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「タオ自然学」フリッチョフ・カプラ

松岡正剛とか西山賢一とか紹介してたら、これも書いてもいいかという気になりました。東洋哲学の世界を現代物理学的に解釈する、あるいは、現代物理学の発展に東洋哲学的な視野がどのように貢献してくれるか、ということに対する提言。90年代の「複雑系の科学」の一角を為す本です。

読むのにわりと苦労した本で、物理学パートはともかく、行列に関する知識(それも物理学で使うものなのですが)がちんぷんかんぷんで、学生だった当時、物理学科の友人の家におしかけて教えを請うた覚えがあります。

般若心経の「空」の概念や、禅の公案がわからない人は、この本を読むと多少わかったような気になれるかも知れません。気になるだけにしておいた方がいいには違いないですが。

端的に言うと、「要素」ではなく「関係性」と「ネットワーク」を重視する点が西洋哲学と東洋哲学では異なっているというスタンスで、それをつなぐ下位階層の「集団」についての解釈を媒介している点が本書のわかりやすさです。

1974年に出版された本書の少しあとの年代の、米ドラマ、スター・トレックシリーズの「The Next Generation」が同様に東洋哲学の影響下にあり、関係性や連続性、などと言ったトピックを取り入れていました。もともと人気ドラマのシリーズとはいえ、長期間続いたので、こういったトピックは受け入れられやすいのかなとは思っています。最近の、日本各地の「聖地」への西洋人の来訪もこれらの大きな流れが影響しているのかも知れません。熊野に来るハイカーは、日本人も知らないような(地元の人しか知らないような)ルートで山を登りたがる、と現地で聞きました。どこで調べているんでしょう。

冒頭にも書いたように、読むのに苦労した本でもあり、謎のメモが挟んであったり、謎の書き込みがあったりします。何と何の知識が必要、というのも今となっては解説しづらいですし、専攻分野によっても違ってくると思うので、敢えて本書をまず読んで見て、わからない項目を徹底的に調べて行くという読み方も面白いかも知れません。私が読んだ当時はインターネットも普及していなかったので、当時よりは易しく読めるのではないでしょうか。

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