【#平和学園】有休を消化するとほかの先生の士気が下がる!? 〜団体交渉の経過報告〜
はじめに
私たち私学教員ユニオンは、平和学園アレセイア湘南中学高等学校と団体交渉をおこなっています。問題の概要については以下の記事をご覧ください。
「平和学園(アレセイア中学高等学校)に団体交渉を申し入れました」
(https://note.com/sguion/n/nb4c546e95b59)
2023年2月以来、私たちは平和学園と5回の団体交渉を重ねてきました。私たちの要求内容は、主に①Aさんの雇止めの撤回 と、②Aさんの未払い残業代の支払い です。
結論から言うと、学校は未だに雇止めを撤回しようとしません。また、未払い残業代の支払いについてもまだ紛争が続いております。私たちは引続き、学校の不当な対応を改善してもらうために粘り強く闘っていきます。
交渉の過程では、学校側から法令を無視した驚きの発言が繰り返されました。あまりにも道理の通らない身勝手な発言が繰り返される平和学園の実態を皆様にもこの記事でお伝えしたいと思います。
信じられない!平和学園のおかしな主張まとめ
①雇止めを通告したのに合意退職?
Aさんの場合、少なくとも形式上は、一年契約という形で雇われていました。しかし、契約を毎年更新していき、更新が三回に及んだ時、専任(一般的に言う正社員)としての契約に変わる…という約束があり、そのことは学校も認めています。
さて、一年契約のような形(有期雇用契約)で雇われている「本人は契約更新を望んでいる」にもかかわらず、「使用者(会社)が契約更新を拒む」ことを雇止めと言います。労働者が路頭に迷いかねない行為であるという意味では解雇と同じですので、法律・判例上、雇止めには厳しい規制がかけられており、実際には無効になることが多いです。
令和四年の秋、Aさんは年度末に契約が更新されることを望んでいました。しかし学校側はAさんに対し、契約更新を希望するかしないかを聞くことすらせず、一方的に「契約更新はしません」と言い切っています。また雇い止め通知書も出されています。これは少なくとも形式上、明らかな雇止めです。
にもかかわらず学校側は、これまでの団体交渉に於いて、Aさんは「雇止め」ではなく「合意退職」したと主張しています。つまり学校側のみならず、Aさん自身も退職することを望んでいた、と主張しているのです。「一方的に、契約更新はしません、と言い切った」上にそもそも「契約更新を希望するかしないかを本人に確認してすらいない」のに、「合意退職」だと言い張っているのです。
※ところで、先程雇止めは無効になることが多いと言いました。具体的にどのような場合に無効になるかと言うと、「”この労働契約は更新されるだろう”と労働者に期待を持たせるような状態だった場合」が無効になる代表例です。
※Aさんの場合はどうでしょうか? 団体交渉の中で学校側は、採用面接時、「契約更新が三回に及んだところで専任になる」旨の約束をAさんとしていたことを認めました。更に今までの実績として、「契約の更新を希望している」が「学校側の都合で契約を更新しなかった」教員はほぼ皆無であったとも、認めています。これは、契約更新の期待があったと言うべきでしょう。
②有給休暇取得で他の先生の士気が下がるから有給申請は問題行動?
Aさんは学校法人平和学園に勤めた二年目、文化祭の取りまとめ役を任されていました。一年目は文化祭が開催されず、Aさんにとっては初めての文化祭でした。当然、Aさんは激務で疲れ切ってしまいました。その疲れを取るため、Aさんは有休取得の申請をしようとしましたが、学校によって止められ、結果として有休を取得することはできませんでした。
有給休暇は法律で定められた労働者の権利です。いかなる理由でも有給休暇は取得できますし、有給休暇の取得を阻止することは違法(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)です。
しかし学校側は、Aさんの雇止め理由の一つとして、「Aさんが有休を申請しようとしたこと」を挙げています。団体交渉の中でも、これが決定打、即ち最も重要な理由であると明言しています。しかし団体交渉の中で出てきた学校側の主張は、支離滅裂でした。
私たちが「有給休暇は法律でも決まっている、労働者の権利ですよ」と言うと、学校側は「勿論、有給休暇は自由に取得できる」と返答します。
しかし私たちが「”Aさんが有休を申請しようとしたこと”を理由に、Aさんを雇止めにしたんですよね?」と尋ねると「そうです」と返答するのです。
皆さん、お分かりになりますでしょうか。学校法人平和学園は、「有給休暇を自由に取得できる職場」でありながら「有給休暇を申請しようとしたことを理由に教職員をクビにした」と、言っているようなものです。
私たちは団体交渉で、この点を追及しました。最終的に出てきた答えは、「文化祭の時期はどの先生も忙しい。皆歯を食いしばって頑張っている。そんな中でAさんが一人有休を取って休んでしまえば、ほかの先生の士気が下がる」というものでした。
結局学校側は、「有給休暇を自由に取得できる職場」でありながら「有給休暇を申請しようとしたことを理由に教職員をクビにした」という矛盾した主張を繰り返しているのです。
また、文化祭とは果たして、学校の先生全員が歯を食いしばって頑張らなければならないものなのでしょうか? そうまでしなければ文化祭が開催できないというのは、上層部のマネジメントの失敗ではないでしょうか?
使用者には労働者の健康を守る法的義務があります。文化祭を小規模にしたり、先生の数を増やしたり、できることはあったはずです。ですが学校法人平和学園が選んだ道は、激務による疲労を理由に休もうとした先生を切り捨てる、というものでした。
③Aさんがルールを破ったことが問題だ。だがルールは存在しない?
Aさんは、職員室で一種の「ボランティア活動」をしていました。職員室で先生たちが使う印刷機が新しくなれば、その印刷機のマニュアルを作成して配布しました。成績入力システムの便利な機能を知らない人が多いと分かれば、その機能の使い方をまとめて配布していました。「ボランティア活動」は不定期ながら何度も実施され、ベテランの先生からも「とても助かるよ」という言葉をかけてもらうなど、評判は非常に良いものでした。
しかし、学校はこのボランティア活動をも、雇止めの理由として挙げてきました。私たちはなぜこれが雇止めの理由になるのか、と団体交渉で質問したところ「ルールを破ったからだ」と学校側は回答しました。
この「ルールを破ったから」という回答には、不可解な点がいくつかあります。
多くの教職員は複数回、Aさんのボランティア活動を見ているはずです。もしそのボランティア活動が雇止めという重大な事態に発展するようなルール違反にあたるなら、誰かが「ルール違反だ」と咎めるのが普通です。 しかし実際には、Aさんが受けていたのはむしろ、「とても助かるよ」という声だったのです。学校が言う「ルール」が本当に存在するのかどうかすら、疑問になってきます。
私たちは、そのルールが存在しているのかどうか聞きました。学校側は「あります」と答えました。そこで私たちが具体的に誰が作ったどのようなルールなのか尋ねると、学校側はしどろもどろになってしまうのです。と言うのも、そのルールは明文化されておらず、当然、誰が作ったのか、誰がそのルールを知っているのかといった質問にも、答えようがなかったのです。
結局のところ、Aさんの雇い止め理由は「存在してないルール」を破っていたのでした。それゆえ、Aさんのボランティア活動を誰も咎めなかったのも当然ですし、Aさんが平然とそのルールを破ったのも当然です。上層部の人以外誰も知らないルールを、Aさんが知る術などありません。そして学校側は、存在しないも同然のルールを破ったことも理由に、Aさんを雇止めにしたのです。
Aさんの雇い止め理由はどれも正当な理由として成り立つものではありません。交渉の中では本人が契約更新をしているにもかかわらず専任になれなかった教員は一人もいないということでした。平和学園には約束通り今すぐにAさんの雇用を回復し、専任にすべきです。
引越し代30万円を出すからもう諦めろ?!
さらに腹立たしいのは、学校側はAさんに対する和解金として30万円の支払いを提案したことです。
道義的な問題は抜きにして、単純にお金で考えてみましょう。Aさんは今後も、学校法人平和学園で働き続けるつもりでした(だからこそ、令和四年春には職場近くに引っ越しすらしたのです)。学校法人平和学園から給料を貰って、生活を続けるつもりでした。
高等学校教員の平均年収は20歳代後半で400万円程度、30歳代前半で500万円程度と言われています。Aさんは雇止めに遭わなければ、それぐらいのお金を貰っていたはずなのです。その機会が、学校側の(極めてずさんな)雇止めという判断によって失われたのです。これをお金で一挙に解決するとなれば、当然、多額の金額になるだろうと想像するのが普通でしょう。
しかし学校側が提示してきた和解金は、30万円でした。どのような基準で弾き出された金額なのでしょうか? 団体交渉の中で私たちは、その根拠を聞きました。すると驚くべきことに「引っ越し代として大体そのくらいかかるだろうと考えた」と回答してきたのです。
不当な雇止めをした上に、未払い残業代の請求にも応じることなく、「引っ越し代」の30万円を支払うからこの紛争はなかったことにしてくれという学校の態度は、到底受け入れられるものではありません。
私たちは引き続き、学校に対してAさんの雇止めの撤回と、未払い賃金の請求をし続けていきます。
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