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ギャグや物語の展開にも批評精神やアイロニーが満載。逸脱しても物語を成立させる大野拓朗の演技が秀逸…★劇評★【ミュージカル=プロデューサーズ(大野拓朗出演回)(2020)】

 ショウビジネスの世界は厳しい。日本ではまだまだそんなことはないが、米国では出資者を募るところからスタートし、キャストやスタッフを決めて脚本や譜面が出来上がってもゴールではない。稽古を続けながらも出資者の厳しいチェックが入るし、詳細な情報も求められる。時には脚本に手を入れたり、出演者を差し替えたりすることも。主演俳優が交替することだって珍しいことではない。プレビュー公演は日本のように本公演の直前に数日間行うだけでなく、1カ月以上にわたることもしばしば。ここで次に進めるかが決まる場合もある。運良く本公演を迎えてやってくるのは初日。ニューヨーク・タイムズなど各メディアの担当記者はこの夜に観て、翌日に劇評を掲載するが、これが悪評だと、数日間で打ち切りになることもある。数カ月(場合によっては数年)かけた努力が何の結果も残さず、一瞬にして消え去る。それだけ厳しい世界を生き抜いていくのだから、そのすべてを把握するプロデューサーは海千山千の強者が揃うのも無理はない。中にはとんでもないのもいて、「ひとヤマ当てる」ギャンブラー感覚の者も。しかしそれも一種の才覚に違いなく、決してそういう人物を悪く言う者はショウビジネスの世界にはいない。1968年のメル・ブルックス監督の映画『プロデューサーズ』をもとにブルックス監督自身が製作したミュージカル「プロデューサーズ」に登場するプロデューサーたちも、そんなうさんくささ満載の人物たち。何しろ「失敗した舞台の方が成功するより儲かる」ことに気付いてしまった連中たちが挑む「史上最低のミュージカルづくり」がテーマなのだ。ブロードウェイキャストによる来日公演や、日本語版の2度の公演を経て今年、キャストを一新して上演されている新生ミュージカル「プロデューサーズ」は、井上芳雄、吉沢亮・大野拓朗・木下晴香ら主要キャストがいずれもパブリックイメージを破る大胆な役柄に挑戦し、ひとつひとつのギャグや物語の展開にも批評精神やアイロニーが満載。エンターテインメントの闇と愉悦にどっぷりと浸かった幸せな3時間があっという間に過ぎていく上質な作品に仕上がっている。特にこれまでミュージカルで正統派の才能を発揮してきた大野がレオ役として脱線しても逸脱しても微妙なバランスをとって物語を成立させる秀逸な演技力を見せつけており、新たな魅力を溢れ出させている。(写真はミュージカル「プロデューサーズ」とは関係ありません。イメージです)
 ミュージカル「プロデューサーズ」は11月9日~12月6日に東京・渋谷の東急シアターオーブで上演される。

 なお、本作は会計士レオ役が吉沢亮と大野拓朗のダブルキャストで、吉沢亮バージョンは掲載済みです。
★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」ミュージカル「プロデューサーズ(吉沢亮出演回)」劇評(下は「阪 清和 note」ミュージカル「プロデューサーズ(吉沢亮出演回)」劇評)=2020.11.24投稿

阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます。舞台写真は「SEVEN HEARTS」でのみ公開しています。
★「SEVEN HEARTS」のミュージカル「プロデューサーズ(大野拓朗出演回)」劇評ページ

★「SEVEN HEARTS」のミュージカル「プロデューサーズ(吉沢亮出演回)」劇評ページ

★劇評の続きを含む劇評の全体像はこの「note」で有料(300円)公開しています。作品の魅力や前提となる設定の説明。井上芳雄さん、大野拓朗さん(吉沢亮さんとWキャスト)、木下晴香さん、吉野圭吾さん、木村達成さん、春風ひとみさん、佐藤二朗さんらの演技に対する批評、福田雄一さんの演出に対する評価などが満載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★ミュージカル「プロデューサーズ」公式サイト

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