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第24話:黙っていれば、ダマせる?

 売り言葉に買い言葉、殺し文句に愛の告白。古今東西、これでもかという言語や表現にあふれ、それでもって人間は生活を豊かにし、衝突を重ね和平を結んできた。一度途絶えた文字でさえ研究の結果、何を表現しているのかが解明されて情報は現代に伝わっている。形を変え、意味を増やし、「ことば」が動きを止めることはない。

 けれど、わたしたちがことばに動きを止められることはある。それが自分にとって魅力的な相手から発せられたネガティブなものであれば、効果は絶大だ。

動けないなんてものじゃない。その場に縫い付けられたようにぴったりくっついて離れられなくなる。動こうとすると引きつったような感覚に襲われる。ズガァンと頭の中で音が鳴って、グラグラ揺れて、呼吸は浅くなり、「どうしてこんなことになっちゃったんだろう」と3分前までの自分を後悔するのだ。

 例えば、ある集団の中で仕事をすることになったとする。そこで信頼関係を結ぶのに、わたしは「話す」ことをお勧めする。とにかく話しかける。最初の内は馬鹿の一つ覚えみたいに、名前を呼ぶ、挨拶をする。何かにつけて、「ありがとう」という。もちろん、名前付きで。具体的にお礼を言う。ついでにホメる。そして質問する。「どうしたら、そうできるようになりますか?」。

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