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【林業日記10】林業は「力」がすべてではないと感じた話。

林業はそれなりに力と体力がいる仕事です…と以前書いた林業日記に記したばかりですが、案外そうでもないのかもと発見を得たので、今回はそんな話をしていこうと思います。

参照:【林業日記7】20代女子の私は林業に向いているのか?林業に向いている人の資質って?

「ヤドリギ」という屋号で夫婦で林業を営んでいますが、まだまだ林業歴は数ヶ月のど素人の妻、セイカです。

先日、愛媛から講師として菊池俊一郎さんという方にお越しいただきました。

林家として働く傍ら、みかん農家という副業も営まれている方ですが、年齢を重ねるごとに、力だけで仕事をするのは限界があることを感じ、力学を応用した働き方を実践中なんだとか。

その一つとして教わったのが、動滑車を利用した林業でした。

中学生のころに習ったことのある「動滑車」の仕組みって覚えていますか?

私はすっかり忘れてしまっていましたが、この動滑車の話は林業の資格講習会でもよく出される話で、力学を知っているのと知っていないのでは、現場での作業性が変わってくるのです。

とはいえ、そこまで動滑車の仕組みを現場で活用することもなかったですが、菊池さんは今回の講習会でその仕組みをフルに活用されていました。

動滑車を語る前に知っておきたいのは「定滑車」。

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図で示すとこんな感じで、ロープの片側に荷をくくり、もう一方のロープを引っ張って荷を1mつり上げるためには、ロープを1m引っ張る必要があります。

定滑車は、ロープを引っ張る力の方向を変えることはできるが、力の大きさを変えることはできないので、荷をあげようと思うと、そこそこの力が必要となります。

そして、つづいて「動滑車」。

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さきほどの定滑車とはまったく形が異なります。

定滑車はロープを引っ張る力はおもりと同じ重さだったのに対し、こちらの動滑車はロープを引っ張る力はおもりの半分の重さで引けるのです。

ただし動滑車はその分ロープを引っ張る長さを、定滑車で持ち上げるときよりも必要とします。

この動滑車の原理を活用することで、木の伐倒を行うときに、滑車をたくさん利用することで、小さい力で重たい木を動かすことができるというわけです。

これは私たち夫婦もそうですが、自伐型林業と呼ばれる形の林業を営む人間にとって、どうしても3tくらいの重機では重量的にオーバーしてしまってできないことや、人力で力を必要とする仕事も多いので、この動滑車の仕組みを利用するとしないとでは、身体や機械への負担は大きく変わってきます。

そう考えると、林業ってただの肉体労働というイメージが私自身もありましたが、決してそうではなく、頭を使って作業することで、自分の身体への負担も軽減することができ、それによって長く仕事ができるかできないかも変わってくるんですよね。

このことを教えてくださった菊池さんは、今は特殊伐採と呼ばれる樹上に登って木の剪定や伐採をする仕事もされておられます。

樹上では地上にいるより、より安全に作業ができるよう、力学的理論もさらに把握して作業する必要性も出てくるし、樹上で使われる道具は林業現場で使われる道具とも異なるものが多いのですが、そういった別の世界と考えられてきたところからも、林業に転用できるスキルや道具を活用して、菊池さんは地上での林業も行われています。

この姿勢は本当に学ぶべきところが多いなと感じていて、他の業種から林業に取り入れられることって他にもひょっとしたらたくさんあるんだろうなとこの機会に感じたのでした。

ということで「林業は力仕事が多いから無理だ」と思っている方にとっても、この記事がなんらかの希望になれたら嬉しいです。

今回もお読みくださり、ありがとうございました!


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