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保護者ができることってなんだろう?

きっかけ

 先日、育成年代の子どもたちのサッカー環境や、心と身体の安全について親子で学びあうためのコミュニティ『フットボールファミリー・ユナイテッド』を立ち上げました(非営利活動です)。

 僕はこれまで、スポーツを楽しむ子どもに対して保護者の出来ることなんて、心と身体の安全を確保して見守ることくらいだと思っていました。

 親が子どものスポーツに熱を上げるなんてカッコ悪い、とも思っていた。

 でも残念ながら、僕は保護者としてその最低限のことを息子にしてあげられなかった。

 それは僕が無知だったからです。

くも膜のう胞

 硬膜下血腫という言葉は聞いたことがあったけど、くも膜のう胞については何も知りませんでした。

 2020年3月、息子がヘディングが原因とされる硬膜下血腫との診断を受け治療が始まりました。当然、走ることも練習に参加することも禁止です。

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 7ヶ月治療を続け、10月に4度目のMRI検査を受た結果、大人の手のひらほど大きかった血腫は完全に消えていました。

 しかし、担当医からは先天性のくも膜のう胞がある以上、積極的にボールを頭にぶつけるサッカーに復帰してよいとは言えないし、2度目の出血は命に関わると言われました。

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 診察室を出るとき、すでに僕らの目からは涙が溢れていました。待合室で息子の肩を抱いて泣きました。その日はふたりで丸一日泣きました。

 なぜ、もっと早く気がついてあげられなかったのか。悔やみました。本当に悔しい。

 それが、このコミュニティを立ち上げた理由のひとつです。

 今現在、国内のサッカー人口のうち小学生世代(JFA 4種)は約27万人。くも膜のう胞を持つ患児の確率は人口全体の2〜3%と言われているので、およそ7000人にその可能性があります。

 知識とルールさえあれば避けられるリスクです。子どもを守れます。

 くも膜のう胞だけではありません。成長途中の子どもの頭部への強い衝撃は、今だけではなく将来に渡って様々な悪影響が懸念されています。

子どもは大人のミニチュアではない
重さ500gが時速128kmで衝突

 その他にも、成長期の子どもが無理をしすぎて競技を続けられなくなるオーバーユースも問題視されています。小学生ですら朝練と午後練があって週末は3時間TRMぶっ続けなど、保護者の心配は尽きません。


衝撃の光景

 もうひとつの理由は、子どもの心の傷についてです。

 息子がサッカーを始めてから、低学年のうちにサッカーから離れていくお友達が少なくないことが気になっていました(競技との個人的な相性は別として)。

 大人の暴言に萎縮する子ども、大人のためにプレイする子ども、大人のせいでサッカーが嫌いになる子どもをこれ以上見たくありませんでした。

 いまも週末の試合会場に足を運ぶと、胸が痛くなるようなシーンを目にしたり、驚くような罵声を耳にすることがあります。

 いまから1年ほど前のこと。LINEの保護者連絡グループで息子が一番仲が良かったお友達(3年生)が退部したという知らせを受けました。それを聞いた息子が突然泣き出しました。

 話を聞くと、チーム内ではスキルの高い子どもから、そうでない子どもへのいじめや嫌がらせが横行していることを知りました。

 辞めてしまったお友達のママさん曰く、彼は5歳から同じチームにいるが、学齢が上がるにつれてチームは試合に勝つことを優先し、その影響で子どもたちの間でレギュラーと補欠という差別意識が高まり、試合の負けを人のせいしたり、自分だけでなく仲間の悪口や陰口が飛び交うことが嫌になり退部されたとのこと。

 これは大人が露骨に子どもを選別するからではないでしょうか。大人が勝つことを優先しすぎるからではないでしょうか。

 補欠制度だけでなく、子どもたちの長い練習時間や休みの少なさは日本特有と聞きます。

 (日本のサッカーが世界の頂点なら話は別ですが、様々なジャーナリストや研究者の報告を見る限り、サッカー強豪国の育成はかなり様子が異なるようです)

出会い

 ある日、いじめの矛先が自分の息子に向けられていることを知ったとき、チームのパパママさんたちは親身になって僕らの話を聞いてくれました。

 愛読していた本の著者である島沢さんは、息子の怪我について記事にしてくださり、サッカーをプレイする子どもたちの頭部への衝撃リスクについて警鐘を鳴らしてくれました。

 そして、サッカーに限らず、育成環境で起きている様々な痛ましい出来事に目がいくようになりました。

 noteで自分が感じたことを公開したら、心強い同志に恵まれました。

 その他にも、息子を心配してくれた競技団体の方、医療に関わる保護者の方からもご連絡をいただき、様々な立場の方が僕らのことを本気でサポートしてくださいました。

 やむを得ないことですが、息子はこの先、大好きだったサッカーを続けることはできません。

 それでも、息子が夢中になったサッカーと、それを楽しむ子どもたちに恩返しがしたいと思うようになりました。

 僕ひとりに出来ることなど微々たるものだけど、情報を共有し、同じような思いを持つ仲間と学ぶことは出来る。

アンケートにご協力ください

 このコミュニティを通じて、子どもたち、ママさんパパさんの声を出来るだけたくさん集めたいと思っています。すでにサッカーから去ってしまった人の声も大切です。

 たくさんの小さな声を、より力のある人に託したい。個人名を出して発言する機会を持たない人、組織との対話の機会が得られない人の助けになりたい。

 僕も皆さんと同じように、毎日仕事をしながら家事育児に追われるごく普通の保護者です。でも、インターネットと簡単なツールを使って私たちにも出来ることはある。

 お子さんと一緒にアンケートに一答えていただく中で、お子さんの身体の異常を発見する機会になるかもしれません。

 もし、この活動に共感してもらえる方がいらしたら、フットボールファミリー・ユナイテッドのアンケートにご協力ください。そして、今サッカーをプレイする子どもたち、未来のプレイヤーのためにも、サッカーを長く、安全に楽しめるように、みなさんの声を聞かせてください。

キックオフミーティング

 このコミュニティをスタートするにあたり、スポーツジャーナリストであり子育ての先輩でもある島沢優子さんと、ジュニアサッカーを応援するウェブサイト、サカイクで島沢さんの連載「蹴球子育てのツボ」の編集をご担当されている佐藤茜さんに、サッカーと子育てにまつわる貴重なお話や体験談を聞かせてもらえることになりました。

 現役で子育てをしているママさん、パパさん、土曜の夜、夕食のあともしお時間あればぜひご参加ください。お酒でも飲みながらZoomをつけっぱなしでラジオのように聴いてもらうだけでも楽しめると思います。

 よろしくお願いします!

フットボールファミリー・ユナイテッド
七澤崇聖



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