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エピソード3 「無職、ユニオンに出会う」 #元テレビ番組制作会社ADの未払い残業代請求ストーリー

~元テレビ番組制作会社ADの未払い残業代請求ストーリー~

エピソード3
「無職、ユニオンに出会う」

2018年4月に「ミッシング・ワーカー」を卒業し、正式な失業者になる為に人生で初めてハローワークに行きました。ハローワークでは、まず初めに、雇用保険の受給をする為の手続きを行いました。

雇用保険とは、失業時に受け取ることができるお金のこと。とは言っても、失業したらすぐにそのお金が受け取れるかと言えば、そうではありません。退職理由で、異なります。自己都合退職の場合、3か月の給付制限が適応されます。その為、雇用保険の受給申請をしてから長い間待たなくてはなりません。しかし、会社都合退職の場合、この3か月の給付制限が適応されません。しかも、たとえ自己都合で退職をしても、退職後、ハローワークに離職理由訂正の申し立てができ、会社都合に変更できます。会社都合に変更できる要件ですが、その項目の中には、長時間労働、パワハラがあります。

約120社のテレビ番組制作会社で構成されている全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が2017年6月に実施したアンケート調査では、ADの平均残業時間は過労死ラインの80時間を超えていました。(共同通信:AD残業、月80時間超 番組制作会社アンケート

ということは、テレビ番組のADであれば、ほぼすべてのADが会社都合で退職できるということです。このブログを読んでいるADの皆さんには、自分の体と相談しながら、会社都合退職という選択肢があることを頭のどこかに入れてもらえればと思います。

このように、ハローワークに行ってから、雇用保険に関して少し詳しくなった僕は、当然のことながら、離職理由訂正の申し立てをしました。

そして、その後、ハローワークの職業相談をしました。そこで、前の会社の嫌なところをすべて話しました。

すると、、、

相談員「えっ!?残業時間が200時間近くあり、給料が25万円弱なんですか?」

僕「そうなんですよ。体力的にきつくて。」

相談員「いや、そうじゃなくて、あの・・・給料がきちんと払われてないと思いますよ。」

僕「えっ・・・そんなことあるんですか!?」

相談員「時給換算して、最低賃金下回っているので違法の可能性が高いです。」

僕「あー、確かに、そうですけど。」

相談員「一度、労働基準監督署に相談に行くのをおすすめします。」

僕「・・・そうですね。ありがとうございます。」

とまぁ、こんな風に、違法の可能性があると指摘された僕ですが、半信半疑でした。というのも、給料をまともに支払わない会社のイメージは、倒産寸前の貧乏会社のイメージを持っていたからです。

しかし、会社で働いていて、そんなこと思ったことがありませんでした。それは、会社のビルが自社ビルだったり、たまに高級な焼肉やお寿司屋さんに連れて行ってもらったり、自主映画を制作してたりと、貧乏な会社とは到底思えませんでした。だから、本当にそんなことあるのかなぁ~と思ってました。

半信半疑ではありましたが、一応と思い、労働基準監督署に後日、相談してみました。すると、、、

僕「すいません。給与明細のことでお伺いしたいのですが・・・。」

相談員「はい。どうぞ。」

僕「残業時間が200時間近くあり、給料が20万円程度なんですが、これって、違法ですか?」

相談員「そうですね、、、ちなみに、お仕事は何ですか?」

僕「テレビ番組制作会社のADです。」

相談員「あー、そうですね。違法ですね。残業代が払われてないですね。」

僕「いや、残業代はみなし残業手当という形で支給されていました。」

相談員「そのみなし残業手当の超過分が支払われていないということですね。ちなみに、何時間分のみなし残業手当ですか?」

僕「えっ!?・・・どういうことですか?」

その後、詳しく説明してもらうと、僕はみなし残業手当という形で残業代を受け取っていました。ここで言う、みなし残業とは、実際の残業の有無に関わらず、あらかじめ給与の中に一定時間分の残業代が含まれて支払われる制度のことです。ここで重要なのは、一定時間分の超過分に関しては別途支給しなくてはならないということ。つまり、会社は残業の有無に関わらず、しかも、超過分は別途支給しなくてはいけないということになります。このみなし残業を会社は悪用していました。

恥ずかしいことに、ハローワークの相談員に指摘を受けるまで、僕は、給与明細のみなし残業手当を理解せずに給料を受け取っていました。初めて給与明細を貰った時に、安いとは思っていましたが、こんなものなのかなと思い込み、その結果、騙され、搾取されていることも気づかずに、僕は長時間労働をしていたのです。

これを知った時、まず、騙され、搾取されていた自分自身に対して、なんて情けないんだ!と悔しい思いで胸がいっぱいになりました。それに、毎日顔を合わせて働いていた僕を平気な顔して、搾取していた管理職や経営者に対して激しい憤りを覚えたのと同時に、僕は、この事実を簡単には受け入れられなかったです。必死に働いている社員に対して、どうしてそんなことが出来るのか?自分より何十個も年下の人間に、なぜそんなことができるか?現場で働く人間を搾取して成立していたあの会社の気持ち悪さに、僕は、人生で経験したことがない、胸のえぐられ方をしました。

そして、その場で残業代請求をすることを決意し、相談員にそれを伝えました。

僕「そうだったんですか・・・。騙されてたんですね、僕。残業代を請求します!泣き寝入りなんて、絶対にしません!」

相談員「そうですか。わかりました。しかし、まずは、香川さんご自身でやって下さいね。それでも、会社が支払わなかった場合、労基署から会社に言いますね。」

僕「えっ、残業代請求って、労基署がやってくれるんじゃないんですか?」

相談員「そうなんですよ。まずは、香川さんご自身で、個人的に請求してください。そういうルールなんです。すいません。」

僕「そうですか、、、そういうルールなんですか、、、わかりました。」

残業代請求をその場でしたかった僕ですが、労基署のルール的にできないとのことだったので、一旦諦めました。そして、家に帰った後、みなし残業や残業代請求について、色々とネットで調べました。

すると、あるYahoo記事(過酷化する映像業界 違法なサービス残業を蔓延させる「構図」)にたどり着きました。驚くべきことにそこに書かれていたのは、テレビ番組制作会社の求人詐欺と未払い残業代について。「えっ!? これ、俺じゃん!」と思わずパソコンにつぶやくほどの内容で、興奮の為か、パソコン画面がいつも以上にまぶしく、文字が読みにくかったのを今でも記憶しています。そして、その記事の最後に書かれている労働相談の窓口に、藁にもすがる思いで電話をしたのが約3か月前の話。これが僕とブラック企業ユニオンとの初めての出会いです。

~次回、労働組合加入編

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