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Tさん一家と行く水族館フィールドワーク(2024/1/27/雨のち曇り)

4歳半の子どもとフィールドワークをしたときには、家族も彼のペースに合わせて会話していたこともあり、発話内容をメモでおおよそ記録することができた。しかし、この日は序盤でそれがほぼ不可能であることに気づいた。1歳半の子どもはまだ言葉を覚え始めたばかりで、親は大人のペースで会話をする。そのため、自ずと記録の形式自体も変化することになった。


■この日の協力者について

▼フィールドワークに協力してくれた同僚T家
会社の同僚Tさん(31歳)、その妻Hさん(28歳)、娘Mちゃん(1歳6か月)

▼私
Y(32歳)

※以下、話者はアルファベットで記載
※発話文中、言葉をはっきりと聞き取れなかった箇所は「~」と記載する
※言い回しで聞き取れなかった箇所は、推測されるおおよその意図から外れない範囲で補足している
※特に印象に残った発話や行動は太字で記載している

■フィールドワーク

10:05駐車場にて合流

ぱらつく雨の下、Tさんと挨拶を交わし、車から降りようとするHさんとMちゃんにも挨拶をする。二人にお会いするのはこの日が初めてで、Hさんと互いに「いつもお世話になってます」と言いながら水族館へ向けて歩き出すMちゃんはTさんのウエストポーチに腰掛けるようにして前向きに抱っこされている。

入場口へと歩きながらTさんHさんに、ふつう通りに水族館を楽しんでもらいたいこと、その間私は写真を撮ったりメモさせてもらったりすることを伝える。撮影の際は顔を写さないようにすることを伝えたところ「写っても大丈夫ですよ~」とTさんが言う。

10:10 入場

電子チケットの表示に手間取っているTさん。スタッフの方へチケットを提示し先に入場ゲートを通過したHさんと私は少し雑談をする。Hさんは福岡県南区出身だという。私は東区出身で、互いのエリアが離れているので、あまりそれぞれの土地に馴染みがないですよね、といった会話をする。

Mちゃんとともにこの水族館に来るのは二度目で、以前はちょうど半年程前のMちゃんが1歳ぐらいの頃に初めて訪れたそう。半年経ったから前とはまた違うMちゃんの様子が見れるだろう、とHさんは言う。ゲートを通過したTさんと合流して歩き出す。

『滝と緑のセンターガーデン』

行き先は決めないまま順路通りに足を進める。エントランスホール奥に見える滝(ガラスの斜面を上から水が流れ落ちるもの)を指差してMちゃんが何か声を発している。

Y:「何て言ってるんですか?」
Tさん:「じょーって言ってます(笑) 」

気になったものをシェアしようと指差していた模様(「じょー」は水を表す言葉だろうか)。

階段を上ったところで昼ご飯をどうするか話し合う。モニターに表示されたアシカ・イルカショーのスケジュールを見て、11:30の回を見た後にレストランに向かうことに。時間帯指定での予約ができないことを私が伝えたところ、Tさんがショーを終わる前に抜けようと提案し、その予定で進むことにした。

『九州の近海』

頭上を覆い囲むように広がる半トンネル状の水槽は、1分おきくらいに滝つぼのように上から水が落ちてくる。大きな音(スピーカーから再生)を立て勢いよく流れ込む水に反応して、Mちゃんは驚きを含んだ笑顔を見せている。Tさんは抱き抱えたMちゃんを水槽に近づける。Mちゃんは上から照らされてきらめく気泡に満ちた水槽を見上げ、顔をほころばせている。

視線をこちらの方に向けたMちゃんを見て、「抱っこする?」と私が言うと、Tさんが「カワバタさんに抱っこしてもらい」と言い、Mちゃんをこちらに向けてくれた。空中でバトンタッチし、自分の体側を向けて抱っこする。Mちゃんは特に気にするでもなく目線を順路の先へと向けている。

Tさんが前向きに抱っこしていたことを思い出し、Mちゃんが前を向けるように抱き方を変えてみるが、すぐに表情を崩して泣き出しそうに見えたので、Hさんに交代してもらう。そのとき自分は、引き渡し方が不安定でないか心配になったので「大丈夫ですか?」と言いながらそっと手を離す。Hさんは「大丈夫ですよ。もう10kgありますから(重たいですよ)ね」と言った。

少し進んで次の水槽へ。Hさんは近づいた小さな水槽の中の魚を指差して、明るい声でMちゃんに語りかける。

Hさん:「見て、“たいたい”だよ」
Mちゃん:(水槽に手を伸ばす)
Hさん:「おいでおいでーって」

Hさんは笑いながら、Mちゃんは水槽がどのようなものかは分からず、魚に触ろうとしているのだろうという趣旨のことを、Tさんに向けて話している。

Y:「魚を“たいたい”って言うんですか?」
Tさん:「たぶん僕の地元の方言なんですよね。子どもに話すときに魚のことを“たいたい”って言いますね」
Hさん:「福岡では言わないですよね~」

Tさんは愛媛県今治出身。調べたところ、「たいたい」は魚の幼児語として使われる言葉で、どうやら愛媛県内でも今治地方に特有の方言のよう。

「たいたい」という言葉は、この後もT家のやり取りにおいて何度も耳にした。Hさんは福岡出身だが、どこか愛着を持ってこの言葉を使っているようにも感じた。一度「たいたい」という声かけに対して、Mちゃんは違う言葉を聞き取ったように思われたときがあった。

Mちゃん:(自分の頭の横をさする
Hさん:「それは“いたいいたい”ね」
Tさん:(穏やかな表情で抱っこしたMちゃんを眺めながら、頭をなでている)

順路を進んでいく。母Hさんが先を行き、Mちゃんを抱えた父Tさんが後ろに続いていく。一つの水槽に足を止めるのは、10秒から長くて1分弱程度。Mちゃんの反応を見て、水槽から注意が離れたことをおおよその合図として(いるように思える)二人はテンポよく歩いていく。

父と母が行う声かけや指差し、体を水槽に近づけるといった促しに対して、Mちゃんは大抵一度はその先に目を向けてみる。じっとその先を見つめたり、生き物への指差し、手伸ばしをしたりすることもあれば、すぐ目線をよそに向けてしまうこともある。

Hさんは時折、Mちゃんに遊び歌(?)を歌って聞かせている。目の前の光景に関連したものを聞かせたり、Mちゃんの表情を見て、あやすように歌っていたり。それに対して、Mちゃんは人差し指を立てるジェスチャーを見せることがある。両親はそれをみて「もう1回?」という。

Tさん:「永遠にこのもっかいが続くんすよ。それは母親譲りなんですけど」


泳ぐウツボの様子。
Hさん:「見て見て見て!(指差し)ウツボってこうやって泳ぐんだ」


ワラスボなど有明海の生き物の水槽の真横に、その魚を使った料理が紹介されているパネル。
T:「生きてる横に食べ方書いてる…」


イカの水槽をしばし眺めた後、MちゃんはTさんの腕の中から私の方を見ていた。「カワバタさんのとこ行く?」とTさんが言ってくれるが、Mちゃんは嫌がる様子。

Hさんが「歩いてもいいね」と言って、Tさんは抱えていたMちゃんをカーペットの上に降ろした。Mちゃんはすぐに歩き出したかと思えば、5mほど先のエレベーターへ向かっていく。足取りはしっかりしている。Tさんいわく、ボタンを押したいのだろうとのこと。

Mちゃんは、ぶらぶらと辺りを歩き出す。私は近くを歩いていたが、Mちゃんがこけてしまいヒヤリとする。「あぁ!ごめんね」と謝るも、TさんHさんは「これくらい全然大丈夫です」と声を揃えて言ってくれた。

Tさん:「自分で歩く?はい、ゴッゴー、ゴッゴー
Mちゃんは再び歩き出す。
Tさん:「カメさん見よ、カメさん。よっこいしょ(Mちゃんを抱き上げて、Hさんが見ている水槽に近づく)」
カメのことは気になるようで、1分超は注視していた。

背後の水槽を少し眺めたあと、
TさんはMちゃんの様子に何かを感じ取って「歩きたい?歩きたいね」と言って、Mちゃんを腕からおろした。

Mちゃんは降りてすぐ、少し前方にいた私の方に右手を伸ばして、手を繋いでくれた
Tさん:「カワバタさんに当たり前のようにつないでる(笑)」
左手はTさんが握っている。

『九州 水の森』

Mちゃんの手を握ったまま次の展示コーナーへ。普段は気に留めないが、ここには4段ほどの下りの階段がある。

Tさん:「階段降りてみよっか
Y:「おっ、階段も降りれるの?大丈夫?よいしょ」
Tさん:「ちょっとこわいか」
両手をつないで状態で、3人で一緒に降りていく。
一段一段、私は「よいしょ」と言い、Tさんは「ひゅ~」と言う。

階段を下りきって、
Y:「あ~(と一息つく)」
Mちゃん:「ゆー」※正確には「ゆ」と「や」の間のような発音
Mちゃんは少し興奮したような声色と表情。


Tさん:「Mちゃんどれが好き?ここには好きな魚おらんか?」


Hさん:「なまず?なまずがおるの…ちっちゃいなまず?」
Tさん:「なまずおるやん」
Hさん:「あ、おった!Mちゃん見えるなまず?」


Tさん:「へび、ニュルニュルー、ニュルニュル
Mちゃんは、ぼーっとアオダイショウを見てて、それからケージに両手を伸ばして指を指している

Tさん:「カワバタさん初めて見たよ~って。ここら辺前はササっと歩いたよー」(Mちゃんの言葉を代弁するかのような喋り)
Hさん:「ね、全然。1ミリの興味も無かったよね」二人の掛け合いを聞いて、私は笑う。
Hさん:「大きくなったね。あそこ歩けるかな?暗いトンネルみたいな」

『九州の外洋』

手をつないで歩くT家の3人


トンネルを抜けて、大水槽を眺めるスロープへ。

Hさん:「大きな水槽があるよ」
HさんはMちゃんを抱きかかえる。

Tさんが「がおー」と言うと、被せるようにしてHさんもジェスチャーを交えて「がおー」と言う。Mちゃんもそれに合わせて手を水槽の方へ向けて伸ばす

地面に降ろされたMちゃんが、空いている左手を私の方へ向けて伸ばす。
Y:「いいですか、私で?」(子どもとの会話に不慣れで口調がおかしい)
Mちゃんの手を取ってスロープを下り出す。
Hさん:「父親が代わりました」

Mちゃん:「うう~
Mちゃんは少しバランスを崩して前かがみになりながら歩く。
Y:「なかなかね、ちっちゃい子には傾斜が厳しそう」
Hさん:「たしかに。よいしょよいしょ」

Tさん:「カワバタさん身長が高いから腰を痛めそう
Hさん:「たしかに」
Y:「あ~大丈夫です」


大水槽の足元にたどり着く。
Hさん:「サメだね」
Tさん:「がおーは?」
Mちゃん:「ぐあ~ぅ

Hさん:「あ、ノコギリザメじゃない」
Tさん:「ううん、違うね」
Hさん:「シュモクザメ?違うか、ハンマー…」
Tさん、Hさん:「ハンマーヘッドシャーク

水槽前のへりにMちゃんが上がろうとする。登って大丈夫かHさんが気にしていたので、私は「ここは全然大丈夫だと思いますよ」と言う。HさんがMちゃんを抱えて水槽の目の前に立たせる。

Hさん:「ねぇ、あれなに?コバンザメ?」
Tさん:「なんやろねぇ」
Mちゃん:「うぉ~う」
Hさん:「これ何だっけ?これがネコザメ?」
Tさん:「それネコザメかな」
Hさん:「ネコザメ、ニャアニャアのネコかな?ネコザメ。ニャアニャアザメ」
Tさん:「ニャアニャアがおーだ。大きいの来たよ、がおー」
Y:「がおー、サメかなー?」
(Mちゃんを囲んで話してはいるが、自分を含め大人3人が「がおー」と言い合っていう光景は振り返ってみると可笑しい)

水槽に飽きたように見えたMちゃんを、私が抱きかかえて降ろす。
Mちゃん:「マ マ!」(「マ」「マ」と一音ずつ発している)
そう言って母の手を取りに行く。

Mちゃんは手を放して一人でふらふらと歩き出す。
Tさん:「どこ行きよるの?」
Y:「Mちゃんはどんな所に興味を持つのかなー?

頭に浮かんだ疑問が、そのまま言葉になって自分の口から出てくる。行き止まりに向かう。
Tさん:「なんも無かったね、ちょっと違ったね」

一人で歩いていった先でMちゃんがこけてしまう。
Tさん:「痛かった?痛いの痛いのとんでけー」
Mちゃんは平然とした顔で立ち上がる。
Tさん:「痛かった?痛いの痛いのとんでけー。へい、ゴッゴー」
Mちゃん:「マ マー
そう言って、Hさんのもとへ向かう。
Hさん:「次どこいくー?あくしゅ(手を取る)」
Tさん:「ゴッゴーしてみる?」
Mちゃんはふらふらと再び歩き出す。


Y:「前来たときと全然違います?」
Tさん:「全然違いますね。前来たときは何かいるな~ってみるくらい。あんまり追いかけきれんくて。前来たとき、まだ歩いてもなかったんで」


大水槽の上の方を泳ぐイワシの群れ。
Hさん:「あれが一個ずつの魚って、めぐはいつ気づくだろう」
Mちゃんは少し水槽を見て、すぐに周囲の人に気が向いている。

Hさん:「見て、あれすごく綺麗。私あれお気に入りにする
Tさん:「(Mちゃんを見て)わたしはもう、いいよママーって
Hさん:「ねぇ、あれ見たことない?あれ、何?」
Tさん:「(笑) ヒトヒキ、、イトヒキアジ…」


Tさん:「Mはもうええんやろ(笑)」
Hさん:「でもエイが好きって、ちっちゃいエイ」

『福岡の身近なイルカ』

Y:「いま言葉はどのくらい喋るんですか?」
Tさん:「ママ、パパ、じいじ、ばあば、、ねぇ今何単語?」
Hさん:「20くらい」

Tさん:「(単語をいくつか言うが聞き取れない)」
Hさん:「がおー」
Tさん:「がおー、バナナ、おいも、たいたい……あとなん言うっけ? ねんね
Hさん:「ねねも言うね」
Tさん:「ねね。人形のねねちゃんっていうのがいて。あとなん言うかなー。そんなもんかなざっと。15くらいですね」

Tさん:「めっちゃ口ずさみよるやん」
Mちゃんが何かを歌っていたよう。

スナメリを見て、Hさんが「Mみたい」と言う。


歩き出してスロープの手すりに向かうMちゃん。
Mちゃん:(手を伸ばす)
Tさん:「タッチー


Y:「Mちゃんは保育園に行ってるんですか?」
Tさん:「行ってますよ、週に3回くらい。保育園に行く前と行ってからは違うなーと思いますね」
Y:「どんな所が違うんですか?」
Tさん:「家帰って、おてて洗おうかっていうと、自分でこうやって洗うんですよ(ジェスチャーをしていた気がするが忘れてしまった)。段差とかも今は自分の足で降りますけど、段差は足から降りるように教えてもらって
Y:「その前は?」
Tさん:「何回かベッドから落ちたことあるんすよ。でも気が付いたら足から降りるようになってて、違うなーって」
Hさん「階段上るのもうちにはないから、保育園で教わったみたいです」

上階へ移動する少し長い階段を前に、Hさんが「抱っこでもいい?」と尋ねたがMちゃんは階段を上りたがたったため、Tさんと先に上がり、Mちゃんが上ってくる様子を上から見ている。数段上ったあと、途中からHさんに抱きかかえられて上ってきた。


『特別展「いきもの vs 怪獣 すがた・かたちのインスピレーション」』

以前訪れたとき入口に看板が立っていた特別展がオープンしていた。普段はただ壁だと思っていた場所にトンネルが出来ていて、奥の方に部屋があり特撮風の飾りつけになっている。いきものにインスパイアされたデザインの怪獣の紹介とともに、その元となった海の生き物自体が展示されている。

Hさん:「え、本物?
Y:「おおー」
Tさん:「本物や、すげーワニガメ」
Hさん:「これがゴジラなん?ゴジラ関係ない?でもゴジラっぽっく展示してあるんや」

Hさん:「これこそがおーやん
Tさん:「がおーは?」
Mちゃん:「ぐぁおー」

水槽の中にいる、手のひらサイズのエイ。
Hさん:「あっ、Mちゃんサイズのエイだよ
Tさん:「ちっちゃい」
Hさん:「赤ちゃんやね、ちっちゃいちっちゃいねー」


M:「あう~」
Tさん:「Mちゃん、人形前にしたらめっちゃ喋るやん

『九州のクラゲ』

大人たちはクラゲについて少し話したが、1分ほどでサクサクと通過していった。

『情報ひろば うみのたね』

お昼ご飯をどこで食べるか、何時くらいで食べるか大人3人で打ち合わせをする。一度ショープール側に出たが、雨も降っており寒いので一旦レストランの下見へ。その前にある子ども用フリースペースでしばし休憩する。

Tさん:「M、せっかくやけん、靴脱いで遊ぶ?」
Mちゃんの靴を脱がせて、遊び場に降ろす。
Mちゃん:「くっくー」(靴の方に手を伸ばす)
Tさん:「くっくがいるの?くっくそこは、脱ぎ脱ぎよ」


広場の横からはショープールの中が見える。

Tさん:「(Mちゃんは)一番イルカが興味あるかも?」
Hさん:「追いかけやすいかも、明るいしね」
Tさん:「たしかに、たいたいより追いかけやすい」

Tさん:「じょうずー
Mちゃん:(手をパチパチと合わせる
H:「泳ぎたいねー

『ショープール』

席へついて数分でアシカショーが始まる。Mちゃんはショーの間、TさんとHさんの膝の上を何回か行き来していた。少しぐずついたときには、HさんがMちゃんに「一本橋こちょこちょ」の歌を歌っていた。

Tさんがアシカの歩きに合わせて、自分とMちゃんの体を揺らしている。Mちゃんはアシカをじっと見ている。手拍子をするとき周りを見渡すこともある。

目の前ではアシカのショーが行われているが、Mちゃんは遠くの方を指差して、「かーかー」と言ったときがあった。
Tさん:「からすをかーかーと呼ぶんですよ」
遠くの空を行く飛行機にも注意を向けている。Mちゃんは飛行機も好きで、音ですぐに気づくそう。

イルカがジャンプするときは、じっと見ているもののはっきりとした反応は示さない。と思ったら、時折体を前後に揺らすこともある。

アシカショーが終わる
Tさん:「じょーずじょーずは?」
Mちゃんは1秒遅れくらいで無表情の(ように見える)まま、手をパチパチと合わせる。

促しを受けてパチパチをすることが多いが、Mちゃんが自ら始めることもある。

目の前をスッと横切るすずめを見て、Mちゃんが着地したすずめを指差す。

Mちゃんは少し疲れてきたのか、ショーの方に集中しなくなる。

また飛行機を見つけ、指差す。

ショーを終えて、レストランへ向かう。食事しながらHさんとTさんにインタビューをし、丁度Mちゃんが眠りについたため、そこで帰ることとなった。

※インタビューは以下の記事にて紹介しています。

■フィールドワークとインタビューを終えて


関心の持続時間(M)と歩くペース(H&T)

動きの乏しいものはあまり注視していなかったようにも思うが、この日だけではどのような対象に興味を持ちやすいのかは分からなかった(一定方向を注視する時間の長さや本人の指差し、手伸ばしなどの行動を、興味のパラメータのように解釈しているが、この解釈自体が適切なのかは改めて考えたい)。

子どもといるときの大人同士の会話
HさんとTさんは、Mちゃんとのコミュニケーションだけでなく、当然二人の間でも言葉を交わしている。Hさんが魚に注目し、その様子を描写するような説明をしたり、何の魚だろうかと口にしたりする。Tさんはその魚について知っていることをHさんに話したりしている(Tさんは料理好きで魚にも詳しい)。

年齢による促しの頻度の差
4歳半の子どもと親は、子どもの興味・関心に従う形で親も行動していたが、1歳半の子どもと親は、親が子どもの関心を促す行動が多く見られた(子どもが先に興味・関心を示す場面ももちろんある)。

指差し行動で見えるようになった関心
半年前の訪問時には、水槽や生き物に対してあまり注意を向けることができなかったという話を聞いた。半年の間に指差しができるようになり、子どもが興味の対象をシェアするようになったという。いま両親はその様子を見ながら、どのような/どのように興味を持つのかを読み取ろうとしている。

反応する場面の違い
やはり、イルカのジャンプやアシカの芸など、ショーの見せ場(私の観点で)ではあまり大きなリアクションを見せない。母Hさんいわく「予測できるかどうかの違いではないか」という話があった。

興味を「つなげる」教育、「言葉の器」
保育士であるHさんが子どもに対して、実際に見たものを「何かにつなげたい」「言葉の器をいっぱいに」と語っていたことが印象的だった。

子どもの学びと、私の学びの共通点
上記のつなげる教育/学びは、いま自分がやっているフィールドワークをきっかけとした思索ととても似たもののように思えた。また母親は子どもの様子を観察・分析して色んなことを学んでいること、それは保育を学んでいるときよりもその後の実践で学ぶことが多いという話も印象的だった。

言葉は、文字よりも先に音があるのか
1歳半の子どもにとって言葉は、音として認識されているように感じられた(「たいたい」/「いたいたい」の聞き間違いの事例)。

子どもと話す言葉
私は仕事の癖で相手の言葉を拾って話すが、子ども相手だとそれは「あー」とかになり言葉が出てこない。もしかしたら、いわゆる赤ちゃん言葉は、そういう風にして使われるのかもしれない。

これまでの観察を振り返ると、親は子どもに対しても大人の言葉を沢山喋るように思う。Hさんへのインタビューを経て、それはあえてそのようにする場面も多いのだと感じられた。

空間のシームレスな体験
小さな子どもは空間の区切りをあまり意識しない/できない、のだろうか。一緒に過ごしていると、設計された空間の区切りを感じることなく、シームレスに歩いていく感覚があった。

おそらくMちゃんの周囲への関心の寄せ方に理由がある。展示とその他の場所(何もない通路など)で、移動ペースが変わらない。新しい道を歩くことも楽しんでいるように見えた。また、まだ走れない、ということもペースに影響を与えているのかもしれない。

以前の4歳半の子どもとのフィールドワークでは、親はまだ水族館という空間を十分に認識していないだろうと話していたが、Mちゃんにとっては水族館の中の空間の違いについても、私とは異なる感覚を持っているのではないだろうか。

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