海洋環境保全の取り組みも進んでいます。

さらに、日本は海洋政策の分野でも、国際的な議論や協力体制の構築に積極的に取り組んでいます。例えば、海洋資源の管理や漁業管理に関する国際ルールの策定に積極的に関与し、国際的なルール作りに貢献しています。

ただし、技術や対策の洗練さを持つ一方で、日本が直面する課題に対する対応や取り組みが十分でないという指摘もあります。例えば、海洋プラスチック問題においては、回収技術や分解技術の開発に取り組む一方で、プラスチックの生産量自体を減らすことに対する取り組みが十分でないという批判もあります。そのため、日本は今後も、技術や対策の洗練さを持ちながら、海洋環境保全に向けた総合的な取り組みを進めていく必要があると言えます。

昨年11月から開始されたプラスチック汚染に関する条約交渉化会議においても、日本の動きは世界各国から注目されています。日本は、プラスチックの生産や消費が多い国の一つであり、今後の海洋プラスチック問題対策に徹底的に関わる必要があり、海洋プラスチック問題の解決に向けた取り組みを進める上で非常に重要なものとなっています。今後も、日本は国際的な協力を通じて、海洋プラスチック問題に対する取り組みを進めることが求められています。

ブルーオーシャンにおける途上国支援の方向性とは?

ブルーオーシャンにおける途上国支援の方向性は、途上国が抱える海洋プラスチック問題に取り組むための技術支援や、海洋資源の持続的な管理・保全に向けた能力強化支援などが挙げられます。具体的には、途上国におけるプラスチックの適切な廃棄やリサイクルのための技術支援や、漁業資源の管理や保全のための技術支援、海洋環境モニタリング・調査のための技術支援などが行われています。また、途上国における海洋資源の持続可能な利用に向けた政策や法規制の整備支援、海洋プラスチック問題への取り組みを促進するための啓発・教育プログラムなども重要な方向性となります。

日本は、途上国支援に積極的に取り組んでいます。日本は、開発途上国の海洋資源の開発や持続的な利用に向けた支援を進めており、また、途上国における海洋プラスチック問題に対する技術支援や啓発・教育プログラムの実施なども行っています。海洋プラスチック問題は、海洋生物や海洋環境に深刻な影響を与える問題であり、日本は先進的なプラスチックリサイクル技術や、海洋プラスチックのモニタリング技術などを提供することで、途上国におけるプラスチック問題の解決に貢献しています。さらに、国際機関との協力や地域間の連携を通じて、途上国支援に取り組んでいます。日本の立ち位置としては、海洋プラスチック問題や海洋資源管理における豊富な経験と技術を持ち、途上国における支援に積極的に取り組むことで、国際社会におけるリーダーシップを発揮していると言えます。

日本の国際協力は、独自の技術を応用した技術協力に力点を置いてきました。特に、環境技術分野においては、高度な技術力を持つ日本企業が海外に進出し、先進的な技術や設備を提供することで、途上国の環境問題の解決に貢献してきました。

また、ODA(政府開発援助)を通じて、途上国に対して環境保全技術の導入を支援することも行われてきました。具体的には、排水処理や廃棄物処理、エネルギー効率の向上などの分野での技術協力や訓練を提供してきました。

これらの取り組みは、途上国の環境問題の解決に一定の成果を上げてきましたが、一方で、単に技術を提供するだけでは、持続的な解決にはつながらないという課題もあります。最近では、ODAにおける環境技術分野の支援において、技術だけでなく、制度や人材育成など、より総合的な支援が求められるようになっています。日本の国際協力における環境技術支援は、ブルーオーシャンの観点から見ると、海洋環境保全や海洋資源の持続的な利用に向けた重要な貢献であると言えます。

途上国支援のゲームチェンジ:支援から共創へ

いままではODAを中心とし、先進国からの途上国での資金提供や技術提供が国際協力・支援の王道でした。インフラ整備とか、途上国の国の根幹の底上げに多大な貢献をしてきましたが、SDGs時代を迎えてその国際協力・支援の仕方が変わってきていると思います。すなわち、ODAを軸にした国際協力・支援から、途上国に置けるビジネス開発、環境保全ビジネスとかSDGsビジネスとか、資本を増やすビジネスを展開していくのに加えて、SDGsを中心とした持続可能性を高めていくビジネス展開を、先進国・途上国関係なく進めていく時代かと思います。

ODAを中心とした国際協力・支援から、ビジネス開発や環境保全ビジネス、SDGsビジネスなど、資本を増やすビジネスを展開することが求められる時代になっています。また、持続可能性を高めるためには、企業の社会的責任(CSR)や社会的価値創造の観点から、環境保全や社会的課題解決に取り組むことが必要です。

こうしたビジネス展開によって、途上国においても持続可能な経済成長が実現されることが期待されます。また、これまでのODAに比べ、投資やビジネスによる支援は、長期的に持続可能な成果を生むことができるというメリットがあります。

日本の立場としては、これまで培ってきた技術やノウハウを活かして、持続可能なビジネスの展開や途上国における環境技術の導入、人材育成などを支援することが求められています。また、先進国・途上国関係なく、グローバルなパートナーシップを築き、共同でSDGsを達成するために取り組むことが必要です。

つまり、途上国支援のゲームチェンジ支援から共創へ、が既に起こっていると思います。従来の途上国支援は、先進国からの一方的な資金提供や技術提供による支援が中心でした。しかし、近年では、途上国自身が持つ資源や技術を活用し、共同で課題を解決する「共創」が求められるようになってきました。この考え方は、従来の「援助」の枠組みを超えた新しい途上国支援の手法であり、持続可能な社会の実現に向けた重要なゲームチェンジとなっています。

ゲームチェンジはどのようにして進めるのか?

大前提となるのが、例えば今までは途上国における環境対策や汚染対策のための政府系を中心とした国際協力・支援を、SDGsビジネス展開のための、SDGs文脈におけるビジネス展開に持っていく事が重要です。

日本企業が途上国においてSDGsビジネスを展開するためには、まず現地の課題を把握し、その課題に合わせたビジネスモデルを考えることが必要です。その際には、現地企業やNGO、政府などとのコラボレーションが不可欠です。特に、現地企業とのパートナーシップは、地域に密着し、課題解決に必要な情報やネットワークを有しているため、非常に重要です。

さらに、途上国においてSDGsビジネスを展開するには、資金調達が欠かせません。その中心となるのがESG投資、もはや政府系ODAではありません。未来につながる投資がゲームチェンジをもたらします。

途上国におけるSDGsビジネスは、企業が環境、社会、経済の持続可能性を目指して事業を展開することであり、その取り組みはESG投資家から評価されます。また、日本の企業と現地企業のコラボによる社会的価値創造ビジネスは、現地の社会問題の解決に貢献することで社会的影響力を持ち、ESG投資家からの支持を受けやすくなります。

また、途上国においては、社会的課題の解決が投資機会につながることもあります。例えば、環境保全に取り組む企業は、エネルギー効率の高い製品やサービスを提供することでコスト削減につながり、競争力を高めることができます。さらに、現地のニーズを把握し、地域社会との共創によってビジネスモデルを構築することで、現地でのビジネス展開をスムーズに進めることができるでしょう。

このように、途上国におけるSDGsビジネスや社会的価値創造ビジネスは、ESG投資においても重要な役割を果たします。企業が持続可能性を意識した事業展開を進めることで、途上国の社会問題の解決と経済発展を同時に実現することができます。

SDGsビジネスを持続的に展開していくためには、現地人材の育成も重要です。日本企業が現地に進出する際には、現地の人材を積極的に採用し、育成することで、地域社会との信頼関係を築き、長期的なビジネス展開を実現することができます。日本企業が途上国においてSDGsビジネスを展開するには、現地の課題を把握し、現地企業やNGO、政府などと協力してビジネスモデルを構築し、資金調達や現地人材の育成などのサポートを受けながら、長期的かつ持続可能なビジネス展開を目指すことが必要です。

ゲームチェンジのその先にあるものとは?

今後は、私たちが直面する多くの問題に対処するために、地球上のすべての人々が協力して解決策を見つける必要があります。これには、先進国と途上国の新たな協力体制です。これまでの国際協力は、先進国から途上国に対する資金や技術の提供に重点が置かれてきましたが、SDGs時代には、より持続可能で価値あるビジネスモデルが求められています。

日本の企業は、途上国と協力し、地域のニーズや文化に合わせたビジネスモデルを構築することで、SDGsを達成することができます。例えば、環境技術や再生可能エネルギーの開発、廃棄物処理などの取り組みがあります。これらの取り組みは、途上国の社会経済的な発展に貢献するだけでなく、地球環境を保護し、SDGsの達成にもつながります。

また、日本の企業は、途上国との協力によって、地域の人々の生活を改善することができます。途上国には、教育や医療、水・衛生などの社会基盤が整っていない場合があります。こうした課題を解決するために、日本の企業が途上国と協力し、地域のニーズに合った社会インフラの整備や、健康や教育などの社会サービスの提供を行うことができます。

これらの取り組みは、ESG投資の観点からも有益です。企業が社会的・環境的・ガバナンスの観点から責任あるビジネスを行うことで、投資家からの信頼性を高めることができます。また、途上国における社会インフラの整備や環境問題の解決など、SDGsに貢献する取り組みは、持続可能なビジネスモデルの構築につながります。

このように、途上国においてSDGsを実現するためのビジネス展開は、現地企業と日本企業の協働によって進められることが期待されます。日本企業が持つ技術やノウハウを現地企業と共有し、現地に根ざしたビジネスモデルを共同で開発していくことが必要です。現地企業との協働によって、地域に根付いた持続可能なビジネスモデルを構築することができ、その結果、地域の経済発展や社会課題の解決に貢献することができます。また、日本企業は、途上国のSDGs実現に向けたビジネス展開を通じて、社会的な価値創造に貢献することができます。SDGsに資するビジネスモデルの開発や、現地における就業機会の創出、地域社会の発展支援など、社会的なニーズに応えた事業を展開することで、投資家からの支持を集めることができ、ESG投資の促進にもつながるでしょう。こうした取り組みによって、途上国におけるSDGs実現が加速され、より持続可能な世界の実現に向けた一歩が踏み出されることになります。

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