【番外編】人と人が集うということ。

新型コロナウィルス感染防止のための自粛生活が続いていましたが、それも非常事態宣言が解除されつつあることによって徐々に人の流れが戻ってきています。しかし、感染拡大の前とはなんだか見える景色が変わってしまったような気が・・・。

どうしてだろう。

それは、NHK BS1スペシャル「コロナ新時代への提言」という番組を見て出演されている各分野の学者さんの意見を聞くうちに、私なりに考えるきっかけができました。


学者の先生から見たステイホーム

NHK BS1スペシャル「コロナ新時代への提言」には、各分野から三人の先生が出演され、世界中が自粛生活を余儀なくされていることについて意見を述べられていました。

 哲学者 :國分功一郎氏
 歴史学者:飯島渉氏
 人類学者:山極寿一氏

各先生方の考える「コロナ時代」をわたしなりに簡単にまとめてみました。

・対人間に対して恐怖を感じる時代
・人が人と接触せず、移動することをしないで社会を作り上げていくとい
う初めての経験。
・感染者が死亡した場合、その家族は最後ですら会うことが許されない。
それは死者が葬儀の権利を持たないということになり、また、死者を敬うをしなくなってしまう。(これは國分先生がイタリアの哲学者 アガンベンの言葉を引用されていました)
・移動の自由が奪われるということは極めて非常事態である。

いかに考えていないか思い知った

この番組を見るまで、感染しないように不要不急の用事以外は出歩くことはせずにステイホームしなきゃと単純に思っていました。

なので、三人の先生方の意見を聞いて目からうろこがポロポロと零れ落ちました。

*対人間に対して恐怖を感じる時代*
 これについては、私にも経験があります。
 駅のホームで電車待ちをしているときに、隣に並んだ人がいると「えっ」
 と恐怖を感じてしまう自分がいて、そんな自分にまた恐怖を感じました。
 ただ普通にそこにいるだけの人に対して怖さを感じるだなんてショックだ
 ったのです。

*死者を敬うことをしなくなってしまう*
 感染症で亡くなった人のご家族が、最後の最後に会うことすら許されない
 というのをテレビで聞いた時、”亡くなってもなお、感染者として扱われて
 しまうなんて本当に恐ろしいな” と私は思っただけでした。
 しかし事はもっと深くて、こんなことが続けば、人の死ということに対し
 て鈍感になってしまうことにつながると先生がおっしゃっていました。

*移動の自由が奪われるということは極めて非常事態である*
 これまた、私は何にも考えていないと思い知ったことでもあります。
 ”移動の制限がかかっているのは感染を拡大させないためだから仕方がな
 い” そう単純に思っていたのですが、先生がおっしゃるには今回の世界中
 の自粛生活においてもっとも危惧すべき重要なことだと仰っていました。
 犯罪を犯した人を刑務所に入れるのは、移動の自由を奪うことも罰のひと
 つだと聞き、いかに人間にとって自由に自分の意思で行きたいところに行
 けることが精神衛生上良いのかということに気づかされました。

 そういえば私自身も、緊急事態宣言が解除されてから食品以外の買い物を
 したときに今まで感じたことのない喜びを感じたのです。
 ただ、買い物をしただけなのに。ネットショッピングでは得られない直接
 商品を手に取り、人の手を介して商品を購入するということって結構大事
 なのかもしれないなと思いました。

人と人が集まるということは・・・

言葉がうまれたのは人類が誕生してから後のことであり、それまでは人類は言葉以外のものでコミュニケーションを取っていたことを考えると、いま人と人が密になって集まることを自粛する世のなかに対して、疑問を感じている先生がおられました。

わたしはそこでもまた考えが足りないことに気づいたのです。

オンラインツールを使ってコミュニケーションができるから、便利な世の中だなと思っていたのですが、やはり人と人が集うというのはかなり大切なことらしいのです。

五木寛之さんの「大河の一滴」という本にこのようなことが書かれていました。

古い表現で〈面授〉という言葉があります。(中略)人間と人間が向きあい、お互いに息づかいのきこえるような距離でもって何かを学び、何かを伝え、そして何かが伝えられる。こういうことを〈面授〉といいます。
面授では、言葉の内容と同時に、その言葉を発する人間の表情とか肉声、あるいは息づかい、間のとりかた、そういうこと全部を通じて、なにかが人間に伝ってくるものではないでしょうか。

人と直接会うとその人の雰囲気を感じることができるのは〈面授〉ということなんですね。

多方向から考えるということの大切さ

わたしがこの番組で一番感じたのは、知り得た情報を鵜呑みにしてはいけないということ。多方向から情報を入手して自分の意見を持つことが大切だということ。

そしてもうひとつ。

世界史を学ぶことの大切さです。番組内で先生がお話しされていたことの中に世界史のことがちらっと出てきたのですが、ちょうどいま私が勉強しているのが世界史だったので、前のめりになって聞き入ってしまいました。

実は私、大人の学び直しということで通信制の短大生をしているのですが、そこで世界史を取っているのです。学生時代は嫌で仕方なかった世界史も、いま学びなおしてみると意外と面白くて、普段見ているニュースもなぜそんな戦争が起きるのか小指の先ほどではありますが理解できている自分がいるのです。

そんなことがあると、学びなおしてよかったと実感がこもりました。

これからも、本をたくさん読み、学び直しをして多方向から物事を見ることのできる人になりたいと思わせてくれた番組でした。

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