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劇団四季のクリエイティビティ―あふれる挑戦。壮大なメッセージ性と究極のエンターテインメント性を獲得した仕上がり…★劇評★【ミュージカル=バケモノの子(2022)】

 「クールジャパン」が本当に世界で受けているのかは近年かなりあやしくなってきたが、世界で最も成熟したアニメーション市場を持つのが日本であることは、漫画やアニメ、エンターテインメントの世界を長らく取材して来た私には確信がある。いちいち例は挙げないが、多くの作品には哲学的なテーマ性と深遠な奥行きがあり、単なる子どもだましや、見ていて楽しいだけの作品は少数派に追いやられている。もっと言えば、消費行動が成熟している以上に、創り手と受け取り手の関係性が成熟の度合いを強めているのだ。作者の放つものを受け取り手がきちんと受け取り、そのテーマをさらに掘り下げていく。どこまでも続く旅に共に出てくれるそんな頼もしい関係が両者には成立していると言っていい。クリエイターたちの中でその度合いが最も強いレベルにいる一人が、細田守監督。『時をかける少女』や『サマーウォーズ』にはじまり、『おおかみこどもの雨と雪」』『未来のミライ』、そして最新作の『竜とそばかすの姫』に至るまで、その関係性はゆるぎないものに成長している。そんな細田監督が2015年に発表した作品『バケモノの子』はその最たるもの。クリエイターと受け取り手の堅い信頼でつながったこの作品を演劇界で長らく観客からの信頼を勝ち得てきた劇団四季がミュージカル化するというニュースは大きな話題と期待を呼んだ。企画立案から新型コロナウイルスによる世界の混乱の時期を挟んで4年経った2022年、ついにミュージカル「バケモノの子」は世界初演の日を迎えたのだ。原作を何倍にも活かす劇団四季のクリエイティビティ―あふれる挑戦によって、作品の持つ社会性は壮大なメッセージ性へとつながり、何よりも究極のエンターテインメント性を獲得した作品になっていた。演出は劇作家・演出家の青木豪。(画像はミュージカル「バケモノの子」とは関係ありません。単なるイメージです)
 ミュージカル「バケモノの子」は東京・竹芝(最寄り駅はゆりかもめ「竹芝」かJR「浜松町」)のJR東日本四季劇場〔秋〕でロングラン上演中(2022年9月30日公演分までチケット発売中)。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも序文は無料で読めます。舞台写真はブログでのみ公開しております。

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はこのクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。劇団四季の俳優陣の演技に対する批評、青木豪さんら制作チームの演出や舞台表現に対する評価などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★ミュージカル「バケモノの子」公演情報

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