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『スペースロマンサー』 数世紀後の未来を舞台に、探検家であるノヴァが超性能人工知能イブ…

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『スペースロマンサー』 数世紀後の未来を舞台に、探検家であるノヴァが超性能人工知能イブとともに調査のために未知の恒星系の探査を行う中で予期せぬ事態により不毛の惑星に不時着してしまう。 ~人類が持つ宇宙への憧れと未来への希望を詰め込んだロマン宇宙冒険譚~

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『スペースロマンサー』第23話 旅路の途中

 二人が出発して、2日ほどが経過した頃。  相も変わらず地表は荒涼としており、地平線まで何もない荒れ地が広がっている。  しかし、そのような大地の景色とは対照的に、上空には異なる光景が広がっている。  天空に広がる夜空は鮮やかなルビー色の輝きを放っていたのである。  この星の大気は地球のそれとは異なり、赤外線を多く含む恒星からの光が、大気中の特定の気体と相互作用することによるものだった。  そして、一定の間隔で空を覆うオーロラはさながら幻想的なカーテンのようだった。

    • 『スペースロマンサー』第22話 物資ロケット

      「そうしたらジロー。ロケットを出してくれ」  物資を補給地点に飛ばすには、推進システムを保持したままで、ミサイルが着弾しても爆発しないよう弾頭部を取り除き、その上で食料などを搭載する必要がある。 「はいデス」   腕のガジェットを操作するジロー。  空気を放出する音を発しながらジローの宇宙船の両側部が開き、ミサイルの格納部が左右に突き出る形で露出した。  ジローは宇宙船に近づいていき、ミサイルを格納部から1本取り出す。    ミサイルは全長2メートル弱の長さで、太さは人間の

      • 『スペースロマンサー』第21話 性分(さが)

        倉庫にて水と食料、酸素ボンベの仕分け作業を行った二人。 「よし、これでミッションに必要な分の食料は確保できた。 あとは、水と空気・・・、おい!つまみ食いをするな!」 後ろで作業していたはずのジローを振り返るとその周りには食べ物を包んでいた包装紙がいくつも散乱しており、すでに多くの食料が消費されたことがわかる。 「デェス?」 ジローのすっとぼけ具合に、流砂の穴に戻したくなるノヴァだった。 そんなこんなで、50日分の食料を4つに分けることが完了した。 「ローバーはなるべく

        • 『スペースロマンサー』第20話 物資問題

          ノヴァは船外活動用のスーツを身に着けた後、ジローとともに探索の準備のために倉庫へ向かった。 倉庫は船の最後部エリアに配置されており、最前部に位置するコクピットエリアからだと移動に数分を要する。 「探索はどのくらいの時間がかかる?」 倉庫に向かう道中でノヴァがイブに計算を依頼する。 船の中ではどこにいてもイブとやり取りをすることが可能だった。 「ここから半径2000kmのエリア内の複数のポイントを回ることとなります。進行速度によりますが、出発から帰還まで30日から50日

        『スペースロマンサー』第23話 旅路の途中

          『スペースロマンサー』第19話 探索計画

          二人はコクピットルームのミーティングエリアに移動し、改めて今後の探索計画について話し合うこととした。 「これからのプランはあるデスか」 とジローがノヴァに尋ねる。 「もちろん。優秀な探検家は常に先を考えて行動するものだよ、ジローくん。」 「うひょー! そのとおりデス!ワタシもいつも次のご飯のメニューを考えながら生きているデス」 「・・・。 ジローの救出に向かう道中も環境のチェックは行ったんだ。」 とディスプレイを操作しながら答えるノヴァ。 「マスターがカッコをつけられ

          『スペースロマンサー』第19話 探索計画

          『スペースロマンサー』第18話 相棒(バディ)

          やっとお腹の具合が落ち着いたようすのジローは 壁に備え付けられているベンチに横たわりながらお腹をさすっている。 「これからどうするデスか」 なんとも呑気な様子に気が抜けてしまう。 ノヴァは自身の食事をすでに終えており、コーヒーを淹れている最中だった。 もちろんあらゆる食べ物や飲み物はカートリッジを用いてフード用3Dプリンターを使えば自動で作ることができるが、ノヴァは自らの手でコーヒーを淹れることにこだわっていた。 そのようなことはもはや様式美に過ぎないかもしれないが、

          『スペースロマンサー』第18話 相棒(バディ)

          『スペースロマンサー』第17話 因果

          「ノヴァさんはなんでこの星に来たんですか?」 けぷっと、食べすぎで苦しそうにしながらジローが尋ねる。 「テラフォーミングのための調査で来たんだ。本当は別の星を目指してたんだけどよ。船が何かにぶつかって、ここに墜落しちまったんだ」 その時のことを思い出すと、背筋に冷たいものが走るのを感じるノヴァだった。 あの状況でこの程度の損害となっているのは奇跡としか言いようがない。 「ああ。やっぱり、あのときの宇宙船はノヴァさんのものでしたか」 合点がいったというようにジローが言う。

          『スペースロマンサー』第17話 因果

          『スペースロマンサー』第16話 ジローの生態

          「ふぃ~。お腹一杯デス。非常にへんな食べ物でしたがありがたくいただいたデス。」 腹が膨らんで、寝転がりながらすこし苦しそうにつぶやくジロー。そのお腹は大きな風船をスーツの下に仕込んだのかと思うほど膨れていた。 「ごちそうになっておいて、相変わらず失礼だな」 ジローのヘルメットの中身に興味深々のノヴァだったが、食事をするために前面のガラス部分が収納されて、その中身があらわになったときには驚いた。 なんと、その中身もヘルメットに映っていた髑髏顔そのままだったのである。 どうや

          『スペースロマンサー』第16話 ジローの生態

          『スペースロマンサー』第15話 惑星トロル

          宇宙船に戻るため、ローバーに乗って移動するノヴァとジロー 行きはイブとの通信が可能であるとは言え、孤独を感じずにはいられなかったが、今は隣に生きた人間がいる。そう思うだけでノヴァの心中として帰りの道中はうれしさがあった。 しかも、相手は別の星系からきた異なる文明の人間だ。 人類は宇宙への進出を果たし、宇宙航行技術や惑星開拓技術を進歩させてきた。それでも太陽系外の恒星系に居住可能な場所を作るのは、距離や時間、環境、資源の面から困難だった。 かつて多くの人が、それぞれの理由や

          『スペースロマンサー』第15話 惑星トロル

          『スペースロマンサー』第14話 ジロー

          「この方の宇宙船に言語データがあれば、翻訳が可能になるかもしれません。まずはそちらに向かったらいかがでしょうか。」 というイブの提案に従い、宇宙船へ向かう二人。 救出地点から徒歩で移動すること15分。 その間も髑髏ヘルメットは、何かしらをノヴァに語り続けていた。 当然ノヴァは何を言われているのかわからないため適当な相槌しか打てなかったが、相手が必死にコミュニケーションを取ろうとしている思いを感じて、歯痒い気持ちが募るばかりだった。 すると、髑髏ヘルメットが、何かを指さし

          『スペースロマンサー』第14話 ジロー

          『スペースロマンサー』第13話 ファーストコンタクト

          「ちくしょう!俺は骨を拾いに来ただけだってのか!?」 膝をついて、がっくりと肩を落とすノヴァ。 「・・・・待てよ?だったら、どうして生体反応なんか・・・?」 そのとき、 すっと スーツが立ち上る。 「うわぁぁぁ、おばけぇぇ」 尻餅をついて後退りをするノヴァ。 すると立ち上がったスーツからなんらかの音声が発せられる。 「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」 「しゃべったぁぁぁぁ!」 疲労困憊の中、あまりの衝撃に気が動転するノヴァ。 そこにイブから通信音

          『スペースロマンサー』第13話 ファーストコンタクト

          『スペースロマンサー』第12話 救出

          ローバーを走らせること7時間 「反応を検知しました。ここから、距離にして15分ほどの座標です。」 しばらくローバーを走らせると、前方に大きな陥没が見えてきた。 「あの穴の中から、生体反応を検知しました。」 「落下物の衝突によるクレーターか?」 「いいえ。自然にできた流砂の陥没です。」 「流砂だって!それはまずいじゃないのか?!」 アクセルを踏んで加速し、流砂の穴のギリギリでローバーを停止させる。 ローバーから降りて、流砂の中をのぞくと、真ん中から人の腕のようなも

          『スペースロマンサー』第12話 救出

          『スペースロマンサー』第11話 流れ星

          〈不時着して2日目の夜〉 「ここの夜空もいいねぇ」 と夜に瞬く星を眺めながらつぶやくノヴァ 「この星は比較的大気が薄いため、空が暗く、星の輝きが強調されています。」 「それぞれの星のそれぞれの夜か。それこそロマンだよ・・、ん?」 その瞬間、空の輝きの中で一つの光が異常な速さで膨張を始めるているのをノヴァは見つけた。 よく見てみると、何かがこの星に向かって落下しているようだった。 その物体は、閃光を放ちながら夜空に一筋の線を作りながら、山の稜線を越えて姿を消した。 数

          『スペースロマンサー』第11話 流れ星

          『スペースロマンサー』第10話 父と子 

          惑星に不時着した最初の夜、ノヴァは夢の中で父と過ごした記憶をフラッシュバックしていた。 _________________________________ 食卓を囲う7歳のノヴァと、父【オーデン】。 「父ちゃん!ニュース見たよ!」 目を輝かせながら父親に話しかけるノヴァ。 オーデンは、太陽系文明の中でも有数の宇宙探検家であり、これまで様々な星への有人探査を成功させ、宇宙開拓に大きく貢献してきた人物であった。最近でも未踏の星の探査で成果を持ち帰りニュースをにぎわせていた。

          『スペースロマンサー』第10話 父と子 

          『スペースロマンサー』第9話 イブとハチ

          今後の探索に備えて、必要な物品を倉庫へと探しに来たノヴァ。 探査用ローバーに移す食料や、空気タンクなどを並べていく。 「ふぅ。やっぱり一人で作業するとなると骨が折れるな。 なぁ、イブ。今回の旅にアンドロイドボディは持ってこなかったのか?」 イブが太陽系での活動で時々使っていたヒューマノイド型のアンドロイドボディを思い出しながら問いかける。 「持ってきていません。いまの私のボディはこの宇宙船ですので。」 すかさずスピーカーを通して、イブが答える。 「両方あったほうが便利

          『スペースロマンサー』第9話 イブとハチ

          『スペースロマンサー』第8話 宇宙栽培

          「新鮮な野菜がたべたい!」 とノヴァ 「必要ありません。野菜から接種すべきビタミンはキューブで摂取できます。」 と答えるイブ 「あんなものは食事とは言えない!【ドーム】を出してくれ」 すこし間をおいて 「こちらです。」 と【ドーム】と呼ばれる人の上半身ほどの立方体型の装置を2つ運んでくるロボットアーム ノヴァは装置を受け取り、一個ずつ外へ運んでいく。 宇宙船近くの開けた場所で立方体のを地面に置いた後、一つの立方体に向けて腕のコンソールを操作する。 すると、ドームの

          『スペースロマンサー』第8話 宇宙栽培