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イノベーションのジレンマって、どんどん起きなくなっているんじゃない?

ユニクロの柳井さんが「生きる伝説。ABCテレビの下っ端からディズニーのトップへ。彼と凄腕のパートナー達の奇跡の大成功の数々を追体験し、次はあなたが成功する」と激推しだった「ディズニーCEOが実践する10の原則」という本を読みました。

この本、控えめに言って、最高でした。

何が最高って、このロバート・アイガーさんは、ピクサーやマーベルの買収を先導し、D2Cの配信サービスを立ち上げる、というような破壊的イノベーションを率いてきた人。そんな人がどうやって決断をし、成功に導いてきたという話は非常に勉強になります。

例えば、既存事業を毀損しうるD2Cの事業を始める、ときのお話。

ここに集まった重役たちは、長年自分の事業部を伸ばすための訓練を受けてきて、各自の事業部の利益をもとに報酬を受けてきた。私がその重役たちに向かって言ったことは、いきなり「これまでうまくやってきたそれぞれのビジネスに注ぐ力を減らして、別のことに注意を向けてほしい。しかも、君たちとは利害が一致しないほかのチームの優秀な人たちと力を合わせてほしいんだ。あぁ、それからもうひとつ。しばらくは金にならないよ」と告げているに等しかった。

 彼らにこの話に乗ってもらうには、こうした変革が必要だということを彼らにしっかりとわからせると同時に、彼らの働きに見合うような新しい報酬制度を作り出さなければならなかった。彼らが自分のビジネスを意図的に破壊することを罰してはいけないし、新規ビジネスの「成功」を収益で測ることもはじめのうちはできない。彼らにもっと働け、しかもたくさん働けと言っておきながら、これまでの報酬制度のもとでは彼らの稼ぎは減ることになってしまう。それではうまくいくはずがない。

 私は取締役会の報酬委員会に呼びかけ、このジレンマを説明した。イノベーションを起こそうと思ったら、すべてを変えなければならない。プロダクトの作り方や届け方を変えるだけでは足りない。仕事の慣習そのものや組織構造も変えなければならない。今回の場合は、重役への報酬の与え方を変えなければならなかった。私は過激な提案を行なった。基本的に、私が報酬を決めるという提案だ。(中略)

はじめは、報酬委員会はいい顔をしなかった。これまでにそんな前例はなかったからだ。「企業がイノベーションに失敗する理由はわかっています」ある時、彼らにそう言った。「伝統のせいですよ。伝統が摩擦のタネになるんです。それがすべての障害になっています」(中略)

「みなさん次第です」と私は言った。「イノベーションのジレンマに陥るか、それをはね返すかは、みなさんにかかっています」

サイゼリヤの回で書いたときのような、組織人を動かすKPIの話ですね。非常に勉強になりますね。

そんな中で、ふと思ったのが、「イノベーションのジレンマって、どんどん起きなくなっているんじゃない?」ということ。

イノベーションのジレンマがこれだけ知られているコンセプトになってきて、今の世界的大企業の経営者は慢心してふんぞり返っている、ということはほぼあり得ないと思うんですよね。

最近の話だと、このZoom全盛期の中、FacebookやらGoogleが早速手を打ってきているというのが話題になっています。

[日経クロストレンド] フェイスブック、グーグルがZoom対抗、ビデオ会議無料版で火花

ディズニーもそうでしたが、大企業はゴリゴリに買収を進めてイノベーションを取り込もうとしますし、Zoomも今たくさんの買収オファーを受けていることでしょう。

また、起業家の方も、今後そんな大企業と鎬を削りつづけるよりも、イグジットして悠々自適な生活を送ることを選ぶ気持ちも理解できます。

そういう意味では、大企業の経営者にとって、企業の買収戦略は一つの不可欠なスキルになんじゃねえのかな、と思います。マイクロソフトを時価総額首位に返り咲かせたサティア・ナデラさんとか、すごいですよね。

とりあえず自分も勉強します!

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