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ペット用品店で見た闇


「笑える話しか書かない」という私なりのルールが、さっそく破られようとしている。今回の話は、かなり不快に思う人も多いと思う。


 私がペット用品店で働いていた時の話だ。

 
 時々、ペット殺処分反対のビラ配りの、ボランティアが来ていた。大学生と思われる青年二人組で、来店客にせっせとビラを配っていた。

 私は「ペットの世話をする為の用品を買いに来た人達」にそれを配るより、保健所とかの前で配った方が効果的なのではと思い、それを告げたところ、彼らは「色んな人に知ってもらいたいんで…」と言ってその場でビラを配り続けた。まあ確かにそうだよなあ、と思いつつも、私は少し迷惑していた。

 というのも、彼らは雑種犬をとても可愛がり、血統書付きの犬と、その飼い主に悪態をつくのだ。よくある「ペットショップ廃止派」の思想が、強くなり過ぎたのだろう。雑種犬をつれたお客様にはニコニコと近付き犬を撫で、血統書つきであろう犬の飼い主には「ペットショップがいかに悪か」を説いていた。そのお客様からすれば、大事に育ててきた犬と、その犬がくれた思い出や培ってきた絆を全否定されたも同然である。私はその度に止めに入らなければいけなかったので、かなり精神を削られた。
 
 犬は、雑種だろうが血統書つきだろうが、可愛い家族なのに。ペットショップ廃止を願うのは好きにすれば良いと思うが、人の犬や想いを貶すのはどうかと思った。

 ある日、強烈なお客様がきた。そのお客様である主婦は「飼い犬が骨折したので、何か良くなる薬はないですか」と聞いてきたので驚いた。そんな簡単に骨折が治る薬があればノーベル賞もんである。私は「それは無いので、とりあえずすぐに医者に連れて行ってあげて下さい」と言うと、主婦は「犬でも骨折したら医者にいくの!?」と驚いていた。私が「頼むからすぐ連れて行ってあげてくれ」と言うと、主婦は納得してくれたようで、帰っていった。

 他にも「犬が毎回違った時間に糞をするので、糞を止める方法はないか」や、「犬がうるさいので、黙らせる麻酔は売っていないか」等、なかなかのサイコパスが毎日のようにやってきた。

 他には「開店から閉店まで居座るボロボロのシーズーを連れたおじさん」なんて人も居た。そのおじさんは、シーズーをつれて、店内をゆっくりゆっくり歩いていて、疲れたらベンチに座るという行為を365日開店から閉店まで続けていた。
 誰かに構って欲しいらしく、シーズーを撫でてくれる人が現れるのを、ずっと待っているのだ。しかし一日中居るおじさんを常連客は不気味に思っており、あまり人が近寄る事は無かった。

 一度おじさんの母が来店した事があり「あの子、一日中ここに居るでしょう。働けっていうとキレるのよ」と暴露してくれた。

 また、ペットとは関係ないが、とんでもない人が一度現れた。その人は若い女性で、手に缶ジュースを持っていた。女性は他のお客様の所へ行き、持っていたジュースをバシャバシャと他のお客様にかけ始めた。お客様は「ギャア」と叫び、私はすぐに近くの警備員さんを呼んで、その「妖怪ジュースかけ」を保護して貰った。妖怪は何かをギャーギャーと叫びながら裏へ連れていかれ、そのまま出禁となった。ジュースをかけた理由は解っていない。

 そんなこんなで、精神がまいってしまい、一度泣いてしまった事があった。私はバックヤードにあったペット用トイレシーツで涙を拭き、その吸水性に驚いた。涙があっという間に乾くそのシーツに「さすがよく考えられて作られているなあ、研究に研究を重ねたんだろうなあ」と感心して泣き止んだ。

 ペット業界の闇は、語り尽くせない程にあると思う。ペットショップでなく、ペット用品店でもこの有様だ。

 私はもうこの仕事は辞めたし、戻りたいとも思わない。

 動物関連の仕事に嫌気がさした私は、チャットレディを始める事になる。ネットで男性とお喋りをしたり、性的なサービスをするお仕事だ。そこで私は人間の性癖の深淵を目の当たりにする事になる。

 世の中には、色んな人間が居て、まともな人なんて1人も居ない。私は私が嘔吐する姿を見てモノをしごくお客様を見て、自分もまた異常なのだと思うようにした。
 

スリッパではしゃぐ我が家の猫(一朗)でお茶を濁す



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