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『スペースロマンサー』 数世紀後の未来を舞台に、探検家であるノヴァが超性能人工知能イブ…

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『スペースロマンサー』 数世紀後の未来を舞台に、探検家であるノヴァが超性能人工知能イブとともに調査のために未知の恒星系の探査を行う中で予期せぬ事態により不毛の惑星に不時着してしまう。 ~人類が持つ宇宙への憧れと未来への希望を詰め込んだロマン宇宙冒険譚~

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『スペースロマンサー』 第36話 人類憲章

 三人は食堂に移動し、食事をとることにした。  ジローは数人前の食料をぺろりと平らげると、大きなお腹をさすりながら長椅子で横になった。それから1分もしないうちに寝息を立て始めるのだった。  シュタインも太陽系の食べ物を食べるのは初めてらしく、食料をまじまじと観察したのち、口に入れると「ふむ」といった感じで一人で頷いていたりした。特にWAGYUが気に入った様子で、「ふむふむ」といって3枚ほど平らげてしまった。  ノヴァとしては、これまでシュタインが食事をする姿をしっかりとみられ

    • 『スペースロマンサー』第35話 船への帰還

      「最悪の人類主義者だって?」  “人類主義者”という言葉をノヴァは初めて耳にした。  なにから聞けばいいのか考えあぐねているとジローが会話に割って入ってきた。 「なんだかノヴァさん、仲が良さそうだったデェス。とくかくお腹がすいたデス!早く中に入りたいデス!」  ノヴァにとってはシュタインと連携したようなジローの行動も不可解であり、しっかりと話を聞かなくてはと考えていた。 「だいたいジロー、なんでお前まであんなことを・・・」  そこまで言った段階で、シュタインがノヴァの

      • 『スペースロマンサー』第33話 得体がしれない

         これからのことを話し合った結果、三人はノヴァのローバーを使って、宇宙船へ戻ることにした。  そのためには帰りの道中の食料を補充しなければならいため、ローバーを回収した後、シュタインの船で食料を積み込む必要があった。 「シュタインさんの船の食べ物デスか・・」 ジローは食料の味が気に入らないらしく、不満げだった。  確かにシュタインの持っている食べ物は独特の風味なうえ、ブヨブヨした食感のものが多かった。  単純な栄養価は高いらしく、シュタインいわく「これこそが完全食」との

        • 『スペースロマンサー』第34話 人類主義者

          「そりゃ失礼。俺と遊びたいってやつが多くてね」  男の正体がわからないため、ノヴァは相手の出方を伺うことにした。 「さすがは《《あの男の息子》》だ。口が達者だな」 「あの男?」  男の発言にノヴァは戸惑った。 「……あんた、親父のことを知っているのか?」 「よく知っているさ。我々は《《良き商売敵》》だったからな」  男は不敵な笑みを浮かべながら答えた。 (俺のことを知っているということは、偶然ここに来たわけじゃなさそうだな……) 「それで……俺たちに何の用だい?」

        『スペースロマンサー』 第36話 人類憲章

          『スペースロマンサー』第32話 エリザベート

          「さて・・、そろそろ”冒険”に戻る時間かね?」  互いの状況についての共有が一区切りついたところでシュタインがそう切り出した。 「ふっ、冒険ね・・」  粋な表現だとノヴァは思った。  ノヴァとしてはシュタインのことや故郷についてもっと話を聞きたかった反面、自らの宇宙船とイブのことも気にかかっていた。 「そうだな。・・俺としては一旦宇宙船に戻って体制を立て直したいんだが、ここはどのあたりなんだ?」 「君たちを見つけたところから、東に数時間ほど歩いて移動した地点だね」  

          『スペースロマンサー』第32話 エリザベート

          『スペースロマンサー』第31話 シュタインという男 其の二

           シュタインが目覚めるのを待ち、部屋を移動する三人。  船の主の案内のもと船のカフェテリアへと向かった。 「はっはっは。ここまでサイエンティストジョークが通じないとはね」  シュタインは笑いながら、ジローとノヴァのそれぞれに飲み物を差し出した。  木素材のマグカップに入れられた飲み物は何かしらのハーブティーのようで、ほのかに甘い香りがあたりに漂った。 「どう考えても冗談には見えなかったデス!おかわり!」  ジローは飲み物を一気に飲み干すと、コップをテーブルに勢いよく置いた

          『スペースロマンサー』第31話 シュタインという男 其の二

          『スペースロマンサー』第30話 シュタインという男 

           再び目を覚ますと、ノヴァの体調はかなり回復していた。  意識もはっきりしてきたところで、体を起こしあたりを見渡す。  部屋ではジローが隣のベッドで眠っており、シュタインは室内の物品のを点検しているようだった。  部屋の中を改めて観察してみると、ここが太陽系文明とは異なる技術体系によって作られたことが分かった。  室内は宇宙船の内部であるにもかかわらず、一見して金属やプラスチック類の使用は見当たらない。  その素材を正確に言い当てることは難しいが、全体的な印象として植物の細

          『スペースロマンサー』第30話 シュタインという男 

          『スペースロマンサー』第29話 新たなる出会い

          ~遡ること12時間前~  力尽き、砂に埋もれつつあるジローに近づく2つの影があった。  一つは二本足の人間のようなフォルムをしているが、もう一つは六本の脚をもつ4トントラックほどの大きさだった。  二本足の影がもう一方の影に話かける。 「みたまえ、エリザベート。あそこになにか埋もれているようだ」  そばまで近づき、うつぶせのジローを仰向けにする。 「おい君、大丈夫か?」  ジローはかろうじて意識を取り戻し、かすれた声で答える。 「もう・・一人・・・いるデ・・・ス。

          『スペースロマンサー』第29話 新たなる出会い

          『スペースロマンサー』第28話 ノヴァの記憶其の1

           ノヴァの父、オーデンが巻き込まれた宇宙港の事故から半年が経とうとしていた。  ノヴァの母も彼が幼い頃に病で帰らぬ人となっており、この事故により両親をふたりとも失ってしまったのだった。  事故により、母だけでなく、父までも失ってしまった心の傷は深く、いまだ立ち直れずにいた。  それでも、ノヴァは天涯孤独になったわけではなかった。  彼の祖父母は健在であり、もともとオーデンは家を留守にすることが多かったため、母の死後は父が地球にいる間を除いて、父方の祖父母とともに暮らして

          『スペースロマンサー』第28話 ノヴァの記憶其の1

          『スペースロマンサー』第27話 命の危機

           目的地を2個目の補給ポイントに変更してから5日ほどが経過した。ノヴァは空腹と喉の渇きに苦しみながらも、必死にハンドルを握り続けていた。  目の前がぼやけ、意識が遠のきそうになる中で、ただ前進することだけを考えていた。 「うぅ…、こんなところでくたばってたまるか」  ノヴァは何度も自分に言い聞かせるように声を漏らした。全身の力が徐々に失われていくのを感じながらも、意志だけがノヴァを支えていた。  横を見ると、2日ほど前に意識を失ったジローがいた。呼吸は非常に緩慢になってい

          『スペースロマンサー』第27話 命の危機

          『スペースロマンサー』第26話  食料危機

           物資ロケットの回収ができなかったことで食料の補給ができず、当初積込んだ物資も底を突きつつある中、飢餓の危険が生じていた。 「もっと節約をするべきだった」  今更過ぎたことを言ってもしかたがないことは分かっていた。  だが、それでも空腹により血糖値が低下しており、腹が立ちやすくなっていた。  結果として、ノヴァの発言は暗にジローを責めるような発言になってしまっていた。 「ノヴァさんが食べすぎなんデスよ」  が、ジローは気にしない。 「人の3倍食べておいて、なんて奴だ!」 「

          『スペースロマンサー』第26話  食料危機

          『スペースロマンサー』第25話 補給地点

          「最初のピックアップポイントに到着しました」  ローバーのコンソールから無機質な声色でコンピュータが目的地への到着を告げる。現在もイブとの通信は途切れたままだった。  ローバーを停車させ、順番に降りる二人。  腕のガジェットから映し出される地図を確かめてみる。 「追跡装置が落下場所を知らせてくれるはずなんだが・・・・、信号が送られてきてないみたいだ」  画面に表示されるマップを拡大したり、縮小したりしてみるが、やはりビーコンの場所は表示されていない。 「壊れてしまったデ

          『スペースロマンサー』第25話 補給地点

          『スペースロマンサー』第24話 穴

           出発後、地球時間で12日が経過した。  この星の地形は単純な平坦さからは程遠く、巨大な山々や深い谷、大小のクレーターが散在している。  こうした地形の影響で、ローバーは急勾配の登り坂を登ったり、深い谷や険しい崖を迂回したりしなければならず、進行はしばしば困難を極めた。  結果として、想定したような速度を出すことができず、補給地点への到着が大幅に遅れてしまっていた。  初めに積み込んだものから食料と水はかなり消費してしまっていたが、もう少しで初めの補給ポイントに到着できそ

          『スペースロマンサー』第24話 穴

          『スペースロマンサー』第23話 旅路の途中

           二人が出発してから2日ほどが経過した頃、彼らの周囲は変わらぬ荒涼とした地表が広がり続けていた。  地平線の彼方まで何もない荒れ地が広がり、風は冷たく、砂埃が舞う音だけが響いていた。  しかし、地上の過酷な風景とは対照的に、上空には異なる光景が広がっていた。  天空に広がる夜空は鮮やかなルビー色の輝きを放っていたのだ。  この星の大気は地球のそれとは異なり、赤外線を多く含む恒星からの光が、大気中の特定の気体と相互作用することで、このような美しい光景を作り出していた。  そして

          『スペースロマンサー』第23話 旅路の途中

          『スペースロマンサー』第22話 物資ロケット

          「そうしたらジロー。ロケットを出してくれ」  物資を補給地点に飛ばすには、推進システムを保持したままで、ミサイルが着弾しても爆発しないよう弾頭部を取り除き、その上で食料などを搭載する必要がある。 「はいデス」   腕のガジェットを操作するジロー。  空気を放出する音を発しながらジローの宇宙船の両側部が開き、ミサイルの格納部が左右に突き出る形で露出した。  ジローは宇宙船に近づいていき、ミサイルを格納部から1本取り出す。    ミサイルは全長2メートル弱の長さで、太さは人間の

          『スペースロマンサー』第22話 物資ロケット

          『スペースロマンサー』第21話 性分(さが)

          倉庫にて水と食料、酸素ボンベの仕分け作業を行った二人。 「よし、これでミッションに必要な分の食料は確保できた。 あとは、水と空気・・・、おい!つまみ食いをするな!」 後ろで作業していたはずのジローを振り返るとその周りには食べ物を包んでいた包装紙がいくつも散乱しており、すでに多くの食料が消費されたことがわかる。 「デェス?」 ジローのすっとぼけ具合に、流砂の穴に戻したくなるノヴァだった。 そんなこんなで、50日分の食料を4つに分けることが完了した。 「ローバーはなるべく

          『スペースロマンサー』第21話 性分(さが)