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秀吉の黄金の茶道具 …の、小さな謎

いや~びっくりしました……
黄金の茶道具が、オークションに出るとは……

5月27日にShinwa Auction(シンワオークション)が開催するオークションのLot 1007「金茶道具一式」は、報道によれば、江戸時代に津藩主だった藤堂家に伝来したものです。豊臣秀吉が藤堂高虎にほうびとして、かの有名な「黄金の茶室」で使っていた金の茶道具を与えたという言い伝えがあるのだとか。

秀吉が金ピカ大好きだったのは有名ですが、黄金の茶道具って本当にあったんですね!

Lot1007はエスティメイト:1億5千万円~3億円!! なんだそうです。
実際はどこまで値が上がるのでしょうか……どきどきです。

セットは以下の通り。
茶碗:H6.8×D12.0cm
天目台:H7.6×D15.8cm
茶入:H6.2×D5.9cm
釜:H22.2×D20.8cm
風炉:H23.3×W39.4cm
釜鐶:各D7.7cm
杓立:H22.4×D12.0cm
火箸:28.8cm
建水:H10.0×D17.2cm
蓋置:H5.1×D7.1cm
1929年に「日本名寶展覽會」(東京府美術館/読売新聞社)に出品されたそうですね。

写真は著作権などの問題がありそうなので、色鉛筆でささっとスケッチした画像ですみません…
(本物はこのへんのニュースの画像でご覧ください↓
「黄金の茶道具」競売に出品 秀吉のほうびと言い伝え(共同通信) - Yahoo!ニュース )

左から釜と風炉、釜環、茶入、杓立と火箸、蓋置、茶碗と天目台、建水

……よれよれだな、この絵……orz

気を取り直して。
それぞれのお道具には紗綾型などの模様が美しく施され、金ピカでありながら上品なたたずまいです。形がすっきりしているせいもあるのでしょう。

風炉には灰を入れて、火箸で炭を扱って火を入れ、釜でお湯を沸かすので、この3点はわりとハードな使い方になります。
報道によるとお道具一式は金と銀の合金で、金の含有率は80~88%だそうですね。
テレビの映像で、男性アナウンサーが風炉と釜を持ち上げて「重いです」というシーンがありましたが、むしろ「金だったらそんな持ち上がる?」と驚いてしまいました……純金ってたまげるほど重いらしいじゃないですか……
もしかして、ハードな使い方をする道具は金の含有率が低いのかしら?などと……実際はよくわかりませんが(汗

金の釜でお湯が沸くのかな? と思いましたが、金は鉄より熱伝導性が高いそうで、お湯はよく沸きそうです。
そういえば、ときどき百貨店の純金イベントで、黄金の鍋が出てきますよね。
純金のすきやき鍋で、実際に調理した例もあるそうです。
広島三越で黄金展-純金のすき焼き鍋で「広島レモン鍋」も - 広島経済新聞 (keizai.biz)

佐賀県立名護屋城博物館所蔵 豊臣秀吉画像【佐賀県重要文化財】

さてさて。
今回の、秀吉ゆかりの?黄金の茶道具、やはり気になるのは、誰が落札するのか?ということです。

個人的には、これほど伝来がはっきりしていて豊臣家由来のものかもしれない貴重な茶道具なのだから、できれば国立博物館や茶道具に造詣が深い美術館に一式おさまってほしいなあ、と、正直思います。
できれば国外に流出してほしくない……

こういうところにこそ税金を使ってくれてよかったのになあ……と。
もし予算がないのであれば(3億くらい文化庁あたりの予算で出せないのかという気もするが)、時間があればクラファンとかやれば、全額は厳しくてもそこそこ集まったのでは……などと。

でも、オークションに出てきたのにはそれなりの事情があるのでしょう。
プロの美術オークションなど怖くて近寄れないド庶民のワタクシは、こうしてブツブツいうしかありませぬ。

◆ほかにも仲間が?


ところで、こちらのセットですが、ちょっと「あれっ?」と思うところもございます。

これ、フルセットじゃないかもしれない。
ほかにも仲間がいたのでは??
……という点です。

といいますのも、こうした同じ素材でできたお道具は、現代のお点前ではたいがいワンセットで格式の高いお席に使います。
(ま純金の金ピカなので、現代の格式では、もしかしたらそんなに高くならないのかもしれないけど……)

そこで、仮にこれらをセットで使おうとすると、足りないものがあるのです。
ここ何年か、お稽古をさぼっているので、うろ覚えですが、確かこんな感じに配置するんだと思いますが……↓↓↓

右側にお客様がいらっしゃるのが普通

うろ覚えすぎて、釜環はこの配置だと使わないですよねと思いつつ、実は必要だったらごめんなさい。
蓋置は建水の中に入れておきます。
杓立には柄杓も入ります(図では省略)。柄杓はさすがに竹かな、と……金だと重くてやりづらそう……

で……一式置いてみますと。
お客様に一番近い側に置かれるはずの水指がありません。
水指というのは、中に水を入れておく蓋つきのツボみたいなものです。
お点前中に、釜の湯に水をさしたり、お客様がお使いになった茶碗を清めたりするときに使います。

同じ素材でできた「皆具」というセットを考えても、水指・杓立・建水・蓋置の4つで一組なので、やっぱり水指が要ります。

……というのは現代のお点前なので、これが秀吉から藤堂高虎に贈られたものだとすれば、当時のお点前のお道具セットは今と違ったのかな?という可能性もありますが。
ただ、利休も水指は使っていたようなので、やっぱり水指もあったんじゃないのかな? などと。

上記の図の配置だと、茶入の下に小さなお盆的なものを敷くのが自然かと思いますが、ふつうのお点前だと漆塗りのお盆なので、ま、金でそろってなくても大丈夫かなと。
もしかすると、最初は、お道具を配置する台子も、黄金のものだったのかもしれないけど、ま、これも黒い漆塗りのものでいけそうです。

ただ、水指は……ほかが黄金で模様などのテイストもそろっている中で水指だけ違うのは、ちょっと違和感ないかなあ。どうなんだろう。

◆「水指がない」ロマン


というわけで、水指の小さな謎です。
水指は、なぜないのだろうか?
・最初から、水指がないセットを秀吉が贈った
・最初は水指もあったけれど、時代とともにいつの間にか失われた
・黄金の水指は、華やかなしつらえの薄茶席などで美しく映えるので、どこかで誰かが単体で愛蔵している
……とかとか。

いろいろ考えるのもロマンがあって楽しいですね。

個人的には、たとえ水指がなかったとしても、今回のこのセットは、どうか今後もばらばらにならず、一式まとめて、どこかでどなたかに末永く大切に伝えていただきたいなあと思います。
それで、ときどき、美術展なんかで拝見する機会をいただければ、ものすご~~~く、うれしいな。

追記:27日のオークションで、金茶道具一式は3億円で落札されたもようです。茨城県筑西市の廣澤美術館が落札してくださったとのこと!!! 日本の美術館です!!! ありがとうございます!!!!!
「黄金の茶道具」一式に3億円 秀吉ゆかり?の品々、競売で落札(共同通信) - Yahoo!ニュース
茨城・筑西の廣澤美術館が3億円で落札 「黄金の茶道具」一式 「町おこしの目玉に」(茨城新聞クロスアイ) - Yahoo!ニュース

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