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見てて超ひやひやする青春映画『エンパイア・レコード』を見たぞ!!

 最近、「あーあ、めちゃくちゃくだらない映画でも見て、人生の貴重な時間を無駄にしたいな~」と思ってたところなんです。ちょうどよくこんな映画を見ました。

 厳密には、割と面白かった。なので、評価は星3.7にしました。

老舗レコードショップのエンパイア・レコードに集う若者たちの青春の一日の物語。愛するエンパイア・レコードが、大手レコード店に吸収合併されるのを知ったルーカスは、買収を食い止めるため、入金するはずの9000ドルを持ってカジノへ。しかし、結果はすってんてん。翌朝、それを知った店長のジョーは、カンカンになるがすでに後の祭り。A.J.は、コリーに愛の告白をするつもりだったが、あろうことか彼女は、その日キャンペーンにやってくる元アイドルのレックスに処女を捧げると、ジーナに話していた...。

Googleより

 『エンパイア・レコード』は、1995年公開(日本では1996年)のアラン・モイル監督作品。この監督、まったく知らなかったんだけれど、彼のフィルモグラフィでは他にも、"Pump Up the Volume"(1990)という映画が有名らしい。これも青春映画らしい。見たことないけど。ちなみに、日本語タイトルは『今夜はトーク・ハード』という、もはや鼻水が「プゴォ!!」と放たれて(鼻垂れて)しまうほどのダッサダサなものがつけられてしまっている、不遇な作品である。いつか見よう。

 出演者のほとんどが当時10代か20代前半。まぁ青春映画だからね。有名どころでいうと、リヴ・タイラーが出ている。『アルマゲドン』の主演の人ね。エアロスミスのボーカルの、スティーブン・タイラーの娘ね。

 当時18歳のリヴ・タイラー、すっごく可愛い。まだまだ若手女優なのにもかかわらず、絶叫するシーンがあったり、発狂するシーンがあったりと、なかなかの迫真の演技も目立っていて、それが別にイタい感じもないので、やっぱり大物女優といった感じです。


 さぁ、突然ですが、「90年代の青春映画」と聞いて、まず行わなければならない作業とはなんでしょうか?

 料理の前には手を洗う、横断歩道を渡る前には左右確認、温泉に入る前にはかけ湯をする。それぐらい重要なことです。

 そう。それは『ブレックファスト・クラブ』の焼き増し作品であるか確認をするということです


 この『ブレックファスト・クラブ』、1985年の作品ですが、今でもカルト的な人気を誇る青春映画です。スクールカーストの違ういろいろなタイプの高校生(スポーツマン、地味系、キラキラJKなど)が一つの部屋で居残りをさせられて、そこで「自分とは何か?」という課題をみんなで解かされるという内容の、ほとんど会話劇の映画なわけです。

 この映画の影響力はすごくて、その後の80年代終わりごろとか90年代の青春映画でこれに影響受けてないものはないと言ってもいいんじゃないか??というほど。「若者VS大人」の構図を示したり、音楽にノッて踊りまくったり、アメリカ映特有の変なノリになったり、などなど、「あ!!これ『ブレックファスト・クラブ』で見たやつだ!!」と思わず叫んでしまうほど、焼き増しのような描写が量産されているわけです。

 あからさまなパロディとかもたくさんあって、僕がはじめて見たのはニコロデオンの『ヴィクトリアス』ってドラマでしたね。最初見たときに、明らかに何かを意識したようなセリフ回しに強烈な違和感を覚えたんですけど、まさか元ネタがあったなんて…という感じで本家の『ブレックファスト・クラブ』を鑑賞、という流れです。


 ではでは、その尺度でこの映画を分析してみると…
 間違いなくやってますわ。ええ。完全に影響受けてますわ。ええ

 まぁなんの影響も受けないなんて絶対に無理なんですけどね。この90年代当時でいうとね。とは言っても影響を受けまくっている。


 まず、一つの部屋の中でほとんどすべてのことが起きる、ということ。『ブレックファスト・クラブ』では高校の図書館がほとんどで、あとはまぁ廊下とか。そんで対して、『エンパイア・レコード』では名前通り、レコード屋。外にはほとんど出ない。

 あと、主要登場人物も『ブレックファスト・クラブ』同様に男女入り混じっている感じ。『ブレックファスト・クラブ』は男3女2だったけど、『エンパイア・レコード』は男女ともに3だったな。

 それプラス、会話劇がほとんどが共通している。それ以外の部分では、『ブレックファスト・クラブ』では教頭先生から逃げまくるシーンがあって、『エンパイア・レコード』では万引き犯の少年を捕まえるために走るシーンがある、そのぐらいか??他にもありそうだけどな。

 そんな感じで、影響を受けまくっているんです。


 しかーし!!僕が思う、この映画が『ブレックファスト・クラブ』に勝っていると思う部分は、そのサウンドトラックである。

 『エンパイア・レコード』はその名の通り、レコード屋での話だからめちゃくちゃいろんな音楽が流れるんだけども、その選曲がなかなかいい。90年代を象徴するような、あのメロコアな感じ…

 90年代の中ごろ、まぁニルヴァーナとカート・コバーンの没後も勢いは失ったけれど生き残っていたグランジと、グリーン・デイとBad Religionみたいな、ポップパンクとかメロコアとかそういう音楽との変わり目の時期だからか、ほんとにいろんな当時の流行の曲とかが流れてきて、それはすごくよかったな…


 あと、自分の癖なんだけれど、やっぱり60年代ロックが好きだから、そのころの曲が流れないかな~やっぱ90年代だから無理かな~とか思っていると、"Money (That's What I Want)"のフライング・リザーズのカバー(原曲は1959年で、ビートルズもカバーしてる)が流れたり、登場人物のレックスが最後に吐き捨てるセリフが"Why don't you all fade away?"だったのも間違いなく"あの曲"のオマージュだし…など、いろいろと60’sロックにもリスペクトあって、その辺は個人的に褒めたいポイント(笑)


 あとは、登場人物たちのキャラクター描写かな~~

 なんか某有名ファッション雑誌の「"某"ーグ」誌は、この映画の楽しいポイントを、「6人の主な登場人物のキャラクターがそれぞれ違って魅力的なところ」などと言ってるけど、それほんとに言ってるとしたら、この映画のメッセージなんて気にもしない、雰囲気だけで映画見てます!って表明しているようなものだけど、大丈夫かい?

 「そりゃあ映画なんだから、6人の個性が違うなんてあたりまえだろ!!」みたいな野暮なことが言いたいわけではなくて、彼らのいろんなおかしな行動はすべて、青春映画とは思えないぐらい暗い理由なんだけどな。

 例えば、デブラっていう女の子はレコード店に出勤するなり、休憩室でバリカンで頭を丸坊主にしてしまうんだけど、某ファッション雑誌のライターさんは「個性の強いメンツ」って言ってるけど、この行動は、自分のことが嫌いで嫌いで、自分というものをなくすためにしているものだから。いわゆる「アイデンティティ・クライシス」だから。これよりも前にデブラはわざと切れにくい刃でリストカットしたりしてるんだけど、これって彼女のメンタルがかなり重症であることを示すものだと思うんだよ。それを「個性の強い」って…ほんとさ…もう俺を雇っちゃえよ。この人よりもいい記事書くぞ?

 あと、リヴ・タイラー演じるコリーは、優等生でモテモテで、一見悩みなんてないように見えるけど、父親からの「いい大学に行けよハラスメント」を受けまくって、ノイローゼになって、スマートドラッグに手を出してしまう。これはアメリカの若者では社会問題になるほどのものなんだけど、薬物の力を使って集中力を付けるというもの。当然依存性があるから、勉強のために使うつもりが、それがなくては生活できないほどひどい目にあうこともある。それぐらい恐ろしい薬物。それに依存しているインテリ学生をこの時期の青春映画で描くって、相当早いと思うよ。それを「個性の強い」って…ほんとさ…俺を雇え(中略)

 スマートドラッグについては、このNetflixのドラマ、『テイク・ユア・ピル』がおすすめです。めちゃくちゃいいドキュメンタリー。

 あと、コリー以外にもマークという少年も、違法薬物がてんこ盛りに入っているチョコブラウニーを食べてトリップしているシーンがあるんだけど、彼のテンションってこのシーンの前からずーっと高いんだよね。最初は元気な奴やな~と思って見てたんだけど、その瞬間、「あ、あれってトリップしてただけなんだ…」と気づき、鳥肌が立つという。しかももっと怖いのは、マークの薬物依存にはまったくもって触れられないんだよね。


 そんな感じで、ツッコミどころは多いながらも、まぁまぁ楽しめた映画でした~~90年代の青春映画ってほんとに当たりはずれが激しいから、久しぶりに良質なものに出会えてうれしかったです~~

 また明日!

小金持ちの皆さん!恵んで恵んで!