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悲劇が生んだ関係性の崩壊と、長い時間を掛けて形を変えていく罪と怒りのメタモルフォーゼ(変容)を鮮明に…★劇評★【舞台=逢いにいくの、雨だけど(2018)】

 「許す」と「赦す」が、同じ意味合いの言葉なのにずいぶんとニュアンスが違うように感じることでも分かるように、「ゆるす」という行為にはずいぶんと振れ幅がある。すぐにゆるすのと、長い時間をかけて怒りを解くのとも大きな違いがある。法律的にとか、個々の人心としてとか、世間が何となくとか、シチュエーションによっても違うだろう。なかなか一筋縄ではいかないテーマを物語上に立ち上げ、観客までもその選択の当事者にしてきた演劇ユニット「iaku」が、この「ゆるす」というテーマに真っ正面から向き合っている。舞台「逢いにいくの、雨だけど」は、一つの悲劇が生んだ関係性の崩壊と、長い時間を掛けて形を変えていく罪と怒りのメタモルフォーゼ(変容)を中心に据え、濃密な会話を幾重にも積み上げていくiakuの根本の部分にますます磨きをかけている。「粛々と運針」で見せた複数の次元が絡み合っていくような形式が本作では現在と過去という別々の時空で絡み合い、まるで、別々の方向から悲劇の真相へと近づいていくようなサスペンスフルな感触も。観客を引き込んでいく物語性も上質なかたちでスケールアップされており、現時点での最高傑作と呼んでも決して言い過ぎではない仕上がりになっている。作・演出はiakuの横山拓也。
 舞台「逢いにいくの、雨だけど」は11月29日~12月9日に東京・三鷹の三鷹市芸術文化センター星のホールで、12月21~22日に大阪府八尾市の八尾プリズムホールで上演される。

★舞台「逢いにいくの、雨だけど」公演情報
iaku公式サイト

三鷹市芸術文化センター公式サイト

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