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サイゼリヤから学ぶマネジメント

記念すべき一冊目は、正垣泰彦さんの「サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」です。

タイトルだけ聞くと、ちょっと前に流行った「このハンバーガーとコーラは世界で一番売れている…」というインターネット・ミームを思い出しますが、内容は超硬派で面白いのでめちゃオススメです。

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精神論や根性論を徹底的に排除したシステマチックな経営論が展開されており、例えば、正垣さんは、お店に視察に訪れたときに、従業員が何かをできていない場面に遭遇しても叱らない、と言います。

つまり、できないことを叱るより、なぜできないのかを考え、従業員ができない作業を減らすべきだ。そもそも仕事ができるというのは、知識があって、実際にその通りにやれるということ。それは「技術」を身に付けるということだ。
(中略)教育とは「知識」と「経験」を与え、「技術」を身に付けさせることだ。例えば、テーブルをきれいに拭くという作業なら、「布巾をテーブル上で左右に4回往復させること」と明確に手順を定め(=知識)、それをやってもらう(=経験)。そう考えると、「テーブルをきれいに拭く」という仕事ができないから怒るというのは、おかしい。決まった手順を従業員が知らない、できないというのなら、知識と経験を与えられない従業員教育の仕組みこそ見直すべきだろう。

サイゼリヤが合理的な経営をしている、とはなんとなく知ってはいたものの、読んでみて、そりゃこの群雄割拠の外食産業の中で躍進を続ける理由も納得、という感じでした。

何よりも一番衝撃を受けたのが、下記の部分。

サイゼリヤの場合、売上の数値目標に責任を持つのは本社の商品開発部門で、各店長には経費の数値目標が課せられる。既に書いてもいるが、店長に売上の目標は課していない。チェーンストアでは店の売上は「商品」「立地」「店舗面積」で決まる。店長の努力が及ぶところではない。

店長、売上の責任負わないんですね。それはすごい。

個人的に、マネジメントの一つの鍵は、KPIを如何に細分化して、従業員それぞれが追う目標をシンプルにするか、というところだと思っています。

というのも、組織人というのは、冨山和彦さんが「会社は頭から腐る」に書いていたように、「インセンティブと性格の奴隷」であり、評価制度、つまりKPI次第で行動が大きく変わりうるからです。

利益を追わない営業マンは値下げをして受注を取ってこようとするし、売上目標のないマーケッターは感動ムービーばかり作ろうとするものです。

KPIを複雑にしすぎると、考えることが多くなり、個々人のアプローチや馬力に差が出てしまい効率的ではないし、KPIを誤ったものにしてしまうと、とんでもない結果に陥りかねません。

そういう意味で、店長に売上目標を課さない、という思い切りと、それでもうまく回っているところに感嘆しました。

コロナが落ち着いたら、ミラノ風ドリアでも食べに行こうかな、と思いました。


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