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嘘が渦巻く底なし沼に引きずり込み合う複雑な人間関係が極上の舞台に…★劇評★【舞台=カメレオンズ・リップ(2021)】

 嘘は人間の関係に大きな波紋を広げていくものだけど、もし登場人物のほとんどが嘘をついているかもしれないとしたら? しかも、噓をついていない人がいるかもしれなくて、だれが本当のことを言っているのかも混沌としてきたら? 波紋と波紋がぶつかってまたまた大きな波紋を広げていくはずで、もう収拾がつかなくなってくる。観客はだれか感情移入できる登場人物の言うことだけを信じていればいいのかというと、そんなに単純なものでもなくて、そこから先は底なし沼だ。一つの物語の中にこんなに嘘が盛り込まれているのも珍しいが、その嘘の中にどこか真実のようなものも見えてくるという高レベルな作劇の力もあって、もうこの物語のうねりに身を任すしかない。そうしたらなんと心地の良いこと。そんな舞台「カメレオンズ・リップ」は2004年に堤真一、深津絵里の共演作として初演されたが、今回、ケラリーノ・サンドロヴィッチの選りすぐりの名作を才気溢れる演出家たちが新たに創り上げるシリーズ「KERA CROSS」の第3弾として新キャストによる再演が実現したのだ。これまで「木の上の軍隊」「スリル・ミー」「母と暮せば」など少人数芝居の主演舞台で実力を蓄積してきた松下洸平が一昨年から昨年にかけてNHKの連続テレビ小説「スカーレット」でブレイクを果たした勢いに乗って堂々の主演を務める舞台でもあり、キャストそれぞれの際立った個性を着実に引き出した河原雅彦の演出とも相まって、嘘が渦巻く底なし沼に引きずり込み合う複雑な人間関係が極上の舞台に仕上がっていた。(画像は舞台「カメレオンズ・リップ」とは関係ありません。イメージです)
 舞台「カメレオンズ・リップ」は、4月14~26日に東京・日比谷のシアタークリエで、5月6日に名古屋市の日本特殊陶業市民会館 ビレッジホールで、5月15日に新潟県長岡市の長岡市立劇場で上演される。5月2~4日に大阪市のサンケイホールブリーゼで上演される予定だった大阪公演は新型コロナウイルスの感染者急増による4月25日からの3度目の緊急事態宣言発出のため、すべて中止となった。4月25~26日の東京公演は観客の混乱を回避するため上演。それに先立つ4月2~4日の東京・北千住のシアター1010での北千住公演、4月11日の福島県南相馬市の南相馬市民文化会館ゆめはっとで上演された福島・南相馬公演はすべて終了しています。

阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも読めます。舞台写真はブログでのみ公開しています。
★「SEVEN HEARTS」の舞台「カメレオンズ・リップ」(2021)」劇評ページ

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はこのサイト「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。松下洸平さん、生駒里奈さん、ファーストサマーウイカさん、岡本健一さん、シルビア・グラブさんら俳優陣の演技や、河原雅彦さんの演出に対する評価、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの戯曲に対する評価などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「カメレオンズ・リップ」公演情報

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