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複層的な妄想や華やかな記憶までもが暗く沈んだ監獄の中に同時に存在する不思議な世界。演劇表現の威力まざまざと…★劇評★【ミュージカル=蜘蛛女のキス(村井良大出演回)(2021)】

 演劇というものは、大スベクタクルを描き出すこともできれば、果てしなく狭く濃密な空間でささやかれる会話を世界に向けて広げていくこともできる。その点、アルゼンチン生まれのブラジルの作家、マヌエル・プイグ(Manuel Puig)が、同房になった監獄の2人の人間関係の変遷をほとんどすべてが会話と言っていいほどの構成で描いた小説を舞台化したミュージカル「蜘蛛女のキス」は、その演劇表現の威力をまざまざと見せることのできる作品。複層的な妄想や華やかな思い出、記憶までもが暗く沈んだ監獄の中に同時に存在する不思議な世界が観客の目の前で展開。石丸幹二と安蘭けいというミュージカル界の宝石のようなキャスティングの中で、Wキャストの村井良大と相葉裕樹の細やかな演技が美しく映え、魔法のような輝きに満ちている。演出は劇団チョコレートケーキ主宰の日澤雄介。(画像はミュージカル「蜘蛛女のキス」とは関係ありません。イメージです)

 なお、劇中に登場する若き革命戦士バレンティンの表記は、資料によっては「ヴァレンティン」とされているものもありますが、当ブログでは今回のミュージカルのパンフレットなどに従い、「バレンティン」と表記します。ご了承ください。

 ミュージカル「蜘蛛女のキス」は11月26日~12月12日に東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで、12月17~19日に大阪市の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演される。

★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも序文は無料で読めます。舞台写真はブログでのみ公開しております。

★ブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はこのクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。石丸幹二さん、安蘭けいさん、村井良大さん、香寿たつきさん、小南満佑子さん、鶴見辰吾さんら俳優陣の演技に対する批評、日澤雄介さんの演出や舞台表現に対する批評などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

 なお、重要な役であるバレンティンがWキャストであるため、2通りの組み合わせが組まれていますが、取材機会の関係で劇評を掲載するのは、「蜘蛛女のキス(村井良大出演回)」に限らせていただきます。ご了承ください。

 この組み合わせではカバーできない相葉裕樹さんのファンの皆さま方には大変心苦しく感じております。人気公演のため取材機会も限られます。なにとぞご容赦ください。

 ただし、ブログのみに掲載する舞台写真に関しては、村井さん出演回だけに限定せず、相葉さんの出演シーンの写真も掲載しています。文章では相葉さんに言及できませんが、こちらの写真でお楽しみください。

★ミュージカル「蜘蛛女のキス」公演情報

★ミュージカル「蜘蛛女のキス」公演キャストスケジュール=クリックして出てきた画面を少し下にスクロールすると、相葉さんと村井さんの出演回が分かります。検索もできます。

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