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スガハラで働く#08|わたしのファーストデザイン(秋山光男)

千里の道も一歩からという言葉通り、今ではベテランと呼ばれ、自らデザインした多くのガラスを世に送り出してきた職人にも、不安と希望(それに若さ)が入り混じったファーストデザインというものがあります。今回は、製造部の責任者である秋山光男さんに、当時のことなどを振り返ってもらいつつ、ファーストデザインについて語ってもらいます。それでは、どうぞ!

ハンドメイドガラスのSghr / スガハラの公式note『スガハラで働く』
暮らしを彩る、暮らしに寄り添うガラス製品を、熟練した職人たちの手によって一つ一つ大切に作っています。すべての製品が生まれる工房は、千葉県の九十九里にあります。海風が心地よく、自然豊かな場所です。noteでは『スガハラで働く』と題して、おもにスガハラで働く人やことを紹介していきます。

テーブルに置いた器が少しだけ宙に浮いているように見えるアウコ、飲み口を唇の厚みに重ねたエアーリップといった、シンプルながらコンセプトが際立つ製品や、いわゆるプチプチといったエアーパッキンを模したグラスや、板チョコ模様のプレートなどといった、もしガラスにしたら?という遊び心あふれる製品まで、20年以上のキャリアのなかでさまざまな製品を生み出してきた、秋山さん。(秋山さんのデザインした製品の数々はコチラから)その最初のデザインは、エアーという小さなフラワーベースです。

秋山さんのファーストデザインである、エアー(現在休止品)

Q:どのような経緯でできたのか教えてもらえますか?

秋山さん(以下、秋山):「たしか、近くの公園に町が運営する小さなガラスの工房があったんです。体験教室とかやっていたりと。そこにこちらから若手が出向で行っていて、自分も行っていました。そこで生まれた覚えがあります。これ、シンプルに作れるのですが穴が真ん中ではないので、少し作り方が変わっているんです。それでこの方法で自分たちが製造中に飲むグラスの蓋を作ったりしている中、何か製品化ができないだろうかと考え、このエアーが生まれました」

Q:当時、秋山さんはいくつですか?20代ですよね?

秋山:「そう、20代の後半ぐらいかな。24で入ったので、確か入社2,3年くらいの時だったような気がします。それで、その年の新作として発表されました」

Q:名前の由来はあるんですか?

秋山:「ガスバーナーで焼いてガラスに穴を開けるんですけど、空気がポンと抜けるので、エアーと。ま、秋山のAでもあるんだけど。その後エアーは2まででます」

Q:なんかアップル製品みたいですね!(笑)

秋山:「たしかに(笑)。13までやった方が良かったかな(笑)」

Q:秋山さんが入社した当時の工房の様子はどんな感じだったんですか?20年近く前だと、相当雰囲気も違いますよね?

秋山:「最初は、同じ年代の職人たちと製造がはじまる前に来て、朝練してましたね。今よりも数を多くやってた時代で、やっぱりシビアだったかな。製造もピリピリしてました。殴られたみたいのはなかったけど、もちろんこっぴどく怒られたりもしたし、今でも片手じゃ収まりきらない恨みが…(笑)」

Q:秋山さんって、美大でデザインを学ばれてたんですよね?デザインされるものに、やっぱりどこかデザイン感覚というものを感じます。

秋山:「そうなんですけど、実は入社するまでガラスをやったことなかったんです。デザインを勉強してみて、やっぱりものづくりがしたいなと思ったので。でも確かに、このエアーも、小さい空間だけど口を開ける位置をずらしただけで、感覚が変わるだろうなとか、そういったデザイン的な考えはあったかもしれないです」

Q:それにしても、一回もガラスをやったことなかったのに、続けられる自信はあったんですか?

秋山:「いや、変な自信はありましたね。自分は一回やったら長続きするタイプで、よっぽどのことがない限りやめないので。まぁ、続けられるだろうなとは最初から思ってました。それよりも、千葉県はじめてだし、何だこの人たちはって職人さんが多かったし(笑)そっちの方にびっくりした覚えがあります」

Q:最後にエアーに戻りますが、お客さんからもらった意見など、印象的なエピソードってあったりしますか?

秋山:「ホテルの部屋の花瓶として採用されたことがあって、各客室に1つずつ、計200個くらい出たのかな。それがすごく嬉しかったことを今でも覚えています」

Q:うわぁ、それは嬉しいですよね。ありがとうございました!

秋山さんのファーストデザイン。当時のことを聞けたり、どこか今に繋がる源流を感じることができたり、とても興味深い話が聞けました。やっぱり初々しさって、なんかグッと来ますよね。今後も、職人たちのファーストデザインを少しずつ紹介できたらと思います。

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