さんたぐま

消化しきれない思いを、ままならない言葉にしたり。

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消化しきれない思いを、ままならない言葉にしたり。

最近の記事

夏の夜の街

きのこ帝国の曲を聴いた時に感じる、あの20代前半の淡い記憶と情景にはもう戻れないのだと、悟ったように1人缶ビールの形を見ながら歩く歩く歩く

    • 記憶

      大人になり、都市を跨いでいく。 そのたびに何かを失っていく。 少し前は、もっと感受性が豊かだったよなと思う。 だんだんと、見栄なくなっていく。 周りとの差を感じる。 電車に乗るのも、スーツを着るのも、成れてしまった。 僕の鳴りたかったもの。 僕が慣れなかったもの。 きっと最初はもっと感嘆だった。 ピュアな気持ちを盛って、希望に満ち溢れていた。 全部自分の選択なのは判っている。 そのとき決めたことはそのときに感じたことなんだから、それが正解だと信じている。

      • 人を好きになること

        人を好きになることが大事らしい。 それはそれこそ恋愛でも、友達でも、仕事上の付き合いでも。 確かに努力でその状態に近づくことはできると思う。 でも本当に心から、恋をするように、周りが何も見えなくなるように、その人のことを好きになるっていうのは、本当に本当に、ないことなんじゃないかな。 境遇や心境や環境など、いろんな要因がある。 あとは年齢とかね。 その時じゃないと、恋できない。人を好きになれない。っていうの、絶対ある。なぜなら人は学ぶし成長するから。 学んだら、好

        • 忘れた

          人は物事を忘れていくんだと思う。 場所が変わったり、接する人が変わったり、持つものが変わったり。 変わることで、自分自身も変わっていって、当時持っていた物だとか感情だとか、そういう、大切に思っていたものは、だんだんと忘れていく。 人はなかなか変わらないという。 それもそうだとは思う。 でも、環境によって、簡単に変わってしまうものだとも思う。 接する人に影響を受ける。 自分の言葉と真逆のことをする。 それに自分で気づいてなかったりもする。 僕は、私は、嘘ついた

          忘れられない夜

          人には、一生忘れられない夜っていうのがある。 記憶をなくしても、脳の何処かに削除できない一部として残ってる。そうとしか思えない。 ある夏の終わり。夜。心地良い風が吹く。とても静かな海だった。  近くのコンビニで買ったライターには砂が入って、途中で使えなくなった。 あーあ、なんて言いながら、きれいなワンピースのまま砂の上に寝転がった。 僕もその横に寝る。 静かな波の音。海と火薬と君の匂いが混ざり合う。二人だけ。 辺りには誰もいなくて、本当にこの世界に二人だけみたいだった。

          忘れられない夜

          乗り換え電車の6分間

          朝から自宅で作業をして、少し遅めに会社に向かう11:30。 乗り換えの駅で見たその女の人はかっこよかった。 僕の眼の前を颯爽と歩いていき、ホームのベンチに座った。背は高くない。 短い黒髪を徐ろに後ろで結び、ベージュのジャケットシャツを羽織り、古着っぽい太めのデニム、足元は茶系のアシックスのスニーカー。それに今日は朝から雨が降っていたので、水色の傘を手に持っていた。 電車が来て、同じ車両に乗った。僕は偶然を装い、向かいの席に座る。別になんてことない、ただお互いにイヤホン

          乗り換え電車の6分間

          バー

          バーで、アマレットサワーを飲んだ。 君に飲ませたいと思った。 「失礼します。お通しです。」 ジャーマンポテト。 あったかくておいしい。 「アマレット、お好きなんですか?」 イケメンバーテンダーは、グラスを洗いながら僕に聞いてきた。 「あー、そうですね。少ない知識の中で、好きなお酒で。」 「そうなんですね。いいですよね。アマレットは、タイガー・ウッズも好きらしくて。寝酒にしてるらしいですよ。」 「へえ…。じゃあ、タイガー・ウッズと同じ生活を送ってるってことです

          元カノが大好きだったバンドが解散した

          元カノが大好きだったバンドが解散した時、本当に少しだけ、「嬉しい」と思ってしまった。 いや、嘘だ。 その感情の半分ぐらいは占めていた。 もう半分は、「ロックバンド」というものを愛し尊敬している感情から生まれる、「哀しい」という気持ち。 それは嘘ではない。 一緒にライブに行った。良い曲で、良いライブをすると感じた。今でも曲を聴けば、その元カノとの記憶が呼び起こされる。だから聴かないけど。 一目惚れだった。 たまたま行ったカフェで、いらっしゃいませの笑顔にやられて、僕はそのカフ

          元カノが大好きだったバンドが解散した

          全部全部全部全部全部

          今もまだthe cabsを聴いている女の子と晴れた夜を駆け抜ける夢を見ていたそんな瞬間がリニアモーターカーのように高速でループする吐き気がするというかもう吐いてるここがそうか桃源郷だったんだと認識している、僕が嫌いな言葉たちが宙を舞ってアイツのタバコの煙に巻き込まれるそんな未来はきっと来ないと信じていた。世界が濃い深い青に包まれたとしてもビルは爆発するしロッカールームからはバラバラの可愛い赤ちゃんが生まれてくるそうさ僕らはスーパーマンいつも君の隣にいるようざいよそんな近くにい

          全部全部全部全部全部

          あのライブの帰り道がたまらなく好きだった。

          あのライブの帰り道がたまらなく好きだった。 僕らは2人で、繁華街を歩いていた。きらびやかな景色に似合わない、何年も着ているパーカーを羽織って、ライブの感想や解釈を話していた。 あの歌詞ってどういう意味だろうね、とか。 あの曲の流れめちゃくちゃ良かったね、とか。 多分そんな感じだったと思う。あまり覚えてはいない。そういうもの。 人気のラーメン屋さんがいっぱいで、さすがに並ぶほどじゃないなあと、うどんチェーン店に行って腹を満たし、電車で30分かけて大学近くの一人暮らしの

          あのライブの帰り道がたまらなく好きだった。

          CDで音楽を聴くこと

          たまに、家で一人、夜な夜なCD音源をヘッドフォンで聴くと、あの時の感覚が蘇ってくる。音に、言葉に、歌に、圧倒されて、飲み込まれて、僕の中を支配する。響き渡ってその音楽に集中する。その音楽のことでいっぱいになる。その音楽の乗って、宇宙に行ってる。これ宇宙に行ってるよ。 僕は思い出す。この音楽に生かされていたんだと。この音楽が、大好きだったと。 聴き流しすぎていた。本当に音楽に対して失礼だったと恥じた。 このアルバムのつながりが大好きなんだ。アルバムで聴かないと解らないんだ

          CDで音楽を聴くこと

          完成しすぎた。

          君といるのは完成しすぎてしまった。 だって大抵のエモいことはできた。 春のお花畑、夏の終わりの花火、夜の公園、深夜の海、昼まで寝てた日。 鍵をポストに入れて出ていったり、帰ってきたらかわいい置き手紙があったり。 キッチンで料理してる君に後ろから抱きついて、危ないからと笑いながら怒られた。 君が作るコンソメスープは玉ねぎが細くて、溶けていくようだった。 最初は恥ずかしがってたのに、いつの間にか「乾かしてよ〜」なんて言うようになって。髪が長いとあんなに疲れるなんて知ら

          完成しすぎた。

          溶けた銃口は

          tetoの溶けた銃口は単語から個人的にAcid Black Cherryのピストルを彷彿とさせるんだけどドロドロさが違うし、ゆずのいちごはもっとポップだしフォーリミのmilkはもっと甘ったるい、とろとろって感じ 人それぞれのなんらかの夏があるし何もない夏もあると思うんだけど、よく目に入ったものは海かもしれないし空かもしれないし見慣れたテレビやティッシュかもしれないし だけどそんな先の思いや過去の風景を思い起こしながらまだ暑い暑いと言いながらあるいは思いながら歩くコンクリート

          溶けた銃口は

          意味のない夜を

          なんでもない大衆居酒屋で飲んで、デザートは頼まずに、コンビニでアイスを買って食べながら帰るのがいつもの流れだった。 下北沢から三軒茶屋までの道。 韓国風のネオンが灯るおしゃれ居酒屋。 アーティスティックなペイントのシャッター。 電動キックボードに乗って駆け抜ける人。 東京にかぶれてるとは思う。みんなそうだ。だけどどこか、気持ちが通じてる気もする。 お互いあまり顔は見ない。恥ずかしいから。 だけど隣りにいるのは必然なような気がした。 今夜も、意味のない話をしよう

          意味のない夜を

          きみと音楽

          きみと聴いていたあのバンドはもう聴けなくなった。 バンドに失礼かなあ。 お客さんを一人減らしちゃった。 でも思い出しちゃうから。 聴けないんだ。 ごめんね。 もっと売れたら、その時私は嬉しいかな。 きみとの思い出も一緒に大きくなっちゃう。 消えない過去になっちゃう。 売れないで。 大好きだから。 私の中だけに居てよ。 CDがなくても聴ける時代に、 CDを買うきみが好きだった。 「CD買うのすごいね。」 って言ったら、 「CD買いたいと思わせてくれるバンドがすごいんだよ。」