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3月号座談会「行政府とデザイン(前編)」

キーワード:サービスデザイン、行政府とデザイン、スマートシティ

デザインに注目する行政府

瀬下:読者のみなさま、年度末最後の更新になります。今月は「日本におけるデザインと行政府」を特集します。国内ネタ中心ということで、珍しくぼくが仕切って話を進めていこうと思ってます。

それにしても、今月に限ってはさすがに触れないといけないことがあります。コロナウイルスとそれに関する対応によって、日本も世界も大変なことになっていますよね。今月のラジオでこのことについては少し話そうと思っていますが、太田さんからなにかいまありますか。

太田:そうですねえ。本マガジンに関係するところですぐに浮かぶのは、先月ラジオゲストとして話してくれた中村健太郎氏らが運営する「メニカンjournal」ですかね。直近の記事では、コロナ問題をはじめ、都市・建築領域での興味深い海外ニュース記事をたくさん紹介してくれています。daリーダーの皆さんは読まれるといいんじゃないかと思います。

瀬下:今回の問題は、グローバルな都市が隠し持っていた脆弱性が出てきたような感じがしますよね。都市・建築系の人たちからすると衝撃が大きいのだろうと思います。

もう少し時事的な話をすると、Woven City関連ですが、トヨタとNTTが資本提携するというニュースが出ましたね。それぞれが2000億円を出資し、株式を持ち合うという大きな発表だったので、報道もたくさん出ました。既に見知っている方も多いかと思います。提携の目的は、自動運転やその前提となる交通システムの設計をはじめ、スマートシティの早期実現を狙ったもののようです。以前取り上げた、トヨタの工場跡地がある静岡県の裾野市と並んで、今回の発表では、NTTが駅前にビルをたくさん持っている港区・品川の名前も出ています。「これでGAFAに対抗できるかもしれない」といった、景気のいいコラムもいくつか見られました。

太田:コロナとも関係させつつの応答ですが、自動車に関してはモビリティーズ・スタディーズの学者たちが「自家用車の復権」という論点で議論しているブログが気になりました。モビリティーズ・スタディーズとは、人間やモノやデータの「移動」に着目する社会学の一分野で、ジョン・アーリがその大家です。例えばブログ記事で言われているのは、感染リスクを鑑みるとシェアライドからの揺り戻しとして自家用車が再発見されるようなことなどですね。

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