『スペースロマンサー』第25話 補給地点
「最初のピックアップポイントに到着しました」
ローバーのコンソールから無機質な声色でコンピュータが目的地への到着を告げる。現在もイブとの通信は途切れたままだった。
ローバーを停車させ、順番に降りる二人。
腕のガジェットから映し出される地図を確かめてみる。
「追跡装置が落下場所を知らせてくれるはずなんだが・・・・、信号が送られてきてないみたいだ」
画面に表示されるマップを拡大したり、縮小したりしてみるが、やはりビーコンの場所は表示されていない。
「壊れてしまったデスか?」
ジローも画面をのぞき込んでみている。
「かもな。でも、着地予想地点からそう遠くに落ちてはいないはずだ。手分けして探そう。ジローはローバーの北側のエリアを頼む、俺は南側を見てみる。」
残っている食料と水は多くはない。
もし補給用物資が見つからなかったら、相当にまずい状況になる。そう考えると、さすがにノヴァも焦らずにはいられなかった。
「了解デス」
そうして、二人は互いにエリアを分担して、補給ロケットを探すこととした。
捜索から30分ほど経過したあたりで、ジローから通信を受ける
「・ジジ・・ノヴァさん・・ジジ・・聞こえる・・ジジ・・スか!?」
距離がすこし離れるだけで通信に障害が発生していた。
「聞こえるぞ!どうした!?物資があったか?」
「ジジ・・・・あったというか・・ジジ・・、とにかく・・・こっちに来て・・ジジ・・デス・・・」
通信が途切れており、内容を正確に聞き取ることができない。
「そっちに行けばいいんだな!すぐに向かう!」
なにかを見つけたということであれば、物資に違いないはずである。しかし、先ほどの様子から察するに・・・・。
期待と不安が入り混じるなか、ジローとの合流を急いだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
10分ほど走って移動をするとジローの姿が見えてきた。
遠目から見るに、ジローは棒立ちとなり、何かを見つめているような様子だった。
もうすこし近づいていき、話しかけようとしたところで、ジローが見ていたものが大きな穴だったということに気がつくノヴァ。
ここに空いている穴も、いぜん見つけたものと同じような大きさだった。
「ジロー、確かにこの穴は気になるが今はそれどころじゃ・・」
「あそこを見て欲しいデス」
ジローは穴の淵の部分をゆび指さしており、ノヴァはそちらの方を確かめてみる。
そこには金属の破片のようなものが散らばっていた。
ノヴァは嫌な予感を感じつつ、近寄りつつ、手にとってその破片をよく確かめてみた。
それは補給物資ロケットの破片だった。
焦りの感情が強くなる。あたりを見回してみるも、肝心の物資が搭載されているロケットの本体部分はどこにも見当たらない。
「食料が落ちていないかあたりを探してみたんデスが、見当たらなかったデス」
「・・・なんてこった・・・。食料を持っていかれちまった」
物資ロケットは着弾しても爆発しないように改造を施してある。そのため、ロケットが砕けたのは何かの外力の作用によるということになる。
つまり、ロケットはこの穴ができる前にこの地点に落下し、その後にこの穴をあけた”何か”がロケットごと穴を穿ち、一部の破片を残したまま、そのまま持ち去ってしまったことを意味していた。
その時の衝撃で発信器も故障したに違いなく、信号が送られてこない原因もそこにあると思われた。
「・・どうするデスか?」
「なくなっちまったもんはしょうがない。次の目的地を目指すぞ」
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