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クリエイターが好きなことで生きていける世界をつくりたい。



フォントをつくっています。


フォント名【 アイシングソーダ 】


フォント名【 フランボわーず】


私はフォントをつくっています。
フォントとは身近に、ごくあたりまえに存在するものです。ざっと部屋の中を見渡して目に入る文字たち、そのほとんどはおそらく、何らかのフォントを用いてデザイナーさんがデザインし、印刷会社さんが印刷をしたものです。フォントが存在しなければ、現代の生活はまず成り立ちません(これはグラフィックや印刷の技術とセットで考えたほうがよいことですが)。

明朝体、ゴシック体、手書き風、デザイン性の高いもの……。素敵な作品がたくさんあります(あたりまえに生活しているとなかなか気づく機会が少ないかもしれませんが、フォントは絵画や音楽と同じく『作品』なのです。それぞれが使用・制作目的に沿って一文字一文字に魂を込めて丁寧に形づくられた、芸術品です)。
プロの方々が所属されている企業から発売されているもの、プロの方が個人で販売されているもの、企業から無料で配布されているもの、個人が趣味で制作し無料で配布しているもの……。業態はさまざまです。

私が制作したものは、基本的に誰でも無料で使えるものとして配布しておりますが、使用用途がお金の絡むもの(いわゆる商用利用)に関しては、有償でのライセンス販売という形を取っています。また、無料版にも投げ銭システムを設けています。
制作スタンスは「創作活動をされているクリエイターさんに、表現を広げる選択肢の一つとして、価値を提供したい」です。

フォントを初めて配布・販売を開始したのが2020年7月でした。
上記一作目に加え、2021年8月には二作目もリリースし、現在はその2つを管理しています。定期的に見直しを行い、実装文字の追加やブラッシュアップなどを行っています。
また、フォントデータの制作のみならず、利用規約の管理や配布サイトの更新などもすべて一人でしています。(ちなみにフォントだけではなく、動画制作なども、大半は趣味としてですが14年ほど続けています。)
企業や団体に属するものでなく、完全に個人での活動です。

趣味でやっているかと問われれば違いますし(もっと大きな、責任の伴うものと考えています)、ビジネスとしてやっているかと問われれば、それもなにか違う気がします(まだそう言えるレベルに至っていないということも大きいです)。
ですがどちらにしろ、お金をいただいているケースがあるということは確かであるため、相応の責任感を持った運営を行っています。


3000円という強気を見せたわけ

ここ数ヶ月で、商用版ライセンスを購入してくださる方が、ぐっと増えました。
とても喜ばしく、たいへん畏れ多く、そして光栄かつ幸甚なことです。ほんとうに、ありがとうございます。

ところが、売れ行きがどんどん加速するにつれ、それと比例するかのように私はすこし不安になってしまいました。ほんとうは喜びたいのに。とても光栄なことなのに。申し訳が立たずに心苦しい。そんな日々がしばらく続きました。
(念のために申し上げておきますと、誰も何もわるくありません。すべては私の不慣れさから来る心のグラつきによるものです。詳細は後述、かつ解決しております。)


商用版ライセンスに関しては3000円という、相場から考えても、素人としては相当に強気な価格設定をしました。
これには大きな理由と、著作者としての強い意志が込められています。

私の制作したフォントは、プロの方から見れば、技術的に非常に拙いものであるという自覚があります。これは言うまでもなく当然のことです。
足を踏み入れたばかりのド素人が、長い時間努力と研鑽を続けられ、専門知識と技術を身につけておられるプロと同じ土俵に立てるはずがありません。
むしろそんなことをわずかでも考えようものなら、あまりにもあまりにもおこがましすぎて、土俵外どころか地中に深い穴を掘り、ギリギリ音の届く辺りから全力の拍手のみを届けたい気持ちです。ほんとうの正直なところは……。

ですが、何もかもが初めての素人による作品であっても、「お金が絡む用途には、きちんと対価を求める」という決断をしました。

後述しておりますが、私自身、これまでたくさんのフリーフォントやソフトなどにお世話になってきました。だからこそ、自分にも何か恩返しができないか……同じように価値を提供できないか……。そう考えたのが、フォント制作のきっかけでした(文字を書くことが好きかつ、褒めてもらえたことも多かったので、自分が生み出せるなかでいちばん需要があるものはこれだと思ったのです)。

商業の絡まない個人利用であれば、基本的には無料で使っていただける、それがまず大前提でした。(有償販売のみ、ということであれば、おそらくフォント制作自体していなかったのではないかと思います。)
そこからひとつ追加要素として、もしも商用利用をしたいと思ってくださる方がいらっしゃるのであれば、販売という形で可能になります。という、あくまでも「実際に使用して、気に入って、価値を見出してもらえた上で、納得という名の対価」として求めることができたからこそ、商用版ライセンスの販売ができました。これは考えるまでもなく確かなことです。

なので最初の頃は、ライセンスのご購入や投げ銭(基本300円)をいただけると、ごく当たり前に喜んで、ありがとうございます! と感謝の意を捧げておりました。
「ごくわずかな方にだけそう思ってもらえればいい」と考えていました。ライセンスが売れずとも、フリー配布版の方でたくさんの方に使っていただけるのであれば、目的は達成しているからです。

ですが、購入者さまがどんどんと増えていくにつれ、こころがざわざわとしてきてしまいました。まさかここまでお目に留めていただけるとは、そしてこの価格でも受け入れていただけるとは、思っていなかったのです。

もちろんブランディングやマーケティング、デザインなどは以前より少々嗜んでおり、やるからにはしっかり意識して行ってはいます。
せっかく時間をかけて努力し作り上げたものを、すこしでも多くの「必要としてくださる方」へ届けばうれしいと願うのは、ごくあたりまえのことではないでしょうか。
ブランディングやマーケティングは誇張のためにするものではなく、必要としてくださる方々へ向けて、正しくわかりやすく、魅力を知ってもらうためのものと考えています。

しかし前述したように、素人が見よう見まねで制作した、粗の多いものです。それでも、別の分野で14年間培ってきた、いち作り手としての確かな責任感をもって全力で作り上げ、積極的なブラッシュアップも頑張っております。しかし当然ながら、知識も技術もプロの足元にも及びません。
きっとまだまだ、気づけていない改善点がたくさんあります。この2年弱の間でさえ、ブラッシュアップを繰り返すうちにたくさんの改善点に気づき、冷や汗をかきながら修正を繰り返してきたほどです。現在進行系で修正作業中でもあります。
(たびたび素人と表現してはおりますが、プロとは格が違う、という意味合いがつよいものであり、お金をいただいている以上は「責任の伴わない」という意味での素人とは最初からまったく思っておりません。そういった意味ではたいへん僭越ながら、言葉上の意味ではプロ意識があります。ほんとうに恐縮の極みですが……。)
だからこそしっかり納得していただいた上で、とこういったシステムを組みました。
だけれども、想定以上の状況に、戸惑いと心苦しさを感じてしまったことも事実です。

そして、この記事を書くに至りました。
順不同にぽつぽつと気持ちを書き出したものを整理したので、記事全体を見るとまだ前半ではありますが、順番としてはこの部分をいちばん最後に書いています。
自分の考えをとことん掘り下げて出力してみて、ようやく心が晴れました。

私は購入者さまを全力で信頼することで、抱えていた心苦しさから解放されることができました。一方的に勝手ながら、ありがとうございますとお伝えしたいです。
発展途上である私の制作物に、それだけのお金、対価を払っていただける価値を見出してくださったのですから。

ここは購入してくださった方を全面的に信頼し、自信を持つことが、真に誠実なあり方だと考え至りました。驕りではなく、信頼です。
ひとからの評価を、応援の心を、あたたかさの宿った言葉を信じる。とてもたいせつなことです。たとえ数は少なかったとしても、それら一つ一つを決して忘れてはならない。無下にしない。
それをたいせつにできたからこそ、私はここまで生きてこられたとまで思っているほどです。

これまで私の制作したあらゆるものに、あたたかい言葉をかけてくださった、あるいは好んでくださったすべての方へ、全力の感謝を捧げたいです。ほんとうに、ありがとうございます!!


3000円という価格設定には、希少性という価値も含めています。
手書きフォントの場合、「本当に手書き文字のように見せたい」という用途もあると思います(私はある)。
その場合、「これはあのフォントだ」と多くのひとが見てわかる有名な選択肢は、目的が根本から崩れてしまうので回避せざるを得ません(多くのひとがそこまで気にしているか……?と問われると、それはわからないのですが……)。
個人利用はフリーと言っても、人々の目に多く留まるのは圧倒的に「商業的な利用が行われた場合」の方が多いです。なぜなら商業、かつそういったデザインを行う場合というのは、すこしでも多くひとの目に触れさせることが目的のことが多いからです。

なので、素人としては挑戦的である価格を設定することで購入者→所有者を絞り、希少価値(珍しさ)を高めて、「調整次第で本当の手書きのように見せられる」という付加価値を狙ったつもりです。

また、自分の手書きの文字(風)を自由に使用できるデータを公開・権利を販売する(著作権は破棄しておりません)というのは、相応のリスクが伴うものと考えています。まあこれは、ネット上に手書き文字を公開されているあらゆる方に当てはまることでもあるのですが……。

フォントはもちろん悪用されれば問答無用で規約違反ですし、こちらには制作時のデータも残っているので、よくない使い方はできないようになっています。当然、ひとの手書き文字の悪用も厳禁です。
(例えば、万が一にも何かを批判するような用途で大々的に使われて、その画像が一般に知れ渡ってしまった場合、私は無関係なのにその印象が付き纏い、どこかで文字を書くたびに怯えながら一生を過ごすことになります。ほんとうに万が一の話ですが、絶対に起こらないとは言い切れないのです。それがリスクというものです。)

そして、すこし話はズレますが、特徴的な字であればあるほどリアル知人への身バレの可能性は高まります。既に開き直っているのでそう感じることはもうありませんが、最初はこちらの面でも結構プレッシャーを感じていました。
(でもひとの手書き文字を観察・記憶しているのって、もしかすると文字関連にこだわりのあるひとだけだったりするのでしょうか? 一般的にはどうなのか、残念ながらわかりかねますが……。知りたい。
私は幼い頃から、一度見たひとの文字はぱっと見てすぐに誰のものかわかるので、そういう前提の感覚を持っています。)

そういった面でも、サービス料と言いますか、いち作り手として、「クリエイターが決して目を逸らすことのできない、逸らすことなく還元されるべき覚悟に基づくサービス料」を込めたいという思いが、しっかりとありました。

そして次の項で述べる、「クリエイティブの価値を下げない」ということが、なによりいちばんの強い意志で、理由です。


「無料であたりまえ」の意識はクリエイターを生かしてはくれない

フォント制作についての話をしてきましたが、ここからは一躍して「クリエイティブに関わるひと、またそれを享受するユーザー全員」についての話をさせてください。

まず、見出しがすべてです。これはもう、何年も前から多くの方がご指摘されている通りですので、いまさらここで語るまでもないですね。

それが知れ渡ってきて、クリエイターさんに簡単にお布施を贈れたり、お布施を贈ってリクエストができるサービスなどが積極的に利用され始め、また各種動画サイトなどにおいても投げ銭機能がどんどん充実してきました(開発者さまがた、ありがとうございます)。

オリジナル作品のみならず二次創作界隈においても、既に広く普及しています。つまり多くの方にとって、クリエイティブとは「お金を払う価値のあるもの」という意識が根付いたと言えます。たいへん意義のあることですし、この数年間、積極的に声を上げて、すこしずつそういった意識を啓蒙してくださった方々には、大いなる敬意を表します。

ただ、こういった意識をつよく持っているのはまだ一部の「自身もクリエイターであるか、もしくはクリエイター(創作文化)と近しい関係にあるユーザー」が多く、これらの文化と関わりの浅い方々には、思ったほどにはまだ浸透していないのかな、と感じることもあります。
(それでも、推し活などが一般化したことにより、その意義は確実に浸透してきていると感じています。とても喜ばしいことです!)

私の作品に適応して言えば、フォントというものの性質上、求めてくださるのは必然的にクリエイティブに関わる方々です。そのため、先に述べた「価値あるものという意識」を信頼し、商用版ライセンス購入を自己申告制にしています。
わかりやすくお伝えすると、お金を払わずとも無料で同じものが手に入るので、心ないひとが黙って無料で商用利用したところで、バレなければ使えてしまう。ということです。
(もちろんライセンスご購入者さまはきちんと識別できるようになっておりますので、有事の際には確認すればすぐにバレます。規約違反となります。)

しかし、ご利用者さまの規模が想定以上になったことと、たくさんご購入いただけたことへの感謝の思い、正しくご利用くださっている方への証明として、また自身にとっての責任と納得の面から考えて、今後「購入してくださった方だけが入手できる追加特典(買っていないひとが規約に違反した使い方をするとバレる可能性が高まるもの)」を実装する予定で、現在鋭意制作中です。


ですがやはり、「ネットを通じて得られるものはなんでも無料が基本」という意識は根深いものがあると感じています。もしくはクリエイティブの価値が軽んじられている。
これはネットに限った話ではなく、ただネットという自由度の高い環境における「自由の氾濫」が、それを顕著につよめてしまっているというだけだと考えていますが。

無料、安価という便利さが当たり前になってしまって、その価値を生み出してくれている人々の努力、誇りに気づくことができない。
これに気づけているひと(作り手目線寄り)と、気づけていないひと(消費者目線寄り)の考え方には、ふかい溝がある、と常々感じています。

今現在も無料のコンテンツ、ゲーム、素材、アプリ、各種データなどはたくさんあります。というか、専門的なものでない限りは、もはやそれが基本スタイルになったという感触です。基本無料。課金によるカスタマイズで、オリジナル要素を作り出していく。

これらの無料システムはもう多くの方が存じている通り、ビジネスのあり方の一つです。それ自体は敵視するべきものではありません。
この方法で大きな利益を狙えるのは、宣伝力・経済力をもった企業です。フリー(もしくはフリーミアム。似たような形態ですが違いがあります)モデルといって、一部の商品・作品を無料で配布・公開することで、自社もしくはグループ、パートナー企業に「無料として放出した価値以上の利益(売上はもとより、知名度や好感度、登録者数など、多くの『きっかけ』)」を得られるから、ビジネスモデルとして成立しているわけです。
これは口コミでの広まりなど、取り込めるユーザー数が多いほど有効に働きますし、きっかけの後に囲い込む物資が多く充実しているほど、ユーザーはその場に留まってくれやすくなります。よって当然個人よりも、素地の部分で多くの物資を備えている大企業の方が有利となりやすいです(なにごとにも例外はありますが)。

この、「大きな規模で活動できる大企業」が主体となっているビジネスが、現状のクリエイティブを取り巻く大きな部分を占めていると、個人的に感じます。
企業と個人では、(困らないくらいの財力を持っていない限り)できることに大きな差があります。
大企業がビジネスとして行っている「基本無料」体制が当たり前として人々の意識に根付いてしまって、個人クリエイターが割りを食っている。そういった面は、やはりどうしても、あるのだろうと感じざるを得ません(もちろん我々はその恩恵を大いに受けていますし、よくない印象を持っているわけではまったくありません)。

企業の中にいるほうが生きやすい。
だけども、それぞれ自分が生きやすい形で、一人でもそれなりに、好きなことをがんばって生きていける。そんな世界になったらいいなと、自身もすこしでもその方向性に進む一端を担えないかと、いつも考えています。というより、夢でもあったりします。

一部のインフルエンサーの方や、実力・実績ともに申し分のない方は、現状でももしかしたら問題なく生活できているのかもしれません。でもほんのごくわずか一握りだと思います。
昔よりもよほど、好きなことをして生きていける環境は整ってきたとも思います(好きを極めることが価値=お金になる社会、最高ですね)。
自身を含め、ユーザーの意識や求めるものも、クリエイターにとって良い方向へと変わってきていると感じますし、今後もますます進んでいってほしいです。
たいへんだということは(私には想像も及ばないようなレベルで)存じ上げておりますが、NFT、革命的な最高文明なので、日本でも今後どんどん浸透していってほしい……!


念のために申し上げておきますと、この記事に、と言いますか私自身に、特定の企業や個人を批判・忠告する意図などは一切、一寸もございません。
あくまでも現代の物事の方向性について、またそれに伴う人々の価値観の動きについて、一個人が全体を俯瞰しながら常々考えてきた、概念的なものです。

そして、私のフォント配布のやり方は、結果的にフリーミアムモデルです。
これだけ意見を述べておきながら、自分だって「無料で自由に使えるものを配布している」のであれば、個人といえど基本無料の体制に加担しているのでは、と思われれば、それはそうです。何も言い返せはしません。
ただ、はっきりと「対価を求める意志」は示しています。


価値とは信頼、誇りである

もちろん、フリーで公開されているサービスや作品を批判する気持ちも、当然ながらまったくありません。
私自身、これまでも現在も、フリーで利用できるソフトやアプリ、フォント、素材、各種データ、公開作品など、ほんとうにたくさんのものに、それを制作してくださった方々の善意に、助けられ、生かしていただいてきました。ものすごくたくさんの方が、それによって、文化や生きる価値を見出してきたこと、私は体感として知っています。

だからこそ、「相応の対価を得ても良い」と思うのです。

そして、自身が辿ったように、「こんなに便利なものを無料で使用・楽しませていただいてきたのだから、自分の作ったもののクオリティでお金をいただくのは気が引ける」という考え方を、これからはちょっと改めてみてもいいのではないか、と思うのです。

(また、個人開発によるフリー作品は、責任・保証・管理の観点や、著作権上の問題、アマチュアによる趣味かつ練習の一環としてのもの、作品を使用してもらえることこそを対価とされている場合や、技術を持ち合い提供し合うことこそ求める価値であるもの、利益は気にせずすこしでも多くの方に届けることがなによりの目的である、など、さまざまな意味やたいせつな意義があることは、僭越ながらも重々理解しているつもりです。

目的に沿った方法で発表されることは当然であり、決して誰からも問われる必要性はまったくもってありません。むしろそのおかげで多大なる恩恵を受けておりますし、開発者さまの懐の深さに感じ入り、手を合わせながら使わせていただいていること多々です。ほんとうにありがとうございます。)

ひととひととがお互いにそれの価値を認め合ったとき、はじめて価値がつきます。価値とはブランドであり、誇りです。
どんなに素人が作ったものであっても、値段をつけて売ることに罪悪感を感じる必要はない。極端に見合わない安価にする必要もない。そこに誇りがあればいい。値段とは、つまり誇りなのですから。

そして、いち制作者目線で考えると、他の大好きなクリエイターさんの価値を、これから生まれてくる素敵なクリエイターさんの価値を、不当に落とさないための方法、意志です。
(と、自分に言い聞かせています。)

私の誇りは「クリエイターを生かすための一端を担いたい。そんなに大仰なものでも規模でもないとしても、少なくとも市場価値を下げてしまうようなことはしたくない。」という意志をもっていること、です。
また、自分の生み出した作品にしっかり責任を持ちたいための、著作者としての誇りもあります。
だからこそ、既存フォントのアップデートを続けます。購入していただいたらそれで終わり、で済ますことは決してしたくない。すこしでも良くなる方法を新たに見つけたら、新しく得た技術でブラッシュアップを図っていきたい。
挑戦的な3000円は、将来の技術料への前払い分が含まれているとも言えます(どのタイミングでも一度ご購入いただければ、この先何度アップデートを繰り返しても、追加料金なしでご利用し続けられる仕様です)。


そして、ユーザーは、「クリエイターが有償販売をしたことに対して、(法的、もしくは過去に起きた事案と現在のシステムを照らし合わせてみても、それが『絶対にやってはいけないこと』に該当しない限りは)ユーザーが批判的な意見を表明することは、好ましくないことである」という意識を持つことが、とても重要なことではないかと思うのです。

これは遠い目で見れば、文化の衰退の一端を担っていると言っても間違いではない気すらしています。逆に、好きなもので生活できるひとが増えれば増えるほど、きっと文化は発展していくはずです。
大好きだった絵師さんが、就職を機に創作を辞めてしまったというお話はよく聞かれますが、いつも切なくなります。もし絵で生活していけるのであれば、多くの素敵な絵師さんが、いまでも作品を生み出し続けてくださっていたのではないでしょうか。


夢を実現するために、クリエイターさんに還元するために、まずは財力がなければどうにもならないことは自明の理です。
まずは私自身が、好きなことで生きていけるようにしっかり努力を重ね、技術を磨いてがんばっていきたいです。わずかでも可能性を見いだせるなら、それを誰かに伝えられるなら、生きてきた甲斐があります。


さいごに、私の制作したフォントを使ってくださっている方へ

私は作り出すことそのものに価値を感じるたちなので、フォントも、文章も、絵も、動画も、音楽も、ハンドメイドも、ありとあらゆるクリエイティブに心を揺さぶられ挑戦したくなってしまう毎日、毎年です。
それをときに煩わしく感じる(ひとつのことに集中したい……)こともあれば、たくさんのことをあれこれやってきてよかった!と感じることも多々あります。
これは抑えきれない衝動なので、たまに「フォントのアップデート作業があるのに、他のことをしていていいのだろうか……」と購入者さま、利用者さまに対して心苦しく……罪悪感を感じてしまうことも少なくなかったのですが、この感情も今日でおしまいにしてもいいのかなと、ここまで綴ってきて、まことに勝手ながらそう思っています。

信頼してくださる方がいるのなら、無理をしてまで焦り、本来のパフォーマンスを出せないことのほうが、質を落としてしまうほうが、誠実さに欠けるのではないかと。
まあこれは、いくらでも都合のいい言い訳として成り立たせることもできるのですけれどね。

たとえ時間がかかったとしても、責任と誇りをもって作り上げますので、アップデートは気長にのんびりお待ちいただけますと幸いです。
相当に時間がかかってしまうことは確実なので、予定も目処もまったく読めず、絶対(7128文字+3762文字を)完璧にブラッシュアップ完了できる、とは言い切ってしまうことはできません(未来に何が起こるかわからないため)。ですが、これまで述べてきたように、今までと変わらず、しっかりと誠意を持って励んでいきます。
今後とも、なにとぞよろしくお願いいたします!

なにか感じていただけましたら、よろしければ。よろしくお願いいたします。