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「黒」という色が持つなんとも豊かな色合い…★劇評★【舞台】 黒蜥蜴(2018)

 江戸川乱歩の描くヒールは何と魅力的なのだろう。その欲望にはとどまるところがなく、ほとんど人間として許されない範疇にまで振り切っている人間だというのに、人々の目を、心を惹きつけて離さない。ましてやその小説が三島由紀夫によって戯曲としてさらに耽美的に磨き上げられているのだから、観客たちはたまったものではない。しかも明智小五郎にはミュージカル界の貴公子、井上芳雄を、ヒールの優秀な手下、雨宮潤一には演劇の申し子、成河を、誘拐される深窓の令嬢には新進気鋭の相楽樹を、その父親には演劇界のいぶし銀、たかお鷹を、なぞの家政婦には宝塚歌劇退団後も活躍を続ける朝海ひかるを配し、その中心にはヒールたる黒蜥蜴こと緑川夫人を演じる中谷美紀が妖艶な魅力で君臨する。日本とは確かなきずなで結ばれた英国人演出家、デヴィッド・ルヴォーによって紡ぎ合わされた現代のゴシックサスペンスは「黒」という色がなんとも豊かな色合いを持っていることを私たちに指し示してくれる。
 舞台「黒蜥蜴」は2月1~5日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで上演される。これに先立って1月9~28日に東京・日比谷の日生劇場で上演された東京公演はすべて終了しています。

★舞台「黒蜥蜴」特設サイト

http://www.umegei.com/kurotokage/

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