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魔法科のカロン

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魔法学校に通う高校生たちの非日常と情動と日常。
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2019年4月の記事一覧

海蘊魚のドーラ

看護団員の朝は短い。詰め襟の制服を着て、結った髪にハットを留めたなら、彼女らの支度は終わる。海蘊魚(もずくうお)とドーラが呼ばれるのは奇妙な衣装のためだ。彼女の肩や腰には海洋生物めいたひだが無数にあしらわれている。

おはようございます、とドーラは叫ぶ。今日も元気ですね、と点呼をとりつつ団長は言う。ドーラは、はい、と叫び、杖をふるって『消毒』をする。

彼女は消毒が得意だった。病的な潔癖症によって

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看護長のグッドバイ

それが女の口癖だった。『さようなら』『あなたともう会わないことを願っています』。まなじりのつった目。開かれた口はただ淡々と別れを告げる。

女の名はプロクネといった。彼女はグッドバイと呼ばれた。自身の口癖のためだ。看護長の役職に就き、伏せった患者を看る彼女の舌は嘆きの歌を知っている。涙に湿る冷たくなったベッドを知っている。花で満ちる『ベッド』を知っている。だから彼女は繰り返す。『さようなら』『あな

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移転者のガニュメート

レーテの流れは甘やかだ。永遠にも思えるほどの旅路も船に揺られるうちに眠りの中へ姿を消した。残ったのは焼け付くような喉の渇きと、幻想の紫色。

ガニュメートは『先生』のことを考える。その人はまるで太陽のようだった。崇拝を通り越し、畏怖にも似た感情を向けていた。暖かさで示される、身を焦がすような慈愛を向けられていた。まばゆく映るのは変化をもたらす紫の光。目も眩むほどの輝きは妖精との別離を経て指標をなく

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従者のリマ

彼女は慣習的にジェスと呼ばれた。リマ・コーク。両性の身体的特徴をもつ女王付きの宮廷道化師。魔法使いの血を引く女。リマが女王に傅くのは忠誠のためではない。

彼女は元々魔術塔に捕らえられた魔法使いの一人だった。混沌と秩序の過渡期、法の網目が敷かれ、電波塔接続圏内が人間の国になったとき、物理法則を凌駕し無法を成す魔法使い達は異物と成り果てた。ひとりひとりに矯正の手が入り、あるものは故郷を捨て、あるもの

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クイーンのローゼ

『看護長を呼べ』と女王は言った。女王の仕事は鎮圧だ。しかしそれは外と中との戦闘に限ったことであり、内部で起きたテロリズムは管轄外だ。そのはずだった。しかし女王はそこにいて、燦々たる光景の中、首に巻かれた杖でその力を振るっている。

「ジェス、手が空いているならお前もやれ」「仰せのままに。女王」ドスの利いた声に周りがぎょっとして振り向く。短く切られた血色のドレスは恐怖と嫌悪の目を向けられる。ぞっとす

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支配者のユピテル

ユピテル。それは支配者であった。幻想の色を携え、影のような体を持つ不滅の者。それがどんな過去を持ち、なぜこの国に君臨しているのかを誰も知らない。生まれ持った名前も、顔も、全てが不明だった。ユピテル。名前は公的なものではなく、それに師事した男がガニメデであったが故のレトリックに過ぎない。

国内外、過去未来現在。全てがユピテルの掌握下にあった。永遠の平静が、平穏が、均衡が、それの手によって成された。

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道具屋のアリシア

街の中心から少し外れた位置に魔法道具屋は建っていた。店主の名はアリシアという。オレンジの赤毛を編み、腰に羽箒をさして、彼女は今日も閑散とした道具屋の番をしている。客は来ない。カウンターに腰掛けたアリシアはウエストポーチから手鏡を出して髪を弄った。客は来ない。往来を行く鳥の声さえ聞こえるようだ。暇になったな、とアリシアは思った。

魔法を使うのには道具がいる。これはどんな場合であっても是だ。電波塔が

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妖精頭のマリア-2

時計の鎖を指に絡め、カロンは周りを見渡す。「そこの女魔術師はそもそも特別枠だ。推測が正しければ、俺から魔法の力を奪おうとしたのはあんたで間違いない。そうだろう? 俺はきちんとした手続きを踏まずに妖精(女魔術師の使い魔)と別れた。だから力を消されていない。自分が魔法使いだと覚えている」カロンが視線をよこしたので、不承不承という様子でヴェニーも口を開く。「……私はそもそもこの街の生まれじゃない。私は生

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妖精頭のマリア

扉をくぐればそこは塔の中。

今は日中、宣言通りの真昼間。ルカを認め、女魔術師は控えの女へ指示を出す。女は頷く。女の背を見送り、ルカは女魔術師と向き合った。そうだ、確かにこんな顔だった、とルカは思う。目の前にいれば顔を思い出せるのに、目を離せばすぐにその長い髪の紫が印象を塗りつぶしていく。曖昧な顔をした女は手を広げて、ルカ達へ歓迎の意を示した。
背の高い女魔術師をルカは見上げる。その背にカロンは身

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