『スペースロマンサー』第35話 船への帰還
「最悪の人類主義者だって?」
“人類主義者”という言葉をノヴァは初めて耳にした。
なにから聞けばいいのか考えあぐねているとジローが会話に割って入ってきた。
「なんだかノヴァさん、仲が良さそうだったデェス。とくかくお腹がすいたデス!早く中に入りたいデス!」
ノヴァにとってはシュタインと連携したようなジローの行動も不可解であり、しっかりと話を聞かなくてはと考えていた。
「だいたいジロー、なんでお前まであんなことを・・・」
そこまで言った段階で、シュタインがノヴァの発言を遮った。
「ジロー君に同感だね、できれば早く君の船を案内してもらいたいんだがね?」
「わかったよ!客のくせに厚かましいんだよ、お前ら」
宇宙船に近づくと、船のハッチが自動で開く。
「ただいま、イブ」
「マスター!ご無事ですか!?」
「今までどこでなにをしてたんですか!?」
「私との通信を遮断するなんてひどい!?」
「ああ!?お怪我はありませんか!?」
「私がお側にいなくて精神的に問題はありませんでしたか!?」
「歯は毎日磨いたんですか!?」
近くに設置されている複数のスピーカーのそれそわれからイブがまくし立てて来た。
お掃除ロボットのハチも主人の帰還を待っていたというように、壁にぶつかりながら近づいてくる。
ノヴァに続いて、ジローが、その次にシュタインが船内に入る。
一瞬の間をおいて、イブはセンサー類によりシュタインを認識したようで
「そちらの方は?」
と尋ねた。
「ああ、彼はシュタイン。命の恩人だ」
ノヴァも疲れがたまっていたため、簡単に説明した。
「そうでしたか。マスターが大変ご迷惑をおかけしました」
イブもそれを察したらしく、それ以上は質問をしてこなかった。
シュタインは船の中をゆっくり見回した。
「これが、太陽系の船か。なんというか・・・・レトロで趣があるね」
ノヴァはシュタインのその言葉に何となくあざけりのニュアンスを感じ取った。
「レトロ?こいつは太陽系で最新鋭の船を、この俺が直々にカスタマイズしてるんだ。宇宙一の最先端だよ」
馬鹿をいうなという風にシュタインの感想に返答した。
「いや、気に障ったなら謝るよ。今時こんなに無機物で構成する船があるとは思わなかったもので」
「全然悪くおもってないじゃねぇか!?」
「君もテクノロジーの神髄に触れたいならば、有機構造学(バイオメトリクスストラクチャー)について勉強することをお勧めするよ」
「いやだね!なんかヌメヌメしてて気持ち悪いもん」
「あの美しさがわからんとは!これだから、前時代的人間は」
「二人とも落ち着くデス!そんなことよりご飯が先デス!」
ジローの仲裁もむなしく、テクノロジーについて言い合いを続けながら、二人は食堂に向かっていった。
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