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『スペースロマンサー』第22話 物資ロケット

「そうしたらジロー。ロケットを出してくれ」
 物資を補給地点に飛ばすには、推進システムを保持したままで、ミサイルが着弾しても爆発しないよう弾頭部を取り除き、その上で食料などを搭載する必要がある。

「はいデス」 
 腕のガジェットを操作するジロー。
 空気を放出する音を発しながらジローの宇宙船の両側部が開き、ミサイルの格納部が左右に突き出る形で露出した。
 ジローは宇宙船に近づいていき、ミサイルを格納部から1本取り出す。  
 ミサイルは全長2メートル弱の長さで、太さは人間の胴体ほどであった。先の尖った典型的なミサイルの形状だった。
 常人であれば一人で持つのは難しいような大きさと重量だが、ジローは軽々と扱ってみせる。

「慎重に頼むぞ!」
 ノヴァはおっちょこちょいなジローが爆発物を扱うのに不安を覚えずにはいられなかった。
「大丈夫デスよ」
 そんな心配をよそに平気な様子でミサイルを取り扱うジロー。 
 戦争を主な活動とする文明で生きてきただけあって、その分野に関してはエキスパートということだろうかと考えるノヴァ。

「ミサイルは何発くらい打てる?」

「10発デス。この船は戦闘用というよりは、偵察でよく用いられる機体なんデス。」

「どおりでコンパクトな訳だ。それで発射口はどこ?」
 こんなコンパクトな機体にミサイルが10発も収納されていることも驚きだが、それを射出する部分がどこなのかは外側からはわからなかった。

「カタパルトが内蔵されているデス。記念にご覧に入れるデス!とくと見るデス!」

 ジローがデバイスを操作すると宇宙船の後方上部が開いて、発射装置が露出した。

 すると、ガシャンとミサイルが装填される音がし、次の瞬間一発のミサイルが唐突に発射された。

「へ?」とノヴァ

「やばっ」ジローの口から不穏な言葉が漏れる。

 ミサイルは、ほんの一瞬で最高速度に到達し、ものすごい勢いで遠くの方に消えていった。

「あと9発デェス」





 その後、ミサイルの改造をノヴァが行い、物資積載ミサイルへと変貌したものを補給予定ポイントに向けて発射することに成功した。

 これで今回の作戦の準備が完了した形になる。

 今回の作戦をまとめると次のとおりである。
目的は各目標地点に存在するものと予測される資源を回収するもの
 現在、宇宙船がある地点から半径1000kmの半円状に分布している。目標地点は全部で6つ。
 初めのポイントは原地点から北東に1000kmほど進んだ距離にあり、それから反時計回りに回るような形で採掘ポイントが点在している。
 各目的地の中間に位置する5地点に物資ミサイルが着弾しており、そこで物資を補充する。
 合計で48日間の旅程となる。


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