ピザ食べる時おしぼりひとつじゃ足りない。

ピザ食いてえなどっかにピザが置いてある店ねえかなと思い、商業施設のエスカレーターを登り続けると目の前にピザのサンプルだらけのショーケースが目に入ったため、吸い込まれるように店内に入った。

何名様ですか。1人です。とお決まりの挨拶を交わし、4人がけの席に案内される。
次からは1人です。オーラは4人分です。
とでも言おうかしら。

座ってみると、いい席に当たった。
全体が見渡せる席。
そして目の前には4人組と2人組。
注文をし、横顔を見ながら料理を待つ。

店内は広く、いろいろな客で賑わっているため
会話までは聞こえてこないが、
なんとなくの様子は伺うことができる。

４人組のほうにサラダが運ばれてきた。
さて、取り分ける様子が見ものだ。
その4人組の内部をカテゴライズするのであれば
おそらくリーダー格に匹敵するような感じの
女子が取り分け役となった。

まってくれ、これは、下手くそすぎる。
かちゃかちゃ音出るし、皿からこぼすしで
絶望的に取り分けが下手だった。
いや、まてよ、まさかこれが男心をくすぐるのか。
このやり慣れてない感じ、付け入る隙ありありの感じ。
完璧に取り分けるよりもこういうのがモテるのか。
もはやそうにしか見えなくなってきた。

サラダを取り分け終わると同時くらいにそのテーブルにピザが運ばれてきた。
ナイスタイミングやるじゃん店員さん。
サラダ取り分け女とは別にフォークお配り女もいた。
フォークを配るほうが気遣いでさりげなさが加算される気がする。
さりげなさで勝負するタイプか。
せっかくピザきたのにサラダ食べる4人組。
ピザ食えって。熱々がうまいんだぜピザって。

気分を変えよう。
2人組の様子はどうだろうか。
生ハムの写真撮ってるわ。
手入って邪魔みたいなことやってる。
おそらくこの2人相当仲が良い。
金髪ショートのギャル系と黒髪ロングのOLみたいな人の組み合わせ。
一見、合わなさそうに見えるが、
多分気を遣わないところまで関係がいっている。
あっちの4人組よりはるかに楽しそうだ。
4人組は遠慮している空気感がある。心の底から楽しめていない。
サラダとフォークとそれ以外2人って感じの空気感だ。
もう別々でいいやん。無理して4人になるなって。
そしてお決まりの写真撮影。
各々が盛れる角度とポーズで挑む。
サラダは手慣れていた。

いかんいかん。4人組のほうが見応えあってつい意識がいってしまう。
2人組はというとピザが運ばれてきたようだ。
ピザを手で食べるためか金髪のほうが
おもむろにアルコール消毒液を出してきた。
そしてそれを黒髪のほうにシュッとしてあげた。
しかも黒髪のほう料理の上に手を差し出してきたが
金髪は消毒液がかからないように料理がないところに手を誘導し、シュッとしていた。
そういう気がつけるところの一面を垣間見てしまった。
そういう一面素敵ですね。と声をかけたくなるくらい。
そしてピザって食い方でるよな。
3、4口で言っちゃうタイプとちょびちょび何口もかけて食べるタイプ。
前者を推していきたい。
金髪と黒髪は前者でサラダは後者だった。

そうこうしているうちに自分のテーブルにマルゲリータが運ばれてきた。
結局、1人で食うピザが1番うまい。
無心で独り占めできるんだぜ。
あの円形を平らげていくことに快感を覚える。

快感を覚えるなんて表現をしたから円形を別のものに喩えていやらしい意味での快感について書きたかったが、いやらしい円形が思い浮かばなかった。

いやらしさでいうと視界に入る二つのテーブルに座っている女性はどちらもノースリーブなので脇が見える。
脇を見ながらピザを食う。
ピザだと定石は肘か膝なのに脇なのだ。
金髪ギャルめの腋とサラダ取り分け女の脇。
普通にお腹空いてたからピザがすすむすすむ。

よくよく考えてみると、これ目の前が汚ねえおっさんだったら最悪だよな。
はみ出た脇毛を見ながら食うピザ。しんどい。
おっさんがノースリーブ着てイタリアンくることはまあないか。

途中4人組のほうにパスタが運ばれてきて、サラダ女がパスタ女に変身した。

おいおいまてまて、上手くないか？
フォークとスプーン上手に使って綺麗に盛り付けてる。
お前ほんとにさっきのサラダ女か？
ほんとはできるんだろ。サラダは演じてたのか。
完璧に取り分けることも下手くそに取り分けることもできるタイプか。恐ろしい。

そんな光景を目の当たりにしながらも8分くらいでピザを食べ終わり、そそくさと店を出た。
これでしばらくピザ欲が湧いてくることはないだろう。
とか思いながらエスカレーターを下ると
レストラン街以外は閉まっているためか
これ以上はもう下れないようにパーテーションでふさがれていた。

ピザの味よりも下がって行き止まりで上がってくる恥ずかしさが残った。