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文化・観光・まちづくりの関係性を考えるための「5つの視点」

文化観光高付加価値化リサーチチーム「session」

これまでのnoteでは、わたしたちのリサーチにおける課題意識やアプローチ方法について伝えてきました。今回のnoteでは、文化・観光・まちづくりの関係性を捉えるうえでの5つの視点についてご紹介します。

これまであまり先例もない”関係性”を切り口とするこのリサーチは、そもそも何を調査するのか?何を測るのか?何を指標とするのか?という出発点を探すところから始まりました。

私たちの問題意識に共感してくれた方々との議論により、いま大切だと考えている指標を以下の5つの視点に整理しています。

 1.地域文化の固有性
   ”その地域ならではの文化が存続し、触れられる状態にあること”
 2.ランドスケープ
   ”五感を刺激する質の高い景観が維持され、外部者に開かれていること”
 3.地域の活動熱量
   
”地域内に、地域の魅力を向上させる主体的な活動を起こすリーダーやコミュニティがあること”
 4.交流・関係人口
   ”能動的に地域を行き来する外部者と、地域住民の双方向に良好な関係があること”
 5.地域内経済循環
   ”文化・観光・まちづくりによる経済循環が起きていて、それが地域の文化資源や担い手に届いていること”

1.地域文化の固有性2.ランドスケープは、その地域が持つ大切な文化的ポテンシャルです。ただ実際は、その価値が正しく捉えられていないことも多いように感じてもおり、このリサーチでは多様な目線や手法で地域文化が持つ価値を見出していくこと、そしてその価値を創造的に見立てていくことの重要性について触れつつ、地域文化に新たな光を当てる多様な目利きのあり方について、様々な事例をもとにそのプロセスを掘り下げていきます。

そして、地域のポテンシャルとしてのそれらの価値を高めていくのが”高付加価値化”だと考えていますが、これは地域文化を素材とした高単価観光ツアー造成だけを意味するものではありません。

その文化の価値を高めることで、文化の担い手や地域コミュニティのシビックプライドを高め、熱量ある活動が地域で増えていく(3.地域熱量)。さらには、地域文化に魅了された部外者が、観光客や関係人口等の様々なレイヤーでその地域に貢献していく(4.交流・関係人口)。

そして、文化資源の高付加価値化により生まれた経済的利益が地域内を循環し、文化に還元されていく(5.経済循環)。これらが文化資源の高付加価値化による観光やまちづくりに対する作用と捉え、それぞれについて定量・定性のアプローチで調査を行っていきます。

この5つはリサーチチームが現段階で大切だと捉えている視点ですが、正解が決まっているものではありません。これからの文化・観光・まちづくりの指針として何を「ものさし」にするべきか? このリサーチプロジェクトで多くの方々と議論していきたいと思っています。

5つの視点に辿り着くまでのプロセス

これらの5つの視点に辿り着くまでのプロセスには、さまざまな方々との議論がありました。明確な正解のないこのリサーチでは議論のプロセス自体が重要だと考えており、これまでのプロセスを説明します。

リサーチ開始当初、私たちは地域文化のオーセンティシティ(本物らしさ)とローカリティ(地域らしさ)を測りたいと考えていました。地域の中にある「文化のコアになっているもの」や「本物らしさ」を調べようとしたのです。

観光消費に資するものだけが文化として評価されることは避けるべきではないか。本当の地域文化に触れたいという観光客の思い、そして本物の価値を伝えたいという地域の思いを可視化するためのものさしは何か。このような視点で地域文化がもつ本物の価値を正確に捉えることが重要だと考えたためです。

しかし、何が本物の文化で、何が本物でないのか? 誰がそれを決めるのか? 文化の本物らしさを比較して、本物かどうかを判定していくことはするべきではないのではないかという考えに至りました。

文化だけを取り出してそれを評価するのではなく、文化が観光客に対してどのような体験や出会いをもたらすのか。観光客が地域の文化に対してどのように貢献していけるのか。文化はその街らしさをどのように形づくっていくのか。文化・観光・まちづくりの双方向かつ対等で、創造的な関係とは何なのか。

私たちは文化・観光・まちづくりの取り組みをされている方々と議論を繰り返し、“関係性”という視点の重要性を再確認しました。文化・観光・まちづくり個々の価値ではなく、それらの“関係性”を可視化していく。そして、それらを結ぶ線を太くしていくことを本リサーチの目的として明確に位置付けました。

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文化・観光・まちづくりをつなぐための「具体要素」

文化・観光・まちづくりの関係性と言っても抽象的な部分があり、捉えどころがないと感じる方もいるかもしれません。

なので私たちは、関係性を測るための具体指標が必要だと考え、それらを構成するさまざまな要素を抽出しました。そして、文化と観光の関係、観光とまちづくりの関係、文化とまちづくりの関係を測る指標をリストアップしていきました。

その時のメモが以下です。

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このように文化・観光・まちづくりの関係性を構成する要素は極めて多岐にわたります。文化・観光・まちづくりの関係性を測る要素を、因数分解的に測ることも検討しました。しかし、それでは網羅的に地域を見ることはできても、リサーチの趣旨がぼやけてしまうという意見もありました。

そこで、文化・観光・まちづくりの関係性を測るためのこれらの要素のなかから、重要なメッセージを抽出し、ステートメントとしてまとめていく手順をとっています。シンプルで強いメッセージを基に“ものさし”をつくることで、それぞれの地域らしい文化・観光・まちづくりのあり方を示すことができるのではないかと考えました。

このようなプロセスを経て、私たちが大切だと考えている視点が冒頭でご紹介した5つの視点であり、文化・観光・まちづくりをよい関係性に導くと考えています。

次回以降のnoteでは、実際に私たちが出会った取り組みをこの5つ視点で整理しながらご紹介していきたく思っています。


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文化観光高付加価値化リサーチチーム「session」
文化庁が推進する文化観光事業のうち”文化資源の高付加価値化促進事業”のリサーチを担当している民間チームです。文化・観光・まちづくりのあるべき”関係性”とは?それらの関係性を高めていく文化資源の”高付加価値化”とは?をテーマに、皆さんとともに考え、発信していきます。