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短歌 20首連作『魔法』

魔法/白川侑


雑踏をひとすじなぞりだれひとり動かず杖はやらかく歪む

世界からよどみをすべて掬いあげ科学はいつか魔法になった

飛行用箒ひしめく交差点 また大阪は事故率トップ

最適な生活をする豊かさがあるのに濃厚カップ焼きそば

はりぼてのようにも見える青空はにわか雨すら許しはしない

ぼろぼろと泣いてしまった贋作と無理して笑っているモナ・リザと

歩きたい夜があってもいいじゃない ブランコ上できみはつぶやく

名前とか(パーソナルカラーとか)何も知らないままで星を見る夏

コンビニで買ったミネラルウォーターはリンゴみたいな原罪の味

おすすめに出てきた自己啓発本はスワイプ 雲の切れ目を探す

ビタミンに好かれたきみが選ぶからいつも二軒目からイタリアン

サングラス越しに太陽凝視して隔てるほどに剥きだしになる

ひらけごま交互に言って言い合ってきみの声だけ呪文になれた

AIに侵食された職場から野に放たれたパワハラ上司

大問1、これから会話を流します、正しく生きる答えをください

ポートレート/きみ以外全てが背景/全てが背景になりたがってる

指先から流れ出る血の鮮やかさ今日からこれも光とします

魔法瓶でも冷めるスープ魔法でも保てなかったきみのぬくもり

微笑みは崩さないまま火のなかで5%のガラクタとなる

ロケットがこぼした赤い燃料とジュークボックス夢の残響



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