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円山応挙、画面に引き込まれる感動 この絵ここが好き!その1

絵を見ているとき、「この絵のここがすごい!」「ここが好き!」と、語りたくなることありませんか?
美術館で、ツレとの会話でつい口からこぼれでる感動ポイント。なるべく小声で控えめにと気を付けていますが………
ごめんなさい。周囲の人は「うざ」「うるせ」「黙れや」と思っておられるのではないかと……

美術系コミックの「ブルーピリオド」の展示が東京の汐留天王洲(でした。すみません)で開かれた際、一角に名画(印刷)があって、「この絵を見てどう思ったか」という感想を、自由に付箋に書いてがんがん壁に貼っていくコーナーがありました。
ほかの人は、この絵をどう見ているのかな? どんなところに感動しているのかな?
聞きたい派のワタクシとしては、とても興味深いコーナーでした。あんなふうに「ここが好き!」「ここが変だと思う」「絵の中のこの人、きっと彼女に振られた直後だよね」みたいにおしゃべりできればな~
……って、美術館では迷惑なので、よいこはやめておきましょう……

◆語りたいのに語れない…だったら書いちゃえ


ということで、語りたいのに語れない、「この絵のここが好き!」ポイントを、そうだ! 書いちゃえばいいんだよ! と思ったわけです。
なにぶん絵の見方は自由ですし、私は美術を専門に学んだことがない単なる知識浅薄なアート好きなので、「正しい見方」はしていない自信があります(キリッ
単なる個人的な趣味嗜好に基づいた、偏った感想ですので「うぜ」「うるせ」「黙れ」と思われましたら、誠に申し訳ございません……読むのをやめていただいてダイジョブです……

◆超巨匠の国宝に、今更なんか言うことある?


さてさて。第一弾は、円山応挙さんでございます。
言わずと知れたビッグネーム。シロートが何か言う隙などあろうはずもない、日本美術史界に燦然と輝く金字塔。
マジで化けて出そうな幽霊から、緻密かつ豪奢極まりない孔雀、世界的に「きゃわたん」と愛される子犬まで(I love cats!と言いながら応挙の子犬グッズを手に取った外国人をテレビで見ました^^;)、傑作でない作品はない超巨匠。
恐れ多くも、そのお作品の「ここが好き」を、どシロートがただ垂れ流す記事でございます。

円山応挙「朝顔狗子図杉戸」部分 出典:ColBase(https://colbase.nich.go.jp/)をもとに編集

今回、取り上げさせていただくのは、「国宝 雪松図屏風」。
国宝っすよ国宝。
いいに決まってらあ。シロートの意見なんか、もはやどうでもいいじゃないすか。はい、そういうことで。撤収~

◆「応挙、うめぇ~~~~!!!」


……以下、蛇足ですが……
この絵を初めて、東京の日本橋にある三井記念美術館で見たとき、思わずうなっちゃったのですよね。
応挙、うめぇ~~~
と。

あったりめーだろ。何言ってんだ今更。

しかし、うならざるを得なかったのです。

円山応挙「雪松図屏風」右隻

この、右隻。
絵の前に立った時、まず、ぱっと目を引き付けられたのが、中央上部
松が、ぐ~っと伸ばした腕のような枝が、マントを振り払うかのように豊かな葉をまとった小枝を背にして、重なっている部分でした。

どうしてかな、と思ったら、絵の中の白と黒のコントラストが最も強く、さらに白く広い面と細かい松葉の書き込みのコントラストも強い、つまり絵の中で一番、対比がはっきりした部分なんですね。
「マントを振り払うかのように」といった感じで、軽やかな動きも感じます。

自然にそこに目が吸い寄せられると、そこから実に自然に、松が伸ばした腕にそって視線が流れます
伸ばした腕の先の松葉が下に向いていて、そこから視線が自然に下部のぼかした表現を通って松の幹に戻ってくる。
で、す~っと幹を通って上を見上げる……

といった具合に、フォーカルポイントから画面全体に流す視線誘導の見事さに、うならざるを得ませんでした。
ものすごく計算されつくした構図のように感じます。

◆これは、松? それとも? 広がる妄想


この松、なんとなく、頼りがいがありそうです。
雪道を歩きにくくて困っていると「さあ、俺の腕につかまって」と、手を差し出してくれているかのような……

その手の先にあるのが、左隻の主役の右側の松です。

円山応挙「雪松図屏風」左隻

右隻の松の腕にすがりつくか、あるいはその腕を受け止めるかのように優しく右側に伸ばした枝は、繊細に松葉と雪が書き込まれています。

こちらの画面は、2本とも、やわらかい曲線と優しい繊細さが印象的です。
右隻の松に頼ろうとしている存在にも見えるし、いつもは弱弱しいけれど精神的にはしっかりと右隻の松を支えている存在のようにも見えるし……
なんというか、左右で、とても仲の良いご夫婦のように見えました。

左隻右側の松が奥様だとすると、左側の松は付き人みたいな?
上村松園の美人画で、雪の中を歩く奥様にお付きの女中さんが付き添っている構図がありますが、あんなイメージです(時代は違うけど)

右隻の松にがっつり視線を誘導されて、屏風全体を見渡せば、そこには仲睦まじいカップルの世界が……
松が人間みたいに見えて、画面の向こうに物語が膨らみます。

◆ほら、もう言うしかない


こんな感じで、視線誘導で画面に引きずり込まれて、その向こうの物語を想像させられる、快感
この豊かな世界が、色数を抑えた雪景色で、シンプルで無駄のない構図で描かれている明瞭さ。
松の姿かたちは、「写生、命!」だった応挙ならではの正確さ。
さりげなく画面全体に金をあしらって、祝い事にふさわしいゴージャスさまで。

ほら、もう言うしかないじゃありませんか!
応挙、うめぇ~~~~!!!

三井家伝来とのことで、どういういきさつでこの屏風が描かれたかは全然知らないのですが(すみません)、なんとなく、婚礼の席なんかにあったらめちゃめちゃいい感じ! と思いました。

この感動、現物を見ないとなかなかわからないかもです。
応挙の迷いのない筆の運びや、白・黒・金の鮮やかさ。画面に引き込まれる迫力や、雪のにおいがしそうな気配……
やはり、絵はナマで見てナンボですわ……

屏風を所蔵する三井記念美術館では、よくお正月前後の展示にこれを出すような気がします。
東京の日本橋で三井不動産が着々と進めた再開発地域の中心で、周辺にはカフェやら三越やらいろいろありますし、お散歩によいスポットですので、もし機会がありましたら、ぜひ現物をご覧になっていただければと……

というわけで、恐れを知らぬシロートファンによる名画のトンデモ鑑賞シリーズ、初回は、泣く子も黙る円山応挙の国宝・雪松図屏風でした!

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